消費税増税の延期に対して、様々な意見がありますが、私は今回の判断を支持します。
確かに、増税分は社会福祉の財源になる予定だったので、それが出来なくなると言う懸念はあります。
が、そんなことは構っていられないほど、キッズドアの学習会に通ってきてくださるような、低所得のご家庭の生活は厳しい。
消費税が2%上がることは、確実に低所得のご家庭の生活を厳しくします。
消費税は、所得の高低にかかわらず一律に課税されるために低所得者や貧困層ほど実際の負担率が大きくなります。『消費税の逆進性』と呼ばれるものです。税の負担者である消費者の『所得水準・生活状況』をまったく考慮せずに、5%なら5%、10%なら10%と一律的に消費行動に対して課税をする税制なので、低所得者やエンゲル係数の高い家計ほど『実際の負担率・主観的な負担感』は大きくなりやすく、高所得者層・富裕層ほど実際の負担率は小さくなりやすいのです。
例えば、母子家庭の平均就労収入は年間181万円。児童扶養手当や養育費(そもそももらっている人は2割もいませんが)をいれても年間223万円、月収18万5千円です。
これで最低でも二人(母一人子一人)以上の生活を賄います。この中には家賃なども含まれます。
買いたいものを我慢し、買わなければならないものも我慢するような生活ですから、当然収入は毎月使い切ります。
つまり、消費税が2%上がるということは、低所得の家庭にとっては、2%の減収と同じです。
「消費税が上がったから、節約しなきゃ」というような個人の裁量ではカバーしきれません。
既に、限界を超えて節約をしていますし、外食などのカットできる支出はありません。
毎月18万5千円でやっとくらしているのに、3716円が減収となる厳しさを想像してください。
−食卓がさらに貧しくなり、肉や魚などのタンパク質が足りなくなる
−どうにかお金を工面している子どものお稽古や塾などをやめてもらう
−誰かの携帯電話をやめる(社会から阻害される)
−子どものためにと頑張って積み立てている学資保険を中断する
−医者に行くのを我慢する
−部活をやめる
生活に余裕があるご家庭の2%とは、重みがまるで違うのです。
また、消費税増税は、消費の冷え込みから再び不況に陥る危険性があります。
不況になった時に、真っ先に雇用を損なわれるのは、間違いなく貧困層の方々です。
パート、アルバイト、契約社員、派遣社員などが職を失い、また給与が下がる可能性が大変高い。
若年層の非正規雇用の割合が増える中、多くの子育て世帯が窮地に立たされる可能性が高いのです。
景気が良いということは、雇用が増えるということであり、人手不足感が出れば、非正規雇用は減ります。
少し前までは就職氷河期と言われ、大学を卒業しても就職できませんでした。就職に失敗した若者が沢山自殺をしました。若年層や女性など非正規雇用の方々が安定した収入を得られる職に移行させるためには、好景気を作り出すことが非常に重要です。
現状では、不景気につながるような事は、避けるべきです。
いろいろと批判の多いアベノミクスであり、私は経済の専門家ではないのでそれを正しく評価することはできませんが、現場の実感として、デフレから脱却し、好景気に向かった事は、日々向き合っているご家庭に明るさをもたらしました。いつ、首を切られるか、という不安から開放され、未来に向かって資格をとったり、手に職をつけようかというような前向きな姿勢を持つ方が増えました。
とにかく、不景気にはなりませんように、というのが、私の最大の願いです。
財政再建や福祉の充実は非常に重要ではありますが、これだけ格差が拡大しつつある中で、すべての人々に一律に課税される「消費税」を拡大することは、本当に正しいのでしょうか?
高齢者に多くの資産が集中し、例えば100歳の親が75歳の子どもに財産を残しても、それは社会に流通することはありません。眠れる資産を少しでも流通させようとした「祖父母からの教育資金の一括贈与の非課税制度」は、大盛況のようですが、すでに、ピラミッドの上位にいる子どもたちに教育投資をすることで、ますます教育格差を拡大する事につながります。
消費税で貧しい人にも一律の税負担を求めている一方で、高額所得者への実質的な税負担を軽減することは不公平ではないでしょうか?
せめて、贈与税を免除するのではなく、大幅に減額しつつも、5%程度を貧困層のための給付型奨学金にあてるなど、あらゆる側面で税の再分配に配慮することが重要ではないでしょうか?
日本の所得や資産の特性を踏まえた上で、声の弱い,声の出せない層にこれ以上の税の負担を押し付けることなく、財源を確保する道を政府には是非模索して欲しいと思います。
もし、それでも消費税を基幹税として今後上げていくというのなら、低所得者への配慮として軽減税率のような複雑で軽減効果も少ないものではなく、諸外国のように低所得世帯、子育て世帯への給付(児童手当の大幅増額や給付付き税額控除など)を増やす、大学や専門学校などの高等教育を無償化したり、給付型奨学金を充実さえるなどの配慮は必須です。
以上なような観点から、私は、現時点での消費税増税延期は極めて妥当な判断であると思います。
これにより胸をなでおろしている貧困状況にある方がたくさんいるのです。