独立して3年、ぼやけてしまった自分らしさを取り戻した “紙とペンと1カ月”

昨年、順調だった仕事を1カ月休業。自分と向き合った末に見つけたのは「私は私であればいい」というあっけないほどシンプルで根源的な答えでした。
NAO TADACHI/忠地七緒

──いつも自信が持てなかった。

私はフリーランスのフォトグラファー/ライターとして、雑誌・Webで撮影や執筆を生業にしています。仕事の基本は人に会うこと。新型コロナウイルスの影響で取材は軒並み中止になりましたが、空いた時間を活かしてリモート撮影に挑戦したり、ラジオを始めるなど「今できること」を積み重ねています。

もちろん不安もありますが、ネガティブな感情に押しつぶされることなく着実に過ごせているのには理由があります。それは昨年1カ月仕事をセーブし、とことん自分と向き合う時間を持ったから。向き合うことで自分らしくいられるための「軸」が明確になり、それによって、自分自身を深く信じて進めるようになりました。

世の流れも価値観も大きく変わりゆく中、自分をより深く理解していれば自分の前に続く道を見失うことなく、朗らかに生きていける気がします。

そうした私の気づきが誰かのヒントになればと思い、誰でも、今すぐできる「自分との向き合い方」についてご紹介します。

仕事は順調だったけれど、1カ月休業した

私が自分と向き合おうと決心したのは2019年9月。たくさんお仕事をいただき全力投球していましたが「最近仕事疲れたな…」と感じる瞬間が多くなっていたのがきっかけでした。

それはフリーランスとして独立して3年の間で感じたことのないモヤモヤ。好きなことを仕事にしているのにモチベーションが上がらない、未来も描けない。

普段の撮影風景
普段の撮影風景
NAO TADACHI/忠地七緒

と同時にいつも自信が持てなくて、人と比べては落ち込む性格にも嫌気がさしていました。フォトグラファーもライターも星の数ほどいる中で、どうやって生き抜いていけば良いのだろう。順調な仕事とは裏腹に活躍している人をSNSでチェックしては勝手に凹む毎日でした。

「このままだと仕事も人生も嫌いになってしまう。一度根本から向き合って本当に何をしたいか見つめ直そう」

そうと決めたら早速ウェブサイトで休業を報告。2019年10月は1カ月まるまる休むことに決めました(当時の心境を綴ったブログ)。

紙とペンを用意して、ただひたすら書く

では、どんな風に自分と向き合ったのか。方法はとても簡単です。紙とペンを用意し、考えたいこと・悩んでいることをひたすら書くだけ。

「本当にやりたい仕事は?」「逆にやりがいを感じない仕事は?」「そもそも何のために仕事してる?」「これから先、挑戦したいことは?」などテーマを決め、気持ちを書き出していきました。

【書き出した内容は…】

・仕事

やりがいを感じる仕事は?/やりがいを感じない仕事は?/どんな写真を撮りたい?/私だからできることは何?/何のために仕事してる?/35歳までに叶えたいことは?/今の働き方は心地良い? など

・生活

どんなライフスタイルが理想?/居心地の良い場所は?/お金とうまく付き合っていくには?/体のメンテナンス方法 など

・心

他人に評価されなくても自分を認められるようになるには?/無理すれば良いという考えを手放すには? など

それは「書き出す」というより「書き殴る」に近いかもしれません。誰に見せるわけでもないのできれいに書かなくて大丈夫。他人の目を気にせず考えをどばーっと書いていくと、今まで知らなかった本心が出てくることもありますが気にせず書き続けます。

実際に書いた紙。計60枚ほど書きました
実際に書いた紙。計60枚ほど書きました
NAO TADACHI/忠地七緒
NAO TADACHI/忠地七緒

すると枚数を重ねるうちに、繰り返し出てくる言葉が見つかります。たとえば好きなものや価値観、怒りのもとになっていることなど。それは自分の軸をつくる、いわば「軸のタネ」。私の場合は「女の子を撮るのが好き」「コンプレックスが原動力」「ないがしろにされると悲しい」などが頻出ワードでした。

「書く → 似た言葉・内容が出てきたら整理する」。このサイクルを続けていくとタネがいくつもまとまって大きな軸に統合されていきます。実際にやってみないと体感しづらい気もしますが、自分の内側から軸を導き出していけるのです。

自分を深く理解していれば、変化が起きても焦らない

そうして見つけた軸は、なんともシンプルな「私は私であればいい」ということでした。

前述したように私はもともと自信がなく、活躍している人と比較して凹む思考のクセがありました。でも自分の内面と向き合ったことで、人はそれぞれ違うから誰かと比べても意味がないことに気づけました。できること・個性を色濃くし、活かしていこうと思えるようになりました。

また得意分野を認識したことで、やりたい仕事を明確に話せるようになりました。「なんとなく」ではなく「こういう想いがあるから」という意思をもとに発信することで、心から携わりたい仕事で声をかけられる機会が増え、モチベーションも復活。逆に合わない仕事ははっきりと断れるようになりました。

たとえばずっと憧れていたライフスタイル誌での撮影など
たとえばずっと憧れていたライフスタイル誌での撮影など
NAO TADACHI/忠地七緒

他人基準ではない自分にとっての幸せを理解できたことも大きいです。朝ごはんを食べて、散歩して、仕事して、読書して、たまにお酒を飲む。そんな何気ない日常こそが幸福だと気づいたので、変に羽目を外したり、無茶することもなくなりました。

向き合うことは誰でもすぐに始められるし、お金もほとんどかかりません。なのに確かに人生を変えてくれる。自分を深く理解しているという安心感はお守りのように心強いものです。

なんとなく不安やモヤモヤを感じている人、自分自身に目を向けてみませんか。書くことで軸を見つける。その小さな繰り返しが自分を強くし、未来を朗らかに進むための一歩になるはず。

(向き合った直後に書いた総まとめ的なブログも宜しければご覧ください)

(文:忠地七緒/編集:毛谷村真木

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