「センター試験の日にデモやるとかマジ騒音」は本当なのだろうか?

「センター試験の日にデモやるとかマジ騒音」といったデモを理由とするセンター試験妨害の疑問が多い。その疑問についての答えを私なりに考えてみた。
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2017年1月14日、15日には日本の大学受験生の約540000人が受験するセンター試験が全国で行われる。現役生・浪人生などこれまでの努力をぶつける大事な試験だ。

多くの受験生はセンター試験を皮切りに各市立大学の個別試験の受験や、センター試験の得点をそのまま合否に利用する「センター利用入試」などに望む。そして何より国公立大学受験者にとってはセンター試験の得点で受験大学を決め、志望の大学を受けていく。

そんな本格的な受験シーズンを前にして、安倍政権反対のデモが行われることが告知され、センター試験当日1週間前となったいまとなって、「センター試験当日に渋谷でデモがある」「デモとか音うるさいんじゃないかな」とTwitter上では受験生を始めとした人々が不安の声を吐露するような空気が大きく広まっている。

このエントリーではそういった受験生の不安の声、そして「センター試験の日にデモあるとかマジ騒音」といった否定的の声に対して何か答えることが出来ないかと思い書こうと思う。予め断っておくと、これまで渋谷で行われてきた安倍政権反対デモに足を運んできたことがあり、その経験をもとに個人的な見方での分析になる。また、今回行われるデモの運営には一切関与していないので「何故デモを他の日に変更・延期しないのか」といった問いに関しては答えることができない。

◼センター試験の日にあるデモがあるの?

デモがあるのはセンター試験1日目の1月14日。行われるのは「安倍政権NO!☆実行委員会」が主催する「安倍政権NO!+野党共闘☆0114大行進in渋谷」(以下:安倍NO!デモ)だ。原発・安保法制・憲法・沖縄米軍基地・秘密保護法・TPP・消費税増税・社会保障・雇用労働法制・農業農協改革・ヘイトスピーチ・教育など様々なイシューを理由にして安倍政権の退陣を求める。そして今年は、昨年参議院選挙にて行われた野党間の協力での安倍政権への対抗軸構築である「野党共闘」を市民の側から推し進める意図が込められている。

昨年は2016年2月14日に上記団体に加え安保関連法案に反対する運動を行った「SEALDs」や高校生など10代の若者が中心となった「T-nsSOWL」なども参加した。今年は両団体とも解散・活動休止によってフロートを出さない(T-nsSOWLは現在も実行委員会参加団体)。

安倍NO!デモはサウンドカー(荷台に音響機材を設置したトラック)が先頭を走り、それに続いて抗議参加者が列をなして行進を行う。今回は大きく4つの梯団に別れ行進が行われ、第一梯団:サウンドカーブロック、第二梯団:マーチングブロック、第三梯団:コール&レスポンスブロック、第4梯団:ドラムブロックとなっている。

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(出典:公式発表されたデモコースをもとに筆者作成)

そしてデモのコースは、「代々木公園ケヤキ並木南側~渋谷駅前~明治通り(原宿方向へ)~ラフォーレ原宿前を通過~千駄谷小学校~原宿駅方向へ左折~原宿駅前~代々木公園ケヤキ並木北側(流れ解散)」というルートになっている。(上記画像参照)

この安倍NO!デモは集会とデモに分かれており、代々木公園けやき並木(NHK側)にて13時15分から集会が行われる。そしてデモは14時に代々木公園を出発し渋谷の街に向かう。デモの所要時間は約2時間以内であるので終了は16時前後となると見込んでいる。

しかし、センター試験当日にデモがあることから不安や疑問や非難の声が沸き起こり、特に「センター試験の日にデモやるとかマジ騒音」「デモで交通渋滞が起きたらどうするんだ」「学生の人生をデモは台無しにする」といったデモを理由とするセンター試験妨害の疑問が多い。その疑問についての答えを私なりに考えてみた。

◼デモはセンター試験の騒音妨害になるのか?

これまで安倍NO!デモの概要を説明してきたが、実際にどのような不安の声があるのかというのは以下のtogetterで確認できる。そしてその指摘される実質的な影響・妨害があり得るのかについて考えていきたい。

現在Twitterでは【大迷惑】センター試験の日に合わせわざわざデモする日本リベラル(※1)というタイトルで、これらの不安や疑問やデモを非難する声がまとめられたTogetterが出来ている。

安倍NO!デモは、サウンドカーが走り、抗議参加者のコール、ドラム隊・マーチング隊の楽器などの種多様な「音」が発せられ重なり合わさせる。そこで、「センター試験への騒音妨害」の有無について考えていく。また、今回の安倍NO!デモが渋谷原宿がコースとなっているため、渋谷区に設置されているセンター試験会場で妨害になるのか否かに焦点を当てる。

①渋谷区のセンター試験会場

まず、渋谷区に設置されているセンター試験会場はどこなのか把握してみると次の4つである。

青山学院大学青山キャンパス:渋谷区渋谷4-4-25:1300人

國學院大学渋谷キャンパス:渋谷区東4-10-28:1150人

私立富士見ヶ丘高等学校:渋谷区笹塚3-19-9:1120人

代々木ゼミナール新宿校:渋谷区代々木2-25-7:799人

なるほど、渋谷区のセンター試験会場だけで4369人の受験者がいるようだ。そこで、上記4つのセンター試験会場で渋谷駅近辺に位置するのは、青山学院大学と國學院大学だ。Twitter上でも「青学と國學院でセンター受験する子可哀想」というようなTweetも見かけた。デモのコースにも富士見ヶ丘高校、代ゼミ新宿校と比べると特段近いものの、騒音について考えた時実際どうなのだろうか明らかにする必要がある。

以下はデモのルートと各2大学の位置を示す地図である。青くなぞられているのがデモのルートで、赤い点が示すのは青山学院大学と國學院大學だ。デモルートと大学まで最も近づくところは渋谷駅ハチ公前交差点あたりであることが分かる。そこを拠点に直線最短距離を考えると青山学院大学まで650m、國學院大学まで1100mほどであろう。

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(出典:GoogleMapをもとに筆者作成)

②騒音距離減衰計算に基づく算出

デモによる騒音でセンター試験会場への騒音妨害があるのかどうかを検証するには「騒音距離減衰計算」を用いることで明らかにできる。ここでは、騒音発信源が点音源(距離に比較して、音源の発生体が非常に小さい)で環境条件(ビル等建造物による影響、高低差、気温)などの影響は受けないものと仮定して計算することにする。(※2

音源からの距離をA1(m)、騒音レベルをA2(dB)とした時、音源からB1(m)離れた地点Bの騒音レベルはB2(dB)として、次のような使用計算式を用いることが出来る。

計算式:B2=A2-20log(B1/A1) (logは底を10とした常用対数です)

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(出典:筆者作成)

ここで音源をサウンドカー、地点Aをサウンドカーの音がダイレクトに耳に響くデモ隊の先頭、地点Bをセンター試験会場と考える。そして距離A1はだいたい1m、B1は青学なら650m、國學院なら1100mとして計算する。また、サウンドカーの騒音レベルについては、「電車が通るときのガードした」の騒音レベル100dBと同等と考えることにする。これまでデモにおける経験ではおそらく100dBにも達しない気もするが大きめに見積もることにしてみる。すると、この条件で計算を行うと青山学院大学での騒音レベルは43.74dB、國學院大学での騒音レベルは39.17dBと算出できた。ちなみに、40dBとは「郊外市内の深夜、図書館、静かな住宅地の昼」の騒音レベルを示し、極めて静かな状況と言える。

「騒音距離減衰計算」を簡単な条件設定の下で用いたが「デモは騒音妨害だ」という結論には至らないのではないだろうか。センター試験「外国語」の「英語」に課される「リスニング」も17時10分から行われるため、デモ終了後のことなので騒音問題は一切関係ない。むしろデモルートと試験会場の距離の関係からデモによる騒音妨害は一切起こらないということは自明であろう。

◼デモによる交通渋滞や通行妨害は起きる?

「デモが行われれば想定外の交通渋滞や通行妨害が起きるかもしれない」とTweetも見た。なので、騒音妨害の有無だけではなく、デモが理由となって受験生に影響するような交通渋滞や通行妨害は起こるのかどうかについても考えていきたい。

結論を先に述べると、今回の安倍NO!デモはセンター試験受験者が会場の青山学院大学、國學院大学に向かう方向にデモルートが設定されていないことから、交通渋滞や通行妨害は起きないと考えている。

これまで渋谷原宿では主義主張関わらず多くのデモが行われてきた。経験則の判断だが、いままで1万人近い規模のデモでさえ交通渋滞・通行妨害の問題なく終了していた。

渋谷で最も混雑すると思われる、渋谷駅前・ハチ公前交差点付近通過時はとてもスムーズにデモ隊が通過している。デモ隊も長くならないように今回は4つに分けられるためスクランブル交差点を横断する時間も確実に確保されるので心配はいらない。

デモの実施においては、事前に警察の許可が必要のためデモのスケジュールに合わせ、警察は予め信号の調整も行う。デモの規模が大きければ交通安全のために赤信号を長く設定しデモ隊通過を歩行者に待ってもらうこともあるのだ。そもそもデモは車道で行われ、歩道では一切行われない。そのため、受験生が「混雑の関係で受験会場まで進めなかったら...」と思う必要はないだろう。

◼デモがあるけど受験生はどうすればいい?

以上のことをふまえつつも、デモがセンター試験当日に行われることへ不安を抱く受験生は多いだろう。

だが、これまで説明してきたように騒音妨害や交通渋滞・通行妨害はないと改めて強調したい。

センター試験のスケジュールについて確認してみると、1日目は「地歴公民」「国語」「外国語(リスニング)」が実施される。センター試験受験者のほとんどが受験することが独立行政法人大学入試センター試験のデータで確認できる(※3)。国公立大学受験者であれば全科目受験のため「地歴公民」の試験が始まる9時30分前から試験会場にいるかもしれない。私立文系や私立理系などセンター利用入試やセンター個別併用入試に望む受験生は国語から受験する方もいるだろう。

とはいえ、国語もお昼休憩を挟み、開始するのが13時なので受験生がセンター試験会場に向かう際にデモに遭遇するという状況は考えにくい。

もし、ここまで読んでいただき不安な受験生がいるのであれば、当日のセンター試験会場までの道のりについてどう歩くか予定を立てたりするのも良いかもしれない。

デモに遭遇するしない関わらず、青山学院大学と國學院大学でセンター試験を受ける受験生へのおすすめの各駅出口を紹介したい。

青山学院大学青山キャンパスの場合

①JR渋谷駅宮益坂口側 ②表参道B2出口側

國學院大學渋谷キャンパスの場合

①JR渋谷駅宮益坂口側 ②表参道B1出口 ③JR恵比寿駅西口

当日はセンター試験を受験する高校生・浪人生などの方々が同時刻に各駅を使うことだろう。各駅の通常の混雑とはまた違った様子かもしれない上に、単語帳などを握り緊張した面持ちの受験生が多くいることからピリピリと緊張した雰囲気にもなっているかもしれない。

筆者も数年前にセンター試験を受験しその受験当日の得も言えぬプレッシャーを感じていた。受験シーズンになると予備校の講師や学校の先生から「緊張しているってことは本気でやってきたことの表れだよ」と言われたことを思い出して深呼吸してリラックスさせた記憶がある。

みなさんが持ってる最大限の力を本番で発揮できることを祈っています。

最後まで諦めずに。受験生がんばれ!!

※1:『【大迷惑】センター試験の日に合わせわざわざデモする日本リベラル』https://togetter.com/li/1069330

※2:騒音についての詳しい解説については財団法人東京都環境公社の以下の資料を参考にしてください。

『平成23年度東京都区市町村担当者研修 騒音の基礎知識 音の性質、測定と評価』http://www.tokyokankyo.jp/kankyoken_contents/research/documents/h23_souonkenshu.pdf

※3:『受験者数・平均点の推移(本試験)平成24年度センター試験以降』http://www.dnc.ac.jp/data/suii/h24.html

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