働く人たちが自然と健康的になれる職場環境を作るために「ジャパンヘルスケア」という団体を立ち上げ、病院を飛び出して企業の中に入り、職場環境を変えようとしている岡部大地先生。11月22日にはプレスタートとして、ワークショップを始めました。
-一般の人の健康について感じる課題は何ですか?
多くの人が一日の大部分を占める「歩く」という行為を重要視していないことです。
ジャパンヘルスケアを立ち上げようと思った際に、人々が健康に気を付ける環境をつくるためには何が必要かと考えました。健康になるためには「食」「運動」に気を付けることは広く認知されていて、実際に「食」や「運動」に関するイベントは多く開催されています。それによって一般の方も何が健康にいいのか、何を避けるべきなのかはよく知るところになっていると感じます。
一方で、日常生活において誰しもが行っている「歩く」「座る」という行為に関しては、あまり重要視されていません。患者さんに「今日、何か運動した?」と聞くと、「まだ何もしていない」という答えが返ってくることは多いですが、「今日、歩いた?」という質問に対しては、ほとんどの人は「はい」と答えます。つまり日常の「歩く」という行為は「運動」と捉えられておらず、無意識で行っている動作になっているのです。
しかし、腰痛や肩こりなどの整形疾患の原因の多くは姿勢や、歩き方の悪さである場合が多いです。これらの整形疾患は、高血圧や生活習慣病の次に受診される率が高いにも関わらず、「年だから」などの理由で済まされがちです。人間は、睡眠時間以外は「座っている」「立っている/歩いている」という状態です。つまり意識的に何か運動をしていなくても、正しく歩くという行為をするだけで、健康維持につながるのです。その日常の動きを正しくするためのアプローチが必要だと感じ、「歩く」「座る」をワークショップのテーマにしようと考えました。
-このワークショップの特徴はどこにありますか?
「健康のために」ということを唱っていない点です。
「健康のために良いことをしなければならない」ことは多くの人が知っていますし、理解しています。しかし「今の自分は不健康だ」と考えている人が多いということは、つまり、意識的には分かっているけれども「できない」人が多いということです。例えば、エスカレーターと階段があったら、階段を使ったほうが健康にはいいと分かっていても、「疲れているから」、「早いから」という理由でエスカレーターを使ってしまうのです。しかし、そこに楽しさあったら違ってくると思うのです。そのため、「健康のために」ではなく、「かっこよく見せるために歩く」という楽しさ重視のテーマ設定にしました。
-「自分の健康に興味のない方」にアプローチするのが岡部先生の目標だと思いますが、そのような方はワークショップに来ないのではないですか?
その通りです。そのため、段階を分けています。このワークショップは「健康になりたい/今自分は不健康だ」と思っている人がターゲットです。全体の半分を占めるこのゾーンの人にまずは「正しい歩き方」を伝えていきます。これが第一段階です。
そして、この人たちの周りにいる「健康に興味ない/今、自分は不健康だ」という人たちが、次回のイベントに誘われて参加する。あるいは、このイベントに参加した人が認定資格を取り、企業の中で誰もが必然的に健康を気にするような仕組みをつくり、社員全体の健康状態が上がる段階が、第二段階です。このように、最初は「健康に興味ない/今、自分は不健康だ」という人へのアプローチは半強制的ですが、環境が変わらなければ皆が健康に気を付けないということは事実です。そのため、社会のシステムを変えていくことが必要なのです。
(聞き手/ 北森 悦)
<関連記事>
◆◆◆おすすめ記事◆◆◆
【医師プロフィール】 岡部大地 総合診療医
2011年三重大学医学部卒業、2013年東京女子医科大学 東医療センターで初期研修修了し、現在東京北医療センター総合診療科で後期研修中。内科認定医取得。具合が悪くなってから受診する患者さんたちを多く診療する中で、根本治療は若いうちから身体をケアすることだと感じ、2015年11月「ジャパンヘルスケア」を設立。ビジネスパーソンの健康づくり、職場環境づくりを行う。