「今やっていることは、すべて未来につながっている」。私が2児のワンオペ育児をしながら起業できた理由

キャリアが途切れ、自信を失っていた私の再起を支えてくれたのは「血の繋がっていない」家族だった。

今回お話をお聞きしたのは、地元静岡県掛川市の地域活性化をテーマに、2つの大きなプロジェクトを遂行している2児のママ 、母里 比呂子(もりひろこ)さん。
母里さんの旦那さんは現在単身赴任中で、上の子は幼稚園、下の子は一時保育を活用しながらワンオペで育児をしています。そんな中でも、ママのキャリア支援を行う「育ママキャリアシェアiNG」と、地元の生産者さんが愛情をこめて作っている有機栽培の日本茶・抹茶にフォーカスし、日本茶の良さを広く知ってもらうために作った有機抹茶ブランド「MATCHA HEAVEN」を立ち上げるまでに至った経緯とは!?

会社員時代は、忙しくバリバリ働いていた母里さんですが、結婚を機に仕事を辞め、その後すぐに子供を授かり、一度キャリアが途切れたことで自信を失ってしまったそう。キャリアが一度途切れたママが再度自信を取り戻して、プロジェクトを立ち上げられた行動力や思考、子育てと仕事を両立できる秘訣についてお話を伺ってきました!

母になる前と後でガラッと変わった仕事観

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母里 比呂子(もりひろこ)さん
提供:LAXIC

編集部:母里さんのキャリアを教えていただきたいのですが、大学卒業後は客室乗務員をされていたんですよね?

 

母里比呂子さん(以下、敬称略。母里):小学生の頃から客室乗務員に憧れていて、大手航空会社で国際線の客室乗務員として3年間働きました。その後、リクルートのホットペッパービューティでヘアサロンの広告営業にキャリアチェンジしました。

 

編集部:ずっと憧れていた客室乗務員からリクルートの営業職へキャリアチェンジしたきっかけは何だったんですか?

 

母里:勤めていた航空会社で大幅なリストラがあって、それがきっかけで、未来へのキャリアが描けなくなってしまったんです。

 

編集部:確かにそうですよね。

 

母里:そこで、キャリアチェンジをしようと考えました。おせっかいな性格で、誰かのために何かをすることが好きで、これが私の軸になっているように思います。自己満足かもしれませんが……(笑)

 

編集部:次のキャリアを決めるうえでポイントになったんですね。

 

母里:その当時、キャリアについていろいろと考えた結果、キャリアコンサルタントが自分には合っているのではないかと思い、転職エージェントの会社を受けました。

 

編集部:でもそれが、なぜリクルートの営業だったんですか?

 

母里:勝手に採用になると思い込んでいたのに、最終選考で営業経験がないからという理由で不採用でした(笑) それで、短絡的ですが、「営業経験が必要ならリクルートだ!」と思い、面接を受けてご縁があって採用されました。

 

編集部:自分に必要なものが分かったら、飛び込んで挑戦できるところは母里さんの素敵なところですね! 実際、リクルートに入社されてどうでしたか?

 

母里:それが思った以上に大変で…… 正直にいうと、なんで入社したんだろうと、はじめの3ヶ月間は毎日思っていました。

 

編集部:そうなんですか?

 

母里:入社半年は飛び込み営業をしていたのですが、アポすら取れず、毎日泣きながらやっていましたよ。でも、面倒見が良いリーダーに支えられ、先輩たちのナレッジを活用したりフィードバックを受けたりするうちに、クライアントが求めているものがだんだんと分かるようになってきて、契約も取れるようになりました。それからは毎回、目標を達成し続けるうちに、仕事も楽しくなりました。

 

バリバリ働いていたのに、妊娠を機に主婦へ。他人と比べて塞ぎこむ日々

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提供:LAXIC

編集部:客室乗務員、リクルート時代とバリバリ働いていた母里さんですが、現在の事業を立ち上げるまでに至った経緯は何だったんですか?

 

母里:結婚が決まり、これまでのような昼夜を問わず仕事をしている生活では、家庭との両立は難しいなと考えるようになりました。

 

編集部:確かに、結婚をすると子どもはどうするかという話も出てくるので、家庭と仕事のバランスを考えますよね。

 

母里:そうなんです。将来子どもが欲しいと思った時に、今と同じように働くのはムリだと思って、業務量のことを上司に相談しました。でも、私なら大丈夫だって、乗り切れると明るく言われてしまい……(笑)

 

編集部:母里さんなら、乗り越えて上手に両立できそうですものね(笑)

 

母里:でも、やっぱり家庭での生活も大切にしたかったので、キャリアチェンジしようとリクルートを退職した矢先に、妊娠が発覚し、専業主婦になりました。

 

編集部:実際に仕事を辞めてみてどうでしたか?

 

母里:それが、キツかったんです…… 今まで大変ながらも、やりがいや充実感をもって働いていて、頑張った分だけ評価されて褒められた社会生活があったのに、主婦になって誰かに承認されることがなくなってしまったように感じました。とくに、私のまわりには頑張っている友人が多くて、余計に他人と比較してしまって…… ツラくなりました。

 

編集部:その気持ち分かります! キャリアを中断してしまったママ達はこのモヤモヤ感を持っている方が多いと思います。

 

母里:子どもができてとても幸せな気持ちと、これからの人生を送るうえでの転機にもなりましたね。子育ても頑張りたい、でもやっぱり仕事もしていきたいという想いがあったので、悶々とした気持ちを埋めるべく、これから産まれてくる子どものためも思ってベビーマッサージの資格を取りました。心に違和感を感じながら日々過ごしていた中、ご縁があって株式会社OMOYA代表猪熊真理子さんと出会い、長女が6カ月の時から子連れ出勤と自宅作業を併用しながら働ける環境で働くことができました。代表は、できることにフォーカスして、とにかく承認してくれる方で、日に日に自信を取り戻せました。すると、自然と今までの経験が点と点で繋がっていき、オイル美容が好きだったこと、ベビーマッサージをするときに、赤ちゃんに使えるオイルが少ないことに気づいて、安心安全で無添加のオイルが無いなら自分で作ろうと「hirondelle(イロンデール)」というブランドを立ち上げました。

 

編集部:できることから1歩を踏み出してみると、さらに歩みを進めていくことにつながるんですね。

 

地元静岡県掛川へ地域貢献をしたい! 事業を立ち上げた原動力 

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提供:LAXIC

編集部:なぜ今度は「育ママのキャリア支援事業iNG」と有機抹茶ブランド「MATCHA HEAVEN」を立ち上げたのですか?

 

母里:元々、地元である静岡県掛川市を盛り上げたい、恩返ししたい気持ちを持っていたんです。ちょうどその頃、第2子出産のために実家に帰っていて、地元の子育て中の友達と集まる機会があって「ここだと自分が思うような働き方ができない」と相談されたんです。その時に、私も同じように悩む時期があったな、と。環境や考え方を変えれば自分ができたように、ママでも自分らしく働けるだろうと思い、それで「育ママキャリアシェアiNG」を立ち上げました。

 

編集部:ここでも母里さんの行動力が活きていますね! 一旦キャリアが中断してしまうと、子育てしながら思うように働けないというジレンマを抱えますよね。

 

母里:そうなんです。私がOMOYAで働いていたとき、再度キャリアを築き自信を取り戻せる機会を与えていただけました。その時に感じたのは、働ける環境、モチベーション、能力の3つが揃えばママでも色々な可能性が十分あるなと感じました。

 

編集部:では、もうひとつの有機抹茶ブランド「MATCHA HEAVEN」をプロデュースしたきっかけは何だったんですか?

 

母里:「育ママキャリアシェアiNG」を立ち上げたことで、掛川市の観光課の会議に出席するようになったことがきっかけとなりました。その会議では、掛川市の魅力をアピールするためにどうするか? という議題で、掛川市や静岡県について深く考えさせられる時間を持つことができました。祖父が煎茶の手もみの先生だったという縁も感じて、私が新しい日本茶、抹茶のプロデュースしようと決めました。

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MATCHA HEAVEN
提供:LAXIC

編集部:実際に事業を始めるにあたり、ご家族の反応はどうでしたか?

 

母里:夫の反応ははじめはポジティブではなかったですね(笑) というのも現在、夫は単身赴任をしています。なので、ひとりで全部できるのか心配だったみたいです。ほとんどのご家庭では、夫の赴任先についていくのが一般的だと思いますが、私にも想いがあり、夫と話し合いを重ね、結果的に、私と子どもは東京に残り、2拠点生活になりました。

 

編集部:ご主人が単身赴任だと完全にワンオペですよね。仕事との両立は大変ではないですか?

 

母里:夫が行ったばかりの半年間はとても辛かったです。休日は、夫が色々と助けてくれていたことを実感しました。週7日家事、育児、仕事なので、慣れるまで2カ月はかかりました。でもだんだんペースが掴めてきて、今は何とかなっています。周りにいる皆さんに支えられながらですがね。

 

大きなプロジェクトを抱えながらも、子育てと両立していく秘訣

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提供:LAXIC

編集部:2つの大きなプロジェクトを抱えて、仕事と子育てをどうやって両立しているんですか?

 

母里:集中して仕事をしたいときは、子どもが寝ている朝と夜を活用しています。朝5時に起きて、原稿のチェックをしてクライアントへ送ったりしています。昼間は打ち合わせなど、人と会う時間にしています。例えば「MATCHA HEAVEN」のパッケージデザインの打ち合わせや、お茶に関するエビデンスを取るために、お茶農家さんや教授に話を聞きにいったりするなど、ここ最近の昼間はお茶のことばかりやっています(笑)

 

編集部:打ち合わせや人と会わなければならない時は、お子さんはどうされているんですか?

 

母里:打ち合わせに子どもを連れてきてもいいよ、と子連れでも歓迎してくださる企業さんも多くなり、同伴することが多いです。ですが、もちろん難しい場合もあるので、夫や両親は東京にいないので、周りの方々に助けてもらっています。サードファミリーと呼んでいるんですが、血が繋がっていないけれど本当の家族のように大切な存在、サードファミリーやママ友たちが幼稚園へお迎えに行ってくれたり、家で預かってくれたり、思いやりに溢れる周りの方々に支えられています。

 

編集部:母里さんの人徳ならではですね。ちなみに、旦那さんは家族と離れて寂しいとは言っていませんか?

 

母里:きっと寂しいのでしょうけど、それを感じさせないように、毎日子どもの写真を送ったり、電話でお互いの状況を話したり、こまめに連絡を取っていますよ。尊敬する先輩にも「男は浮気するからとにかくマメに連絡しろ」とアドバイスされました(笑) 夫がいるからこそ、今の生活が送れていることに感謝し、好きなことをさせてもらっているから、大変なことがあっても自分で決めたこと、と乗り切っています。

 

編集部:これから事業を含め、どうしていきたいですか?

 

母里:育ママキャリアシェアiNGに登録しているママ達は、子どもたちが中学生くらいになったら、自分の時間にも余裕がでてきて、外に出て仕事をしたい欲求が増すと思うんです。そんな時に、育ママキャリアシェアiNGでの仕事がキャリアとしてしっかり認められるものにして、将来好きな仕事に就けるママが増えて巣立っていければいいなと願っています。大変ではありますが、仕事も子育ても人生楽しんでいる人が周りに多いので、自分も笑顔で頑張っていきたいです。

 

編集部:カッコイイですね! 最後に、LAXICの読者へメッセージをお願いします。

 

母里:今やっていることは、全部未来に繋がっていると思っています。何かひとつでも「これをやる」ということを見つけて、15分でも毎日続けていくことで、未来がだんだん開けていくのではと感じています。何でもいいんです! 何かを見つけることが、自分の人生を豊かにしていくと思います。私は自分がしんどくなったときは、今やっていることは10年後には絶対こうなっている! と考えて奮い立たせています。物事を前向きにとらえているとポジティブになれますし、楽しいですよ。

 

妊娠・出産を機にキャリアが中断してしまい、子育ては楽しいけれど、どこかでモヤモヤした気持ちを抱えているママもいらっしゃるのではないでしょうか。
今回お話を聞いた母里さんは、お会いしたその瞬間からお茶のすばらしさや健康効果、お茶農家の将来の担い手集めについてまで、最近、立ち上げた有機抹茶ブランドへの愛が止まらないようで、たくさんのお話をお聞かせくださいました。

傍から見たら大変な状況にあるワンオペ育児の中でも、持ち前のポジティブさと行動力、そして1つのことに、とことん打ち込み取り組む姿は、とても輝いていました。母里さんのお話を聞いて、誰しも不安を感じたり自信を失ったり、悩む時期はあるけれど、もっと自分のやってみたい欲求を大切にしてみてもいいのでは? と感じました。何かやりたいことが見つかったら、勇気を出して最初の1歩を踏み出してみると、これまでの見え方が変わるかもしれませんね。

母里比呂子(もりひろこ)さんプロフィール

大手航空会社の国際線客室乗務員を経て、リクルートへ転職し、美容業界の営業を担当。結婚・妊娠を機に退職後、専業主婦に。その時に感じた社会との断絶感から株式会社OMOYAで子連れ勤務で自信を取り戻し、オイル美容にハマっていたこともあり、妊娠中のべビーマッサージの資格取得がきっかけとなり、赤ちゃんでも安心して使用できる無添加オイルブランド「hirondelle(イロンデール)」を立ち上げる。現在は、地元静岡県の地域活性化に貢献したいと、地方ママのキャリア支援を行う「育ママキャリアシェアiNG」代表、有機栽培の日本茶・抹茶の魅力を世界に発信するため「MATCHA HEAVEN」ブランド代表を務める。2児の母。

HP:有機抹茶ブランド「MATCHA HEAVEN」

 文・インタビュー:北向由紀子

 

(この記事は2019年11月1日LAXIC掲載記事『2児のワンオペ育児をしながら、故郷の地域活性化プロジェクトを担うスーパーママの仕事術』より転載しました)