ガザで続く攻撃 逃げ場のない市民

イスラエル軍が「境界防衛」作戦を7月7日深夜に開始して以来、ガザでは多くの死傷者が出ている。

イスラエル軍によって破壊された救急車(C)Private

イスラエル軍が「境界防衛」作戦を7月7日深夜に開始して以来、ガザでは多くの死傷者が出ている。同28日にはネタニヤフ首相が軍事作戦の長期化を宣言、この時点で1,100人だった犠牲者はその後も増加の一途をたどる。

アムネスティ調査員は現在、どのような状況下で市民が殺されたのか、使用された武器は何かなど、被害者の家族やNGO、医療関係者などから聞き取りを進めている。

遊んでいる子どもを直撃

7月16日、バクル家の子どもたち4人が、イスラエル軍が連続して発射した3発のミサイルで殺された。一番幼いアヘドはちょうど3日前に、戦火の中でささやかな9歳の誕生日を祝ったばかりだった。イスマイルも9歳、ザカイラは10歳、モハメドは11歳だった。漁業を営む家族が船の錨を固定している間、4人は他の子どもたちと浜辺で遊んでいた。

近くのホテルに宿泊していた海外ジャーナリストの多くがこのミサイル攻撃を目撃していたが、直前にそのあたりにパレスチナ武装グループの姿はなかったし、数百メートル離れていても、浜辺にいたのは明らかに子どもだと分かったと証言している。

イスラエル軍は子どもたちの死について「痛ましい結果」であり調査中だと発表している。

犠牲者の8割が民間人

国連によれば、ガザにおける死者の約8割が民間人で、そのうちのほぼ半分が子どもと女性だという。

イブラヒム(10歳)とオマール(26歳)の兄弟も、祖母とともに車に乗っていたところを空爆で殺された。11日の空爆で重傷を負った従兄弟を救急車に乗せ、タクシーで同行しているときだった。

軍は直前に市民に撤退するよう警告するチラシを空からばら撒いていた。しかし、そんな警告は無駄だった。彼らには隠れる時間も安全な場所もなかったのである。

そもそも住宅密集地に無差別に攻撃することがどのような結果を招くか、軍にはわかっているはずだ。

無差別攻撃は空爆だけではない。フレシェット弾という武器でも死傷者が出ている可能性が、ガザの人権団体から報告されている。アムネスティではこの件を現在、調査中である。

フレシェットは短い金属製の矢で、これを5,000から8,000本ひとつの砲弾に詰め込んで戦車から発射し、空中で炸裂させ、円すい状にばらまくのだ。その範囲はサッカー場が3つ、すっぼり入る。2009年のイスラエル/ガザ紛争でイスラエル軍が人口密集地で使用し、市民を殺傷した。

国際社会は同じ過ちを繰り返すな

民間人を無差別に攻撃することは、戦争犯罪である。イスラエル軍の行為に対し世界各地で市民が抗議行動を起こし、戦争犯罪を許すなと訴えている。しかし、国連安全保障理事会はこの危機的な状況にほぼ無策である。

国連人権理事会は7月23日、紛争両当事者による国際人道法、人権法違反について、独立して徹底した調査を行うための委員会を設置し、東エルサレムを含む被占領パレスチナ地域に調査団を緊急派遣する決議を29カ国の賛成で採択した。しかし、日本を含む17カ国が棄権し、米国は唯一反対した。

2008年の12月から2009年1月のガザ紛争でも、イスラエル軍の攻撃によって市民1,300人以上が犠牲となった。停戦後に国連の事実調査団が派遣され、イスラエル軍とハマスによる国際人道法および人権法違反について詳細な報告と勧告が出された。この件を裁くための行動をとるよう、多くのNGOが繰り返し各国に働きかけたが安保理は動かず、戦争犯罪の責任は追求されなかった。

国際社会は再び過ちを繰り返してはならない。戦争犯罪を放置しないという断固としたメッセージを出し、躊躇せず実行に移すべきなのだ。

(2014年8月1日 アムネスティ・インターナショナル日本)

▽武器の供給を絶つために

現在、アムネスティは、イスラエルへ武器移転を停止するよう米国など武器輸出国に求める署名活動を世界中で展開しています。ぜひ参加してください。

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