カープ熱が日本中に広まったのはカープの強さだけが理由じゃない

日本中に広まったカープ熱。これはただカープが強いからだけでは説明ができない。

カープ3連覇が目前になった924日、私は自宅から車で40分かけて新潟県長岡市の広島風お好み焼き屋でカープの試合を応援していた。通常なら店は閉店時間だったのだが、広島出身の店主が優勝マジック1まで迫っていたため特別に開店し、10人ほどが集まった。

広島から遠く離れた新潟にもカープファンがいる。日本中に広まったカープ熱。これはただカープが強いからだけでは説明ができない。

817日の横浜との試合、8回裏までカープは4対1でリードしていた。しかし、先発の野村が3連打を浴び、無死満塁で一岡に交代。一岡はすぐに満塁ホームランを打たれ、逆転された。

私は、ここで一岡は交代するだろうと思った。

しかし、続投。

一岡はまたホームランを打たれた。

さすがに、ここで交代だろうと思った。

しかし、続投。

なんと、一岡はまたホームランを打たれた。

もう、交代だろうと思った。

しかし、続投。カープは負けた。

正直、私は、緒方監督の采配を疑った。そして、日本ハムに敗れた2年前の日本シリーズを思い出した。第6戦、リリーフで出てきたジャクソンが打たれても打たれても、交代させなかった。緒方監督は批判を浴びた。中には、「今後のジャクソンの野球人生に悪影響を及ぼしかねない」と言う人までいた。

しかし、ジャクソンは次のシーズンも大活躍をした。

そして、一岡はどうだったか。この試合の後、何と、15試合連続無失点。要の選手があいつで不振に陥り、連敗を喫する中、優勝に大きく貢献した。

「あれだけ打たれても使い続けてくれたのだから、その信頼に応えたい。」ジャクソンや一岡を奮起させたのは、チームとの信頼関係だったのではないか。

日本はずっと続いた終身雇用制度が崩れ、非正規化が進み、短期間で切り捨てられる人が増えた。少子高齢化と核家族化がすすみ、親せきや隣人との関係も希薄になっている。そして、プロ野球もフリーエージェント制度で良い選手がお金のある球団に行くようになり、選手の入れ替わりが激しくなった。

一岡は、そのフリーエージェント制度で巨人に移ったカープの元エースの「補償」として、巨人からカープに移籍してきた選手だ。要するに、巨人から捨てられた選手。しかし、その元エースは巨人でほとんど活躍できないでいない反面、一岡は今やカープになくてはならない選手になった。ポストシーズンでは勝利の方程式の一角を担うだろう。

平均年俸では巨人がカープの2倍だが、今年、カープは巨人に対し165敗とコテンパンにやっつけている。チーム防御率もチーム打率もリーグトップでないのに、カープが独走で優勝する理由はなにか。

お金をかけて実績のある選手を集めるのではなく、信頼関係を築いて選手の能力を引き出すほうが、チーム力はアップする。圧倒的なスター選手はいないが、毎年活躍する選手が入れ替わり、誰かがケガで離脱しても、必ずその穴を誰かが埋める。日本が失いかけている何かをカープが蘇らせてくれることを願ってやまない。