付き合っている人がいたら一人親家庭の支援は受けられない?

今回の職員の対応は、「手当を支給する側」と「支給される側」の上下関係みたいなものを強く感じた。

昨年9月、長男出産後に妻が亡くなり、専業主夫だった私は収入源が絶たれ、今は育児で忙しく、仕事を探すこともできない。当分は貯金を切り崩して生活していくしかないと思っていたら、「一人親家庭への特別支援制度みたいなものがあるはずだよ」と友人から聞いた。

昨年11月、私が暮らす新潟県の南魚沼市役所に行ってみると、「児童扶養手当」というものがあることを知った。一人親家庭の子どもの健全な育成のため、最大で1ヶ月約4万円が支給されるという。

しかし、短刀直入、市職員から「黒岩さんは、高所得のお父様と一緒に住まわれているので申請はできません」と言われた。

確かに、私の父は医者で高所得だけど、長男のミルク代もオムツ代もすべて私が払っている。まあ、実家に住んでいる分、家賃も払っていないし、食費もあまりかかっていないわけだから、この時は何も言わず引き返した。

今年2月3日、両親との同居に色々ストレスを感じ、実家から約2キロ離れた家を賃貸し、長男と移り住んだ。今度は手当を申請できるかと思い、2月6日、再び市役所を訪れ、女性職員が対応してくれた。

職員:奥様とは離婚されたということですか?

私:死別です。

職員:今お仕事とかは?

私:していません。

職員:それでは収入がないということですか?

私:ありません。

職員:ご実家を離れられて、家事、育児をすべて一人でやられるということですか?

私:はい。

職員:凄いですね。すいませんが、お聞きしなければいけないことがいくつかありまして、(質問リストの紙を見ながら)貯金はいくらありますか?

私:貯金?そんなことまで聞くのですか?

職員:(申し訳なさそうに)はい。決まりになっておりまして。

私:、、、。○○万円。

職員:すいませんが、これも聞くことになっておりまして、今、現在、付き合っている人はいますか?

この瞬間、私は別の世界に放り込まれた気分だった。付き合っている人?え?妻を亡くしたのがたったの5ヶ月前ですよ。私と一緒にいる長男の大きさを見れば、妻を亡くしたのが最近だということはわかるはずなのに。私は取り乱したらいけないと、「いません」と平静を装った。

職員から手渡された児童扶養手当についての概要によると、以下の項目に当てはまる人は手当を申請できない。

1.国内に住所がないとき

2.(内縁関係を含む)婚姻関係にあるとき

3.対象児童が施設に入所しているとき

4.対象児童が父母と生計を同じくしているとき

貯金額や同居人の所得額、「付き合っている人」についての言及はない。

2月8日、私はどうしても気になり、市役所を訪れ、別の担当職員に「この前、『付き合っている人がいるか』と聞かれましたが、あれは国の方針として聞くことが決まっているのですか?」と尋ねると、「はい。内縁関係にある方には支給できませんので」という回答だった。

私の勝手な解釈だが、「付き合っている人」と「内縁関係にある人」の間には、とても大きな差がある。月に2,3回、食事をする人や、国をまたいでの遠距離恋愛も「付き合っている」の部類に入るが、「内縁関係」となると、同棲か、最低でも半同棲くらいの重みがある。

だから、もし、内縁関係があるかどうか知りたいなら、「現在、交際されている方と同居されていますか?」とか「婚約されている方はいますか?」とか、「結婚という形はとらず、事実婚のパートナーはいらっしゃいますか?」などの言い方が適切ではないか?

さらに、この手当を申請する人の多くは私のように夫や妻と死別した人だ。

いきなり「付き合っている人はいるか?」と聞くのではなく、「奥様を亡くされたばかりの黒岩さんに、このような質問をするのは大変心苦しいのですが、婚姻届を出されていない、事実婚のパートナーがいらっしゃる方はこの手当を申請できないのですが、そういったパートナーは現在いらっしゃいますか?」という言い回しなら、まだ私の尊厳も少しは保たれたかもしれない。

手当についてのしっかりした説明がなければ、「月に1、2度、食事している人がいるだけで申請できないの?」と勘違いする人も出てくるかもしれない。

今回の職員の対応は、「手当を支給する側」と「支給される側」の上下関係みたいなものを強く感じた。生活保護も児童扶養手当もあらゆる支援制度も、手当が実際支給されるかどうかは別として、支援を要請する人の尊厳が最大限保たれるように運用されなければならない。

少なくとも、私は、自分の尊厳を傷つけられてまで支援を受け取ろうとは思わない。

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