「現金を一切使わないお正月」に挑戦してみた

辛かった

新年を迎えるにあたって、何か新しいことにチャレンジしたいと思った。長く続くとは思えないけど、元旦は新しい自分に出会うチャンスだ。

私は2018年、「なるべく現金を使わない」ことにした。キャッシュレス化が進む世界で、身をもってそれを体験したくなった。

「なるべく」と書いたのは、日本がまだまだ現金主義だということを知っているからだ。ほとんどのコンビニやカフェではスムーズにカード決済を行えるが、たまに現金しか受け付けないお店がある。そして、現金を使う場面が多いのは割り勘の時だ。飲み会の多い季節、お札は用意しときたい。まとめてカードで払うこともできるが、その場合の回収率が100%ではないこともよく知っている。そのためにお札を数枚用意している。

せっかく始めたので、普段現金を使用する場面でもキャッシュレスで過ごしてみることにした。結果から言うと、散々だった。現金を使わないことがこんなに大変だと思わなかった。そして日本人が特に年始に現金信仰が強いことがよくわかった。

今からその顛末を書いていく。

① お年玉を電子化したら、家族から嫌がられました。

私には10歳離れた妹がいる。今年は高校を卒業して大学に進学する予定だ。

今年は受験を必死に頑張っている彼女に応援の気持ちを込めて渡すことにした。

お年玉といえば、現金。そこをあえて私はAmazonカードを渡すことにした。

これ以上、万能な電子マネーはないと思ったからだ。

早速コンビニに行って、ぽち袋と入り口近くにあるAmazonカードを持ってレジに進む。店員さんにチャージしたい金額を伝える。財布から颯爽とクレジットカードを出す。

「あ、すいません。現金でお願いします」

「え。この店舗だけですか?」

「いや、全店舗で現金のみのお取り扱いです」

電子マネーを買うのに、現金しか使えないってどんなジョークだろう。

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ホームページでも、確かに「現金」と書いてある...。
Amazonホームページ

なるべく現金使わない主義のわたしは渋々とお札を出した。ぽち袋が108円だったから、お釣りが大量に出た。テンションが一気に下がる。片手いっぱいの小銭をポケットに突っ込んでちょっと重くなったロングコートと共にコンビニを去った。

いよいよ妹にお年玉を渡す時がきた。お年玉という言葉の響きで妹は駆け寄ってきた。現金なやつめ...。

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ぽち袋を渡したらそのまましまおうとしたため、慌てて「ちょっと開けてみて」と促した。彼女がどんな反応をするのかワクワクした。

彼女は薄い袋から5000円札が出てくるのか1万円札が出てくるのかを期待していたと思う。出てきたのは大きなアルファベット「a」だった。彼女の想像をはるかに超えたお年玉に「なにこれ」と小さな声で呟いた。

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「あのね、お年玉を電子化してみたの!いいでしょ!」彼女の困惑した表情を無視するようにできるだけ明るい声で説明した。説明には不十分すぎたのだろう。「いらない」と言われた。

「わたしAmazon使わないし、いらない」

「また、ありさは自分のことばっかり考えて」

祖母「私、使おうか」

おばあちゃん、Amazonがどんな会社かも知らないのに...。優しさでさらにいたたまれない気持ちになった。Amazonで買えないものはほとんどない。一般的な買い物なら現金と変わらない価値があるのではないか。そう思い立って、このお年玉企画を考えたが、家族の不信感は募るばかりだった。

お年玉を電子化することは、まだまだハードルが高そうだ。渡す相手がお年玉といえば「現金」と思っている限り、よっぽどのものをあげない限り、落胆されてしまう。相手の気持ちを優先するなら、おとなしく現金を手渡した方が良かったと気付いた。

② お賽銭を楽天ポイントに替えたら、もうその場所にいる必要はない気がしてきた

1月4日午後4時40分。私は、すでに2時間極寒の中、並んでいる。指が動かなくなり、足の感覚はもうない。買ってきたホッカイロが冷え切っている。

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ここは、東京都・虎ノ門にある愛宕神社。出世の石段で有名で虎ノ門界隈で働くオフィスワーカーたちに人気の神社だ。私がなぜ仕事始めの一番混みそうな時期に、体を震わせながら並んでいるかというと、この神社が全国でも珍しいキャッシュレス神社だからだ。

1月4日の1日限定で楽天Edyの賽銭を受け付けていた。

さらに今年は楽天Payも導入した。Edyを持っていなかった私は、早速楽天Payのアプリをダウンロードして実験してみることにした。賽銭箱に貼ってあるQRコードを読み解くだけで、登録してあるクレジットカードから引き落としができる。さらに、ポイントも使える。

キャッシュレス生活をとことん追求するなら、これは行ってみるしかないと思い、終わりの見えない列に足を運んだ。

ホッカイロもあったかいお茶も買っていたが、1時間くらいでその効果はなくなった。あったか〜いお茶は、冷たいお茶になり、ホッカイロは指の感覚が麻痺してそのありがたみを味わえない。

Twitterで「愛宕神社」と調べると、長蛇の列を見て諦めた人が多いことに気づく。私もできれば諦めたい。しかし、キャッシュレス神社は1月4日限定だった。今日しかなかった。

20メートル先のQRコードを読み取って、この場から送金できないかとも考えた。並んでいる最中に気づいたのだが、そもそも電子マネーならわざわざ神社に行く必要はあるのだろうか。電子マネー化が進めば、海外に住んでいる人も含めて、誰もが好きな神社にお賽銭できる。こんなに寒い思いをしてみんなが一堂に会することはない。

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賽銭箱が見えてきた、ここから電波は届かないのだろうか
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合計2時間半。早く終わらせたい、という気持ちがピークになった。目の前に現れたお賽銭箱の隣にちょこんと添えられたキャッシュレス専用お賽銭箱。しかし、その箱にお金は入っていない。QRコードをスマホアプリで読み取って、金額入力に進む。ケチな私は、30円を押す。さらにポイントを使った。

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シャリーン

と音がして、「ありがとうございます」と画面に出る。もうこの寒さから解放されると思って、小走りにその場を立ち去った。そして、「二礼二拍手一礼」をすることをすっかり忘れる。楽天Payで賽銭できたことで満足してしまい、肝心のお参りができていなかった。2時間半の苦労はなんだったのか。

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しかし、言い訳に聞こえるかもしれないが電子化すると、「二礼二拍手一礼」のタイミングが難しい。小銭を投げて、いつも耳にしている「チャリーン」の合図がないから、拍子抜けするのだ。もしかしたら、あの音にこそこの「初詣」の美学はあるのかもしれない。

以上の2つの体験だけで判断するのも難しいが、日本のあらゆる場面でキャッシュレスを取り込むのはかなり難易度が高いことがわかった。キャッシュレスを導入している1月4日の愛宕神社でさえ、ほとんどの人が現金でお賽銭をしていた。(もちろん、Suicaなどの他の電子マネーを可能にしたら増えていたのかもしれないが)

電子マネーへの不信感はまだまだ拭えないし、現金は「ありがたいもの」という心がまだまだ日本人の中にはある。結婚式に新札で現金を用意するのも海外ではなかなかない文化らしい。

キャッシュレス化が進んで、あらゆる消費活動が電子マネーで実行されたとしても、お年玉やお賽銭は現金のまま存在するかもしれない。50年後、100年後、特別な日に「現金を使う不思議な国ニッポン」として取り上げられる日が来るのだろうか。そんなことを神社からの帰り道にまだ震える手を温めながら、ふと思った。