韓国の憲法裁判所によって弾劾が認められ失職した朴槿恵・前大統領が、沈黙を貫いている。
大統領権限代行の黄教安首相は3月10日、「私たち皆が憲法裁判所の決定を尊重しなければならない」という談話を発表したが、朴氏の関係者は「朴氏が立場表明やメッセージを出す計画はない」と述べた。弾劾に反対する集会では計3人が死亡し、取材していた記者やテレビカメラに参加者が暴力を加えるなど、状況は過熱したが、支持者に自制を訴えることもなかった。
韓国紙ハンギョレは「事実上の『沈黙デモ』」として、「憲法と法律に違反して国政を破綻させたことへの謝罪どころか、決定を受け入れ、民心の収拾と国民統合を呼びかける宣言すら出さなかった。憲法裁判所の審判結果への『不満』を超え、『不服従』の意志を示したものではないか」と批判した。
朴氏側は、憲法裁判所が弾劾訴追案を棄却・却下する可能性が高いと期待しており、罷免にかなりのショックを受けたようだ。
ハンギョレによると、棄却・却下された場合に備え、朴氏が国民に直接「国論統合」を訴えることを検討してきたという。朴氏側は憲法裁判所の審判に提出した書面などで、知人女性の崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入は知らず、私利私欲を直接追求したことがないなどと主張し「弾劾棄却」を訴えてきた。実際に朴氏側は、憲法裁判所の裁判官8人のうち5対3、または4対4程度で弾劾を棄却する可能性が高いと推定していた(弾劾には6人の賛成が必要)。しかし、憲法裁が裁判官8人全員一致で弾劾を認めたため、朴氏や参謀陣は大きな衝撃を受けたと伝えられている。
朴氏はこの日、青瓦台の公邸で大統領秘書室長らと面会したが「かける言葉がない」と、ほとんど話さなかったという。朴氏に近い与党・自由韓国党の国会議員も青瓦台を訪問したが、面会を断られた。
ソウル市南部にある朴槿恵氏の自宅
失職により、朴氏は青瓦台の公邸を退去しなければならないが、朝鮮日報によると、ソウル市南部の自宅は暖房設備が老朽化しており、セキュリティーの問題もあって「すぐには引っ越せない」と、当面は公邸にとどまる考えだ。具体的に退去すべき期限は決まっていないが、最大野党「共に民主党」のスポークスマンは「公邸は私有地ではない」と、すぐに退去するよう求める声明を出した。
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