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2020年11月06日 19時50分 JST | 更新 2020年11月18日 11時40分 JST

トランプ氏は「負けても“亡霊“として残る」 モーリー・ロバートソンさんが語るアメリカ大統領選

トランプ支持者の「心の中」はどうなっているのか?似たようなことは、日本でも起きていることなのか?大統領選でたとえ負けてもトランプ氏の価値観に頼るアメリカの姿が見える。そのわけは

Carlos Barria / Reuters
トランプ氏のシルエット

2020年アメリカ大統領選の開票が大詰めを迎えた11月5日。「バイデン氏優勢」という事前の世論調査の結果に反して拮抗した争いを見せるトランプ氏。トランプ氏を支持する人々の心のうちを分析しながら、トランプ氏の価値観に頼るアメリカの「いま」と「これから」について、大統領選に詳しい3人にハフライブで聞いた。

出演したのは、郵便投票で日本から投票をしたモーリー・ロバートソンさん(タレント、国際ジャーナリスト)、長年大統領取材を現地でしてきた長野智子さん(ハフポスト日本版編集主幹)、ラストベルト(五大湖周辺の産業の衰退が進む地域)で400人以上の有権者に話を聞いてきた金成隆一さん(朝日新聞機動特派員)だ。

トランプ氏の勝敗にかかわらず、分断を煽る発言を繰り返すトランプ氏によって残されるアメリカ社会の課題について話し合った。


「子供の見本にならない」だけど支持

Jun Tsuboike / HuffPost Japan
モーリー・ロバートソン氏

今回の大統領選挙でトランプ氏支持者の動きを「トランプ・マジック」と語ったのは、ロバートソンさん。「これまでは、選挙はスーパーボウルを見ているような感じで娯楽だったのに今回は、(有権者が)フェス(のノリで)はなく本気になっている。『トランプじゃないと幸せにならない』『もうこの国に住めない』と冷静さが失われている。トランプさんのマジックにかかっている状態」とトランプ支持者の心のあり方を解説した。

また、トランプ氏は人々にとって「身近にいる心地の良い存在」になっていると指摘。「新型コロナにかかっても不死身をアピールして、1日に4、5回演説する。演説を重ねても声が枯れないのでちゃんと発声しているということもわかる。70歳台なのに体が強い。(ある層にとっては、トランプ氏は)憧れるし、本音だけをいう優しくていい人なのです」。

トランプ氏が有権者の心を捉えるのは、「リベラル嫌い、タフさ、本音を話す」という三つのキーワードであると同時に、ビジネスパーソンであることが大きいと金成さんは指摘する。
「トランプさんは『バイデンさんが大統領になったら経済がシャットダウンになる。自殺やアルコールが蔓延し、独立記念日も(これまでのように)集まれないかもしれないぞ』『アメリカ人の生活変わるかもしれないぞ』と言い続けてきた」。経済をよくして欲しいと願う人々の心を捉えたという。 

Jun Tsuboike / HuffPost Japan
金成隆一さん

根拠のないことを次々に主張するトランプ氏をそれでも支持するのはなぜなのか。実は支持者は、トランプ氏の言っていることは真実ではないと分かっているのにもかかわらずそれでも支持してしまうという。

 金成さんは「誰もがトランプ氏は問題があると言う。子供の見本にはならないと。けれども、『でもね』なんですね。多くの人が、問題のある点を大目に見る。(トランプ政権前は)ラストベルトの人々は、諦めていたのです。自分たちのものは売れない、生活は苦しい。諦めていたところにトランプさんがきたのです」と金成さん。

ロバートソンさんは、「トゥルービリーバー、つまり、どんな不正をしても正義で、何がなんでもトランプさんなんだと思う人と、ややトランプ支持といった人々はいる」とした上で、「(激戦州である)オハイオが赤くなった(=トランプ氏が制した)理由は、(既存の政治は)金融街のウォールストリートと結託し、自分たちの資産を流出させている、私たちは生贄にされ、安楽死をさせられているのだという『静かな怒り』が満ちている」と解説。「クリスマスには自分の家に呼びたくないけれど、今の状況を変えるにはカンフル剤を打つしかない。それで消去法でトランプさんを支持している層がいるのではないか」と読み解いた。

 

 トランプ氏は負けたとしてもアメリカに”亡霊”として残る

Jun Tsuboike / HuffPost Japan
「これからのアメリカ」

4年前と異なり、見逃せない変化も起こっている。

ロバートソンさんによると、人々がトランプ氏が根拠なく発言してきた数々の内容も事実だと捉えて、信じてしまっている人がいる点が前回の選挙と違うというのだ。

 そしてトランプ氏は負けたとしても「亡霊と言う形で残る」という。「トランプさんに救いを求めている素朴な人々がいる。(陰謀論を唱える極右集団である)Qアノンが流布するような民主党による組織的児童虐待などの話をネタとしてではなく信じている」

金成さんも同様の状況を報告。4年前に取材した人に選挙の1週間前に電話取材したところ「会話が成立しなくなっていた」という。「コロナで心が疲れているのか、いわゆるネタのような話を真剣に口にする人がいる」と話した。


分断社会どう乗り越える?

Jun Tsuboike / HuffPost Japan
長野智子さん

トランプ「信奉」ともいえる支持者が生まれ、人々の間での対立も激しくなっている。一方で、新しい価値観をもたらすZ世代の動きもある。

Z世代である史上最年少の女性下院議員のアレクサンドリア・オカシオ=コルテスさんは、大統領選と同時に行われた連邦議会選挙で再選を果たしている。

ロバートソンさんは、こうしたZ世代が活躍し、多様性を政治にも確保することの大切さを指摘。世代の「新陳代謝」によって、今の世代では達成できない価値観が出てくることに期待するとした。

これまでの大統領選で現地取材を重ねてきた長野さんは、こうした分断には「想像力」が解決の糸口になるとした。相手はどうしてそういうことを言うのかを考える意識が大事だとし、日本でも起きる分断に繋がることだと示唆した。

改めて「真ん中」の存在価値に着目すると話したのは、現地で取材を続ける金成さんだ。「(保守系の)FOXニュースと(トランプ大統領が根拠なく名指しで批判する)CNNは全く別の世界を描き出している。こうした状況にアメリカでは疲れている人も多く、自分と違う社会を見に行こうという人も増えている。『真ん中』というのがもっと尊重されれば、社会が一つにまとめるためのキーになる。バイデンさんはキャラとしては立っていないが、真ん中な人だ」と話した。

 

「”暴君トランプ氏がそれでも支持される理由」と題してお届けした11月5日の「ハフライブ」。番組アーカイブはこちらからご覧いただけます。