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優秀な社員を失わないために。社長たちが語る「これからの中小企業」経営

人がどんどん辞めていく…を脱するために 中小企業版「働き方改革」の始め方
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「働き方改革」が提唱されてから、2年目に突入する。残業による長時間労働は社会問題となり、"ワークライフバランス"は個人だけでなく企業のテーマとしても大きく掲げられるようになった。

ノー残業デーや、プレミアムフライデー。残業時間を減らすための制度は生み出されるが、それらは"改革"につながっているのだろうか。スタッフはもちろん、経営管理の立場からも解決すべき課題は多い。なかでも中小企業の場合は、経営者みずから柔軟な働き方を取り入れ、スタッフ一人ひとりの働きやすい環境づくりも求められる。

そこでキーワードとなるのが「勤怠管理」と「リモートワーク」だ。

子育て中のビジネスマンや社外業務の多いセールスパーソンたちに、リモートワークで柔軟性のある働き方を推奨すること。そのスタイルに適した勤怠管理システムを取り入れること。この二点がポイントになるようだ。

今回ハフポストでは、「働き方改革」を推進する中小企業の経営者3名に集まってもらい鼎談を実施。「中小企業だからこそ」実現できる、システムを利活用した「働き方改革」について話を聞いた。

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『五光発條株式会社』代表取締役 村井秀敏さん(写真左)『宇佐美本店株式会社』代表取締役社長 宇佐美志都さん(写真中央)『アイパブリッシング株式会社』代表取締役 福嶋健一郎さん(写真右)
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この10年で「働き方」をめぐる環境は劇的に変化している。

——インターネットの普及や労働基準法の改正案などもあり、ここ10年ほどで働き方は変化してきました。石川県金沢市でソフトウェア開発の会社を経営する福島さん(以下、敬称略)は、特に、勤務形態の変化を実感していらっしゃるそうですね。

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長年勤めた企業を退職し、2008年に独立した福島さん。地元の観光アプリ開発などで地域活性にも携わる。
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福島:10年前と比べると、クラウドやネット上のサービスを使う敷居が下がった気がします。私たちの職種で言えば、「パソコンとインターネットさえあれば仕事ができる」という環境が整い、中小企業でも安く簡単に導入できるシステムが普及し始め、リモートワークなど自由度が広がってきた気がします。

——横浜市でバネメーカーを営む村井さん(以下、敬称略)は、東南アジアにも支社を置いてらっしゃいます。管理において、日本との差はありますか?

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国内外4か所に拠点を置く村井さん。バネによるアクセサリーを商品化するなど、モノ作りの場を広げる。
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村井:勤怠管理システムを利用している点では、日本国内よりも東南アジアの工場の方が、ここ10年で発展してきました。現在タイでは指紋認証での勤怠管理システムを導入しています。国内はまだまだですね。

——福岡県北九州市にて醸造和調味料メーカー『宇佐美本店株式会社』四代目社長として家業に従事しながら、書家としてもご活躍されている宇佐美さん(以下、敬称略)。10年前から「リモートワーク」を導入していたとお聞きしました。

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明治創業の家業を継ぎ社長として働きながら、書家としても国内外でご活躍される宇佐美さん。
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宇佐美:10年ほど前は、家業を務めながらロンドンで1年間留学をしていました。当時日本ではWi-Fiなど身近ではなかったのですが、現地では学生たちが生活や授業でも使っていました。私もそれを教えてもらい、日本との時差を利用しながら、社内イントラネットの活用と、メールやスカイプで仕事を回していました。

ここ10年で、日本でもそうしたインターネットの環境整備が一般化し、中小企業もリモートワークの利用頻度が増えてきた印象です。

「休むのはいいこと」残業を減らすため、まずは対話から

——日本では近年、残業や長時間労働が問題視されています。残業対策としてどのような取り組みをされていますか?

宇佐美:定時で帰るのはもちろんのこと、私用で早上がりをしたいという社員の声を率先して聞いています。仕事のために私生活が犠牲になり、それにより仕事に影響が...という状況は避けたいもの。私生活で待っている楽しみは、仕事の原動力にもなると思うんです。そうすると彼らも「早く仕事を終わらせよう」と、努力するきっかけのひとつにもなります。

そのためには、従業員と雇用主の人間関係が重要。彼らが仕事をないがしろにせず、責任をまっとうすると理解しているからこそ、要望を受け入れたくなります。信頼関係から始まることがたくさんあると思います。

福島:ソフトウェア業界はいわゆる"ブラック"と言われることが多いですが、私は創業時から「あまり働かない会社を作りたい」と決め、無駄な残業や休日出勤をなくす努力をしてきました。仕事内容として、パソコンさえあれば、あとは人間の頭の中で作り上げる部分がほとんど。よって"集中時間"をうまく配分をして働いてもらうことがポイントになってきます。

人間の集中力って、一日十何時間も続くはずがないんですよね。集中する時間とそうでない時間をコントロールして効率よく働く。そんな仕組みを、社員自身にも考えてもらいたいと伝えています。同時に、オンライン系ツールを使って密にコミュニケーションをとり、状態を把握しています。

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村井:どちらかというと精神論に近いですが「残業する人の方が偉い」という思想を打破することから始めました。「休むのはいいこと」という考えを広めるため、トップから率先して"子供の学校行事にフル参加する"といった理由での有休取得を薦めています。

無記名アンケートを年に2回行って意見を引き上げたり、オープン経営にして社内実績を共有したり、ボトムアップで課題解決に取り組んでいます。

また、これまで30分単位だった残業管理を1分単位に変更したら、大幅に残業時間が減りました。5分超過した場合に「あと25分は仕事をしないともったいない」といった発想がなくなり、ダラダラ仕事をしなくなりましたね。

——実際にどれほど残業は減りましたか? 残業を完全になくすにはまだ課題はありますか?

福島:土日祝含めて休日出勤はほぼゼロという状態はできましたが、平日の残業時間を大きく減らすには道半ばですね。これを成しとげるには、意識だけの問題ではなく、生産性そのものをもっと上げていく必要がある。そのためのソフトウェア開発手法について、社員と一緒に考えていく必要があると思っています。

村井:残業をなくすには、本人の意識だけではなく、どこまで効率よく管理できるかがポイントかな、と思っています。例えば、交代制で24時間稼働しているタイの工場では、深夜業務しているスタッフを把握するのが難しいんです。不正打刻の心配もあったり...。

管理システムの工夫で、さらに残業を減らすことができればと思っています。

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宇佐美:定時退社が理想ですが、なかなか上手くいかないのも実情。弊社は、食品部と文化部という部署からなります。食品部では近年、釣り具店専売の商品を展開しており、海という自然も相手に加わって生産計画にもより秘策が求められるようになりました。両部署ともに、それぞれ繁忙期は予測できないところもあるのですが、それを前提とした年間事業設計を試みています。事業管理と諸仮説で、実労働時間を事前コントロールすべきだと、私自身の解決意識も高くなってきているところです。

リモートワークで女性が働きやすい環境づくりを実現する

——時間の都合がつきやすい環境は、女性社員の働きやすさにも繋がっていきます。女性社員のために経営者として考えること、目指すことを教えてください。

宇佐美:私自身は、明治から続く地方の醸造業の経営者として、跡取り息子(男)ではなく、女性として生まれたことはマイナスである環境で育ちました。しかし、その女である事実を犠牲的に思わず、女性オーナーだからこそ「女性が働きやすい環境が整備できる」と信じ尽力してきました。

私はアメリカで妊娠・出産を経験したのですが、そこでは日系の大企業と現地諸国企業の、「夫」側が取得できる育休制度の差も感じました。

そういう意味では、日系大企業よりも私たち中小企業の方が柔軟に働き方を変えていけると思いますし、そうすることで取引先の企業もともに環境を整えることができるかもしれません。それはまた、女性の雇用促進や管理職での採用につながり、中小企業の活路にもなるのではないでしょうか。

——ライフステージにおける女性の離職率を下げ、管理職採用を増やすきっかけにもなる「リモートワーク」。10年前から実施してきた宇佐美さんだからこそ提案できることですね。

ご自身のような働き方を、御社の女性社員も取り入れてらっしゃいますか? または今後、部署によっては取り入れていく意向などありますでしょうか。

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ライフイベントによって女性の就業形態は変化していく。経営者側が女性社員を正規雇用で採用し続けるためにも、リモートワーク導入は重要なポイントとなる。
内閣府男女共同参画局

宇佐美:社内では「人生の多様なステージにいる女性の雇用」について、よく話しています。そのキーとなるのが、リモートワーク、まさに社内外でのアドレスフリーな働き方だと。

また、弊社文化部は、私の書家としての作品を仕上げることも業務に含まれます。表具師(職人)との確認などは、もちろん現場ありきなのですが、お互いの経験と知識を共有し、リモート主体でも行えるようになってきています。それも、10年前のロンドン時代から、中小企業なりに率先してリモートワークを取り入れてきた恩恵だと思っています。

——福島さん、村井さんも同じく、女性社員の働き方に関する希望は、会社として対応してらっしゃるそうですね。

福島:はい。ソフトウェア開発というのは能力主義の仕事なので、優秀な人材が結婚や出産のタイミングで辞めるというのは非常にマイナスなんです。

そのため働き方のケアには、小さい会社だからこそ柔軟に取り組んでいます。産前産後の休暇はもちろん、長く育休を取りたい場合や、保育園に預けられるタイミングに合わせて職場復帰したいという要望にも応じています。リモートワークや時短を薦め、社員の都合のいい時間帯を選んで働いてもらっています。

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村井:弊社もまったく同じです。能力ある女性にはいつまでも働いてもらいたい。

そのための働きやすい環境づくりとして、例えば、6歳未満のお子さんがいる社員は30分遅刻免除といったルールを定め、子育てをよりサポートできる取り組みに挑んでいます。

——実際にリモートワークを取り入れている福島さんにお聞きします。導入までに管理者として課題はありましたか? また、今後の改善点などはありますか?

福島:リモートワークを実現するのに、そこまで障壁はありませんでした。新しいツールを使うことも、社員たちにそれほど抵抗もありません。私自身が一週間のうち合計しても8時間ほどしか社にいないため、どこにいても社員とつながって働くことができる仕組みは常に考えています。

リモートワークのツールは便利なのですが、難しいのは、たとえ不十分でもなんとなく情報交換や進捗確認ができてしまうところ。テキストだけでやり取りしていると、「大丈夫です」という言葉が本当に「大丈夫」なのか分からなかったりします。直接会って話していれば、なんとなく感じ取れる違和感みたいなものが、リモートワークのツールでは分からなかったりするんですよね。そこをどうカバーしていくのかは、"リモートワークリテラシー"というべきものを社員含めてあげていく必要があるように思います。

——工場勤務の社員が多い村井さんの会社でも、リモートワーク導入は可能でしょうか?

村井:工場に来なければ仕事にならない人たちに、リモートワークを導入するのは難しいですね。でも例えば、総務や経理といった管理部門で実施し、生産の効率化をはかっていくことで得られた時間的、金銭的な余裕を工場部門に還元していく、みたいなことができるといいですね。

「勤怠管理」と「リモートワーク」で、生産性を上げよう!

残業を見直しつつ、柔軟な働き方を実現するには、勤怠管理が重要となる。

株式会社NTTドコモが提供する"クラウド型"の勤怠管理システム「KING OF TIME」は、インターネットとパソコンさえあれば外出先からでも出退勤の入力ができるので、タイムカード管理による打刻ミスも防止できる。残業時間が増えないようアラート設定も搭載している。労働時間の新たな"見える化"が可能となるのだ。

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「KING OF TIME」操作画面
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「KING OF TIME」操作画面
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福島:自動的に出退勤の時刻が登録されていくのは、社員も管理者も面倒な作業から解放されて良さそうです。見える化の機能もしっかりあるため、社員と一緒に労働時間について議論できそうです。あと、予実管理の機能もあるので、これ一つである程度のことはできそうですね。

村井:一つのツールでここまで利用できれば、管理する側も非常に楽になりますね。

同社が提供するビジネス版チャットツール「WowTalk for ビジネスプラス(以下、WowTalk)」は、社内のコミュニケーションを円滑にするだけでなく、セキュリティ面でも安心して利用できる。コンシューマー向けサービスを社内で利用すると、社外秘情報が漏洩される危険性が高い。そうした意外と見落としがちなリスクの抑止にもなる。

また、リモートワークをする際にも「WowTalk」を使えば、手間や時間を省きながら密なコミュニケーションが取れる。また、「KING OF TIME」と「WowTalk」は機能連携もしており、「WowTalk」を使って出退勤の報告や勤務状況の確認をすることもできる。

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「WowTalk」見本画面
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村井:ビジネス向けのチャットツールということで、誤送信の防止にもなるし、安全性が高くていいですね。幅広い働き方に対応し、社員との心理的な距離感も縮まれば、迅速な対応ができそうです。

福島:二つのツールが連携できて、「WowTalk」から勤怠管理もできるようになっているのは素晴らしいと思います。「WowTalk」以外のツールとも連携できるようなので、汎用性があり良いですね。

◇◇◇

1月24日の衆議院本会議では、改めて「働き方改革」への強い決意が表明された。本年はより一層「働き方改革」の推進が予想される。今後、中小企業が多様なワークスタイルを取り入れていけば、それに対応するフレキシブルなシステムも必要となってくる。

社外からでも簡単に利用できる「KING OF TIME」は、リモートワークや営業職の勤務状況を適切に把握できる。

「WowTalk」で迅速な業務連携と円滑なコミュニケーションが取れるようになれば、育児と仕事を両立する子育て世代の在宅業務をサポートでき、様々なライフステージに立つ社員をフォローする体制も組める。

両サービスを併用することで「働き方改革」を促進できるよう、株式会社NTTドコモは、セットでの提供にも対応している。今後は、より多様化していくことが予測される中小企業のニーズに細かに対応していくという。

働く人々の意識改革に加え、このようなサービスを活用していくことが、合理的な「働き方改革」へと繋がる第一歩となるだろう。

【対談者プロフィール】

宇佐美志都(うさみ・しづ)

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明治29年創業の醸造和調味料(醤油等)メーカー『宇佐美本店株式会社』四代目当主として家業を継承しながら、書家としても活躍。官公庁や企業の書を揮毫、国内外での執筆・講演活動の傍ら、ボランティア活動も行う。

福島健一郎(ふくしま・けんいちろう)

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大手電機関連会社を退職後、2009年ソフトウェア開発を主とした『株式会社アイパブリッシング』を設立。石川県や金沢市中心部の商店街からの観光ガイド受注や、地域に特化したアプリを開発。

村井秀敏(むらい・ひでとし)

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神奈川県横浜市を中心に、東南アジア含め4箇所に拠点を置く『五光発條株式会社』代表取締役。生活用品から車まで、多岐に利用されるバネの製造に取り組む。