「ISIS-K」とは? タリバンと敵対するイスラム過激派。 カブール空港テロで犯行声明

自爆テロで群衆を攻撃することで知られており、自爆後に別のメンバーが銃撃することで追い打ちをかけるという。
IS-Kによる銃撃を受けた首都カブールの大学(2020年11月3日撮影)
IS-Kによる銃撃を受けた首都カブールの大学(2020年11月3日撮影)
AFP時事

アフガニスタンの首都カブールの国際空港周辺で8月26日に起きた爆破テロについて、イスラム過激派組織「ISIS-K」がSNSで犯行声明を出した。

カタールの衛星テレビ局「アルジャジーラ」によると、今回のテロで少なくとも72人のアフガニスタン人と13人の米兵が死亡したという。犯行声明を出したISIS-Kとはどんな組織なのか?

■タリバン支持団体の地方司令官がISに忠誠を誓って設立

ISIS-Kは、かつてシリアなどで支配地域を広げたイスラム過激派「ISIS」(イスラム国)の支部だ。自らを「イスラム国ホラサン州」と名乗っている。

ホラサンとはアフガニスタン、パキスタン、イラン東部にまたがる一帯の歴史的な地名のことで、現在の国境線を否定するISの思想に沿った名前だ。メディアからは「IS-K」「ISIS-K」「ISIL-KP」「ISKP」など、さまざまな略称で呼ばれている。

国際テロリズム要覧2021」によるとISIS-Kが設立されたのは、ISISがシリアやイラクで勢力を伸ばしていた2015年1月だった。パキスタン北西部を拠点にするタリバン支持組織「パキスタン・タリバン運動」の地方司令官だったハフィズ・サイード・カーン氏が、ISISの最高指導者バグダディ氏に忠誠を表明して設立を宣言した。

その後は、タリバンやパキスタン・タリバン運動から戦闘員をリクルート。アフガニスタン東部に活動拠点を設けて勢力圏を徐々に拡大させたが、2016年以降は駐留米軍等の空爆が本格化し、歴代の最高指導者等の多数の幹部及び戦闘員が死亡した。

■戦闘員は2200人とみられ、産院襲撃で24人が死亡した事件も

現在も約2200人の戦闘員を抱えると考えられているが、この数はアフガニスタンから米軍の撤退が進む中で増大した可能性がある。アフガニスタン東部のクナール州の山間部を主要拠点にしている。

ISIS-Kは、車を使ったり、自爆ベストを着た人を群衆の中に送り込んだりして、自爆テロで群衆を攻撃することで知られている。自爆後に別のメンバーが銃撃することで追い打ちをかけるという。

国際テロリズム要覧2021」によると2019年8月に、カブール市内の結婚式場で、自爆テロが発生し、少なくとも80人が死亡、180人以上が負傷。ISIS-Kが翌日に犯行声明を出した。

2020年11月にはカブール大学で武装した2人組が自爆や乱射を交えつつ6時間にわたり立てこもり、学生18人を含む22人が死亡。40人以上が負傷した。2人組の画像と共にISIS-Kが犯行声明を出した。

■ISISがタリバンと敵対する理由は?

8月にアフガニスタンをイスラム主義組織「タリバン」が制圧したことを、多くのテロリスト集団は喜んだが、ISISはそうではなかった。

タリバンがアフガニスタンをジハード (聖戦) で支配するのではなく、アメリカとの和平交渉をしていたことを、ISISは非難している。タリバンを 「背教者」 と呼び、イスラム法をしっかりと適用していないという立場だ。

ISは、米国同時多発テロの攻撃の責任者であるイスラム過激派「アルカイダ」とも異なることに注意したい。アルカイダは、タリバンと緊密な関係を維持している。

米国同時多発テロを主導したのは、タリバンの支配地域にかくまわれていたオサマ・ビンラディン氏が率いるアルカイダだった。これはNATO軍がアフガニスタンに侵攻するきっかけとなった。

■なぜ今、ISIS-Kが特に懸念されているのか?

8月31日より前に、多国籍軍は、可能な限り多くの自国民と反タリバン活動を支援したアフガニスタン人をカブール空港から避難させようと急いでいる。

タリバンは、アメリカとその同盟国が31日までに軍の撤退を完了していない場合、深刻な結果になると警告している。脱出の窓が閉まるにつれ、差し迫った攻撃の脅威が高まっているようだ。

シンクタンク「ロイヤル・ユナイテッド・サービス」のカリン・フォン・ヒッペル氏はスカイ・ニュースに対し、 「ISISはかなり前から大規模な攻撃を受けていない」と指摘。「世界が注視している状況で、何か特別な事件を引き起こす機会と考えているかもしれません」 と話した。

カブールの空港を攻撃することは、欧米諸国の軍だけでなく、タリバンの支配も弱体化させることにつながる。9月11日に米国同時多発テロから20年を迎える今だからこそ、打撃を与える狙いがあるとも指摘されている。

※この記事は、ハフポストUK版を元に翻訳・加筆しました。

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