基礎を軽視する日本は生き残れるのか?

国家プロジェクトが比較的目先のサービス(応用)偏重で良いのでしょうか。
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AI、ビッグデータ、IoT・・・とIT業界は活況を示しています。

その一方、これで良いのかな?、と疑問に感じることもあります。

今の日本は、ITの技術を使った応用に多くの関心が行ってしまい、それを実現するコア技術への関心が薄れているのではないか。

企業の方々から大学に求めることを伺うと、しっかりした基礎の素養に基づいた力を要請して欲しいと言われます。

数学、物理学、統計学といった学問はいつの時代も重要です。企業としても産業構造の変化は非常に激しく、いま儲かっている事業にだけ特化したような人材では困るのでしょう。少々の事業の変化にも追随できるような普遍的な力を持った、基礎が強い人材を育成して欲しい、という産業界の要求を感じます。

その一方、大型の国家プロジェクトに代表されるような、日本政府の研究予算の配分が、最近はともすると基礎軽視になっているのではないでしょうか。

国家プロジェクトも色々な種類があり、産業振興や社会インフラの整備を目的とするファンディングでは、国民の生活に直接的に役に立つことを目指す、というのは当然でしょう。なぜ税金を使って研究開発を行うか、説明責任があるわけです。

最近はもともと基礎研究を重視していた国家プロジェクトでも、技術自体の優劣はさておきとりあえず応用を目指す、というケースが目につくようになりました。

時には論文など書かなくても良い、実用化せよ、といわれることもあるようです。

このように財政状態が厳しい日本においては、研究も比較的目先の利益を求められがちなのは、仕方ないことなのかもしれません。

ただ本来は企業がやるような、サービスへの応用を、大学がやっているケースでは悪く言うと、大学は企業の下請けのようになってしまい、そもそも大学がなぜ必要なのか。

ひとつの理由としては、半導体をはじめとする基盤技術が世界の競争で苦しい状況にあるので、今更研究開発に投資しても無駄ではないか、ということでしょう。

ただ応用重視を推進して、例えばGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が作った技術をもとに、新しいサービスを展開しても、どれだけ持続可能なのか。

肝心な技術を海外勢に握られていたら、日本市場では言葉や商慣行の壁で日本企業が生き残れても、どれだけ世界で戦えるのか。

AIにしても、AIを実行するハードウエアも重要になってきており、グーグルやアップル、アマゾンのみならずテスラもAIを高速・低電力に実行する半導体・LSIの開発に乗り出しています。

一方、日本では半導体・LSIはもう日本がやる技術ではない、とさえ感じられます。

メディアも同じです。

AI、IoTのブームとともに、既存のIT技術を使ったサービスやアプリケーションについては関心を持っても、AI・IoTを実現するための基盤技術には、多くのメディアは目を向けなくなりつつあるのではないか。

AIにしろIoTにしろ、高度なアルゴリズムを実装する基盤の半導体やソフトが、最終的にはサービスの差別化をするのではないでしょうか。先に述べたGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)のみならず、日本でも自動車関連の企業がこぞって半導体のエンジニアを採用しているのは、基盤技術重視の例ではないでしょうか。

そんな時に、国家プロジェクトが比較的目先のサービス(応用)偏重で良いのでしょうか。

(2018年3月13日Takeuchi Laboratoryより転載)