#東京都LGBT条例 を「LGBTフレンドリーな東京」というアピールで終わらせないために

現在、日本にはLGBTを保護/承認する法律がない。
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Soshi Matsuoka

「差別をなくす」という五輪憲章の理念を実現するために、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、東京都でLGBTへの理解やヘイトスピーチ対策を盛り込んだ条例をつくる準備が進んでいる。

現在、日本にはLGBTを保護/承認する法律がない。そんな中、東京都のこうした動きは、LGBTを取り巻く課題解消のための大きな追い風となるだろう。

しかし、この条例制定は手放しに喜べるものではなかった。

5月11日に東京都の小池都知事より発表された条例のポイントを見る限り、残念ながらこの条例の実効性は担保されていない。一言でいうと、この条例案では「LGBTへの差別をなくしましょう」というアナウンスやLGBTに関する相談を受け付けはするが、それ以上はしないという恐れがあるのだ。

fairではこの東京都LGBT条例の「良い点」「悪い点」、そして「要望」を整理した。東京都では6月30日まで、この条例案に対するパブリックコメントを募集しているので、参考にしてほしい。

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fair

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良い点:差別解消を宣言はしている

1、性的指向や性自認による差別の解消を宣言していること

性的指向や性自認による差別をなくすことは大事だということが、広く社会に共有される。

2、そのために継続的な啓発をできるようにしていること

研修やポスター掲示など、継続的な発信ができる。

3、LGBTが相談できる横断型の相談窓口を作ること

「教育」や「労働」など、LGBTに関する横断的でワンストップの窓口ができる。(窓口でどのような対応がなされるかは不明)

悪い点:宣言する「だけ」で、何かあった時に守られない可能性

1、宣言する「だけ」の可能性

条例案には「差別してはならない」という言葉はない。そのため、実際に差別的な取り扱いを受けてしまった時に、行政にしっかりと対応してもらえない可能性がある。(「差別してはならない」と条例に書いていないから、対応しなくても特に咎められることはないことになる)

2、当事者の意見が反映される保障がない

当事者の意見を直接伝える機会がなく、見当違いな政策が実施される可能性がある。さらに当事者の目線から施策を見直すことができなくなる。

3、相談窓口の対象は「LGBT等」

相談窓口の対象が「LGBT等」となっており、当事者であることをカミングアウトする前提となっている。また、当事者の家族や友人の相談を想定できていない。

要望:「差別禁止」と、当事者が参画できる「審議会」「苦情処理委員会」を

1、「差別禁止」の文言を入れる

「差別してはならない」という一言を入れる。この一言で「差別禁止」が明文化され、その他の施策を進める上での根拠となる。差別的な取り扱いをされた際に行政や司法の対応が保障される。

2、審議会+苦情処理委員会の設置を規定する

審議会の設置を規定し、当事者が意見を述べられるようにする。さらに、苦情処理委員会の設置を規定し、差別的な取り扱いをされた時に苦情の申し立てをできるようにする。

3、SOGIに関する相談窓口にする

カミングアウトしていない当事者や、家族や友人の相談も想定し、LGBTではなく「性的指向・性自認」に関して相談できる窓口にする。

もし変わらなかったら...?

東京都LGBT条例は、他のさまざまな条例、法整備に影響を及ぼす可能性がある。

1、国レベルの法整備に悪影響の可能性

今回の条例は東京五輪に関連しているため、国も関係してくる。そのため、今後国でLGBTに関する法整備に取り組む際、今回の条例のレベルが前提となり、差別を禁止する規定や審議会も取り入れられず、何も対処してくれない法律になる能性がある。

2、他の自治体が東京都より高いレベルでの条例を作れなくなる可能性

東京都の市区町村で、東京都よりもレベルの高い内容(差別禁止を明文化する等)が作りにくくなる可能性がある。さらに、同性パートナーシップ制度等の広がりもストップさせられる可能性がある。

3、条例はこれから先長い間改正されない可能性

条例は、場合によって10年単位で改正されない可能性もある。そのため、条例がつくられる時点でどれだけ高いレベルに引き上げるかが重要になってくる。

条例をより良くする方法:パブリックコメント

現在、東京都LGBT条例は6月30日まで「パブリックコメント」を募集、この条例に対する意見を郵送・FAXまたはメールで受け付けている。

パブリックコメントの送り方の詳細は東京都のWEBサイトから確認できる。

メールの場合、「ikenboshu-jinken@section.metro.tokyo.jp」宛てに、件名「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例(仮称)の概要への意見」として、本文に氏名(名称)及び住所(所在地)、意見の該当箇所・意見内容・理由を添えて送信する。

差別をなくすために、長期的な目線で研修や啓発をすることは非常に重要だ。しかし、今困っている人にとって、研修や啓発「のみ」では目の前の現実は変わらない。

せっかく条例ができるのであれば、より実効性の高いものとして成立してほしい。「差別禁止」の明文化、当事者が参画できる審議会や苦情処理委員会の設置、LGBTではなく「SOGI」に関する相談窓口への変更を求めたい。