5月18日に衆文部科学委員会で質問に立ち、オリンピック招致をめぐる疑惑について質問したところ、以下の5点が新たに明らかになった。
■五輪疑惑、18日の国会審議で明らかになったこと
1.調査チーム発足を表明
まず、16日の予算委員会で、調査チームを設置し本格的に調査すべきと提案していたところ、竹田恒和・JOC(日本オリンピック委員会)会長が、外部の弁護士を入れた調査チームを立ち上げることを表明。
早急に人選のうえ調査に入り、自主的に真相を明らかにしてもらいたい。
2.BT社は消滅(登記が抹消)
16日の予算委員会で、「コンサル報酬」として2.3億円を支払ったブラック・タイディングス(BT)社(シンガポール、代表:イアン・タン氏)が既に業務を停止しているのではないかと指摘した際、「確認できない」としていたが、18日には、BT社は2006年に設立され2014年7月4日に消滅(登記が抹消)されていることを確認したと答弁。
これまで、竹田JOC会長はBT社との「契約上の守秘義務」を理由に契約書を開示できないとしてきたが、契約相手方であるBT社がもう存在しないのであれば、保護すべき相手方の利益も消滅していることになる。
よって、招致委側の判断で問題となっているコンサル契約の契約書や活動報告書の開示が可能になったと考える。
3.監査は資金使途の妥当性を証明していない
JOCが反論として出した「東京2020招致活動に関わるステートメント」(5月13日)には、2.3億円の支払について「新日本有限責任監査法人(Ernst & Young ShinNihon LLC)等により正式に監査を受けたものである。」との記述がある。
これは資金の使途まで調べた「業務監査」なのかと質問したところ、監査資料を調べてみないと、内容は詳しく分からないとの答弁。
つまり、この監査は、支払いが正しい勘定科目に計上されているかなどをチェックした形式面の監査に過ぎず、支払った資金の使途の妥当性まで保証するものではないことが判明した。
4.JOC会長、タン氏とIOC委員の関係を知っていたと答弁を「修正」
16日の予算委員会では、竹田JOC会長は、BT社の代表であるタン氏が、当時国際陸上競技連盟の会長で、候補地選定の投票権を持つIOC(国際オリンピック委員会)委員でもあったラミン・ディアク氏およびその息子のパパマッサタ・ディアク氏と関係があったことを、「知る由もなかった」と答弁していた。
しかし、18日には答弁を事実上「修正」し、契約時にはタン氏とディアク親子との関係があることを知っていたと認めた。
なぜ、2日間で答弁が変わったのか不可解だ。
5.不自然に2分割された契約、1.3億円の支払いは口頭約束
これまでも、BT社への支払いが、招致決定の2013年9月の前後の7月と10月の2回に分かれていることは認めていたが、18日に明らかになったのは、契約そのものも2つに分かれていたことである。
一般的なコンサル契約は、コンサル報酬と成功報酬を1つの契約に明記する(経費は別途支払い)ので、これは不自然だ。
答弁に基づき2つの契約の概要を整理すると以下のとおりとなる。
【契約1】契約金額:95万ドル(約1億円)
契約期間:2013年7月~9月
支払日:2013年7月29日
内容:コンサル報酬・経費(成功報酬は含まず)
【契約2】契約金額:137.5万ドル(約1億3,000万円)
契約期間:2013年10月~11月
支払日:2013年10月24日
内容:成功要因分析、成功報酬的なもの
まず一つ目の契約には、成功報酬は含まれておらず、二つ目の契約に、成功報酬「的」なものが含まれているという。この説明は意味不明だ。
特に、予算の制約があったので、最初の契約には「成功報酬」規定を盛り込まなかったというが、予算が足りないなら契約すべきではない。竹田会長の言う、
「招致が決定すれば成功報酬を支払うニュアンスで話をしていた」
との説明にも全く納得がいかない。
1億3,000万円もの支払いを口頭で約束したのか。
明らかに異常である。
■サミットまでに潔白を証明すべき
そして、FNNの報道によれば、招致委員会の水野正人・元専務理事、樋口修資・元事務局長は、「タン氏に会ったことも」ないし、「事務局は面接もしていない」とインタビューで答えている。
では一体誰が、招致決定後に成功報酬を支払うとの「ニュアンスで話をした」のか。
残念ながら疑惑は深まっている。
JOCは早急に調査チームを発足させ、サミット前までに可能な範囲で調査結果を公表すべきだ。
こんな状態では、サミットで「スポーツ分野における腐敗対策で成果文書を取りまとめる」ことなどできないはずだ。