メルカリ山田進太郎氏が、理系を目指す女子学生向けに奨学金支給へ 「世の中には営利では解決できないこともある」

山田氏は、自身も2人の娘をもつ親であることに触れ、日本におけるジェンダー不平等が「彼女たちに立ちはだかるであろうことを考えると、個人として何かできることはないかという思いが強くなった」と語った。
|

メルカリCEOの山田進太郎さんが、高校進学時点で理系を目指す女子学生向けに奨学金を支給するプロジェクトを8月4日、開始する。社会におけるダイバーシティ&インクルージョンを推進する目的で、個人として7月に立ち上げた「一般社団法人 山田進太郎D&I財団」の第一弾プロジェクトだ。

メルカリとしてではなく個人で財団を設立した経緯について「世の中には営利(目的活動)では解決できないことも多い」といい「自分にはメルカリ株式などの資産があり、これらは社会に還元すべきだと考えており、非営利活動にお金を投じていきたい」「自分は社会に育てられたと思っているので社会に返していくのは当然のこと」などと思いを語った。

また、2人の娘をもつ親であることに触れ、日本におけるジェンダー不平等が「彼女たちに立ちはだかるであろうことを考えると、個人として何かできることはないかという思いが強くなった」とも語った。

この財団には中長期で個人資産30億円を投じていく予定だという。なお、CEOを務めるメルカリへの関わり方は変わらない。 

Open Image Modal
オンライン記者会見に登場した山田進太郎さん
ハフポスト日本版

 

選考は抽選。「気軽に応募してもらうため」

プロジェクトの開始にあわせて開かれたオンライン記者会見に登場した山田さんは、高校入学時点でSTEM(科学・技術・工学・数学)分野への進学を目指す女子学生100名に対して、返済不要の奨学金を支給するプログラムの開始を発表。

日本の大学における理工学系の女性比率がOECDの中で最低レベルであるという現状を紹介しながら、"女性は文系という固定観念の存在や、理系女性のロールモデルがいない・見えづらいなどの構造上の問題を指摘した。

財団の活動を通じて、大学入学者におけるSTEMの女性比率を18%(2021年度)から35年度までに28%に上げることを目標にするという。

Open Image Modal
オンライン記者発表の投影資料より
ハフポスト日本版

一般的な奨学金プログラムのように、成績や家庭の経済状況を問うことはしない。書類審査や面接などもなくし、能力主義によらない抽選での選考とする。

応募者の学校や専攻が偏りすぎている場合には調整を行う可能性はあるというが、「より多くの人に知ってもらって、現実的に考えてもらって、気軽に応募してもらう必要があると考えた」結果だという。

メルカリの事業経営で培ってきたノウハウを生かして、オンラインでの効率的な選考プロセスの確立や、STEMを目指す女子学生へのオンラインイベント・コミュニティの提供などを目指す。

メルカリCEOとしてではなく、個人として

これまで、CEOを務めるメルカリでもダイバーシティ&インクルージョンの推進を目指して、外国籍エンジニアの積極採用や、ジェンダーマイノリティ向けエンジニア育成プログラム実施、無意識バイアスワークショップ研修資料の公開など、様々な施策を講じてきた。しかし「特にエンジニアにおいては、国内の女性エンジニアが非常に少ないこともありジェンダーギャップの解消が非常に難しい」と感じてきたという。

社会人になる前の中学生の時点で、進路選択にジェンダーギャップの影響が出ていることを解決するにはどうすればいいのか。個人財団の設立には、より若い世代へのアプローチが必要という思いがあったという。

「私は、世の中には営利(目的活動)で解決できないことも多いと考えています。(マイクロソフト創業者の)ビル・ゲイツさんも自身の財団でポリオ撲滅などに取り組んでいますが、撲滅してしまうと薬は不要になるし、こういった活動は営利(目的)では合理性がありません。非営利活動にはお金がかかりますが、自分にはメルカリ株式などの不相応な帳簿上の資産があります。これらは社会に還元すべきだと考えており、これから徐々に活動を広げながら、非営利活動にお金を投じていきたいと考えます」

社会人、あるいは大学生くらいまでならメルカリとしての活動ということで説明がつくかと考えましたが、それより手前にある10代前半というところまでどうスコープにできるのか、と考えたときに、非営利という形でできることもあるのではないかという考えに至りました」

 

2018年には、東京医科大で女子受験生の点数を減点するなどの女性差別が明らかになったことを発端として、複数の大学の医学部で女子学生や浪人回数の多い受験生を不利に扱うなどの問題が表面化した。世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ指数」で日本は156か国中120位。教育の分野では92位だ。新型コロナの影響でジェンダーギャップがさらに顕在化する中での、山田さんの挑戦となった。

奨学金プログラムの概要

募集期間:2021 年8月4日(水) ~9月30日(木)

応募資格:日本国内の高等学校理数科、高等専門学校、スーパーサイエンスハイスクールを受験、進学予定であること(中学校からの内部進学者 を除く) 
女性(性自認もしくは戸籍上の性別が女性の方)であること

支給金額 国公立学校:25万円(年額)私立学校:50万円 (年額) 

採用人数 最大100名程度 

応募方法 下記URLにある応募フォームより応募 https://www.shinfdn.org/scholarship2022 

 

Open Image Modal
プロジェクトのチラシ
山田進太郎D&I財団