「ハマスがイスラエルにパラシュート降下」動画が拡散⇒誤り。今回の攻撃とは関係のない動画、日本語でも…

ハマスがイスラエルにパラシュートで降下しているという動画がSNSで拡散していますが、誤りです。【ファクトチェック】

「ハマスが無実の人々を虐殺するためにイスラエルにパラシュート降下するビデオ....」

こんな動画がSNSで拡散している。

しかし、この動画は今回の大規模攻撃が始まる前に別の地域で撮影されたものとみられるため、誤りだ。

ハフポスト日本版はファクトチェックした。

経緯を振り返る

パレスチナ自治区ガサ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは10月7日、イスラエルに対して大量のロケット弾を発射する大規模奇襲攻撃を行った

ロケット弾による攻撃のほか、ハマス戦闘員が爆発物で国境フェンスを破壊してイスラエル側に侵入し、市民や兵士らを射殺した上、人質もとった。

攻撃を受け、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「我々は戦争状態にある」「敵は前代未聞の代償を支払うことになるだろう」と宣言

イスラエル軍も報復としてガザ地区に激しい空爆を行っており、双方の死者は合わせて約1200人に上っている

Xで出回っている画像。「ハマスがパラシュートで降下」→誤り(一部画像を修正しています)
Xで出回っている画像。「ハマスがパラシュートで降下」→誤り(一部画像を修正しています)
Xから(一部画像を修正しています)

パラシュートで降りてくる動画

そんな中、フォロワー11万人超のアカウントが10月8日、Xに「Video of Hamas parachuting into Isreal to massacre the innocent.....」と投稿した。

「ハマスが無実の人々を虐殺するためにイスラエルにパラシュート降下するビデオ....」という意味だ。

投稿には、上空から複数のパラシュートが地表に降下する様子を撮影した動画が添付されていた。

この投稿は拡散され、10日午前10時現在、5700の「いいね」がついている。

「テロリストが空から舞い降りてくる動画」や「ハマスがイスラエルにパラシュートで降下し、罪のない人々を虐殺する動画」などと、日本語で投稿を引用する人も出てきている。

動画はパート3まであった

しかし、上空から複数のパラシュートが地表に降下する様子を撮影した動画は元々、別の人物がTikTokにアップした動画で、今回の攻撃と関係のないものである可能性が高い。

現在、TikTokにアップされていたこの動画は非公開となっているが、ハフポスト日本版がその前に確認したところ、動画はパート1からパート3まであった。

そして、TikTokに投稿された日付は「9月29日」(日本時間)となっていた。

パート1は前述の通り、上空から複数のパラシュートが地表に降下する様子を撮影したもので、パート2とパート3はその続き。

それらを見てみると、サッカーグラウンドで子どもたちが遊んでいたり、パラシュートで降下してきた兵士のような人たちに駆け寄ったりする様子も映っている。

ハマスによる攻撃の最中に撮影されたとは考えにくい。

また、パラシュートで降下してきた兵士のような人たちも銃器を出すわけでもなく、ゆっくりとパラシュートの回収作業を行っている。

別の動画でも子どもたちが歓声

さらに、TikTok上には、同様の場面を撮影した動画が他にも複数アップされている。

いずれの動画でも、グラウンドにいる人々が拍手をしたり、子どもたちが歓声をあげたりしており、攻撃を受けている様子は確認できない。

また、これらの動画には、「パラシュート部隊がアル・ナスル・クラブに上陸」や、「アル・ナスル・クラブ・カイロに着陸する黒いエジプトのパラシュート部隊」という説明書きがあった。

つまり、ハマスがイスラエルに大規模奇襲攻撃を行う前に撮影された動画であり、今回の攻撃とは関係の無い動画であることがわかる。

拡散には十分注意が必要だ。

◼️ファクトチェック記事のレーティングについて

ハフポスト日本版では、NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。

また、これまでハフポスト日本版が実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。

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