NEWS
2020年09月03日 17時34分 JST

「公正でやさしい」がスローガン。 岸田文雄氏の政策発表、安倍氏との3つの違い

自民党総裁選に立候補を表明した岸田氏。安倍晋三政権への直接的な批判は避けたが、路線の違いは明らかだった。3つのポイント。

安倍晋三総理大臣の後任を選ぶ自民党総裁選について、立候補を表明した岸田文雄(きしだ・ふみお)政調会長が9月3日、都内で記者会見を開き、「分断から協調へ〜『公正でやさしい』、『芯の通った』政治」とのスローガンで政策を発表した。

自民党内のリベラル派と言われる派閥「宏池会」の会長、岸田氏。自身も閣僚となった安倍政権への直接的な批判は避けつつも、その路線の違いは明らかだった。

特にその違いが鮮明に現れた主要な3点に絞ってお伝えする。

Yuriko Izutani / HuffPost Japan
自民党総裁選に立候補、政策について発表する岸田文雄氏

 

1、経済・財政政策「アベノミクス」

まず岸田氏が言及したのは経済政策だった。安倍政権の経済政策、通称「アベノミクス」について、同じく立候補を表明した菅義偉官房長官は、すでにその成果を強調し、引き継ぐ考えを表明している。

一方、岸田氏は「アベノミクスでGDPや企業収益、雇用などで成果が上がったことはしっかり評価しないといけない」としたが、「発展が必要」との立場。

「成長の果実がどのように分配されたのか。大企業や富裕層があげた収益が、中小企業や所得の中間層、地方に波及していくというトリクルダウンが十分起こっていないという指摘がある」と述べた。

岸田氏は、成長の恩恵が一部にとどまり、経済格差が拡大した可能性に言及。持続可能な社会のため、子どもの貧困や所得の格差に伴う教育格差などの問題や住宅・教育への支援にしっかり取り組みたいとした。

マイナス金利や財政出動など、すでに市場に織り込み済みの金融政策については基本方針を変えないとしつつ、成長戦略に本格的に取り組まねばならないと強調。

そのエンジンとしては、ビッグデータや5Gなどの最新の技術を各分野に結びつけた「遠隔医療やドローン宅配、スマート農林水産業」などで成長戦略を作りたいとした。

 

2、外交・安全保障

被爆地・広島出身の岸田氏。「核軍縮をライフワークとして強い思いを持ってきた。核兵器のない社会を目指す大変大きな理想がある」と強調。一方で、「理想を唱えるだけでなく、現実的な取り組みをしっかり積み重ねていく。その組み合わせを大事にしたい」とも語った。

保護主義や自国第一主義、ブロック経済が国際社会の大きな変化だとし、日本の立場については、自由や民主主義、法の支配、人権、自由貿易など、「戦後、我々が大事にしてきた基本的な価値観を共有する国々と協力しながら環境、エネルギー、保健、核軍縮を含む平和について旗を振り、議論をリードしルール作りを先導する」ことで国際社会の中での存在感を示したいとした。

また、憲法についても、改正は自民党の「改憲4項目素案」をたたき台に議論を進めていくとしながらも、「憲法は国民のもの。国民の理解が何よりも大事」と強調。

「憲法改正には特定のイメージ、従来の固定観念があるが、自民党素案には、9条への自衛隊明記などと合わせて、緊急事態への対応、教育の充実、一票の平等も書いてある」とし、義務教育のあり方や地方の割当が減って一票の格差が広がる選挙区割の問題などを挙げ「憲法改正の議論は極めて現代的な、身近な問題」だと訴えた。

安倍政権は2014年、憲法9条の解釈を変更して集団的自衛権の限定行使を容認する閣議決定を行った。2017年の憲法記念日には、安倍首相自身が読売新聞紙上などで「9条への自衛隊明記」を訴えた。安全保障面を理由にした憲法改正を強く訴え続けてきた安倍政権とは、明確な違いだろう。

 

3、リーダー像 

記者会見では後ろのボードにスローガンが大きく書かれていた。「その『公正でやさしい』とは何を念頭に作られた言葉なのか」という質問も出た。

安倍政権時代の「森友・加計学園」や「桜を見る会」などの疑惑で、財務省の文書改ざんや名簿の破棄など公文書をめぐる問題が次々と発覚。そうしたことを背景にした質問だった。

岸田氏は、ここでも安倍氏への直接的な批判は避けたが「国民の皆さんの協力を引き出せるリーダーを目指したい。信頼を得て理解をしてもらって共感をしてもらって協力してもらわないといけない。そうでなければ国民の皆様も納得されないということではないか」という思いを込めたと語った。

また、政治姿勢としてもトップダウン、ボトムアップの手法両方が大事で「どちらが正しいというものではない」としながらも、「政治の信頼は、声に耳を傾けること。聞く力だが大事だと思っている」とした。

一方、安倍政権の特徴とされた官邸主導については「組織の検証はいるが、例えばデジタル化を進めるためにも統一した強い権限を持った組織を新たに作っていくことは大事」と述べるにとどめた。

 

総裁選には他に、菅義偉官房長官と石破茂元幹事長が立候補を表明している。総裁選の投開票は9月14日の予定。