一番輝く自分を「ここぞ」というときに発揮する方法。アメリカで活躍する俳優直伝

「緊張しないオーディションはありません。それでも、私は本番に強いのです」
藤井美穂さん
藤井美穂さん
筆者提供

ハリウッドのオーディションで「一瞬」を見てもらう

私は本番に強いタイプです。演劇を職業にするようになって、自分が本番に強いタイプだと認識することが増えました。

役者は本番が唯一の“他人に見せられる仕事ぶり”です。役者の仕事の9割はセリフを覚えたり、何度も1人で練習をしたり、地味な作業が膨大にあって、その先にある「一瞬」こそが本番なんです。そしてそこだけが他人に自分のそれまでの積み重ねてきた努力を見てもらえる瞬間で、そこでミスをすると今までの努力が無駄になったかのように思うこともあります。

そして役者は本番や影の努力をする前に、まずオーディションで役を勝ち取らなければ仕事にありつくこともできません。みなさんに「一瞬」を見てもらう機会さえもらえない。だからオーディションは役者にとって、もうひとつの本番といえるかもしれません。

緊張しないオーディションはありません。ある意味、役を掴むことができた後の本番よりも緊張します。このオーディションでのパフォーマンスで人生が変わるかもしれない。とくにハリウッドでは大きい作品に出演するためのオーディションを受けるチャンスがあるので、人生をかけたオーディションが控えているときは他のことが手につかなくなってしまうほど緊張します。

誰にでも、一番輝く自分を見てもらうシーンはある

オーディションルームに入ると、まず目に飛び込んでくるのが、私を見つめてヒソヒソと話をするプロデューサーとディレクター。

緊張しすぎて、私の頭の中で「私はここでなにやってるんだろう、もう帰りたい」なんてこと思ってしまうこともあります。

それくらい普通の生活にはない見られている、ジャッジされているという違和感がオーディションルームには流れています。

それでも、私は本番に強いのです。その緊張感と向き合いながら、自分の持っている最大限の力を瞬発的に発揮することが人より少しだけ得意のような気がしています。

私のように俳優の仕事をしていなくても、人はさまざまなシーンで、本番力、本番でそれまでの努力を最高の形で発揮しなくてはいけないシーンはあると思います。クライアントの前で何かプレゼンしたり、新しいプロジェクトについて上司を説得したりしなくてはいけないとか、ビジネスだけではなく、夫や子どもとのコミュニケーションにおいても、その力が必要になることはあるでしょう。

だから、今回は、どうしたらここぞというときに力が発揮できるのか。本番に強い私がしていることについて書いていたいと思います。

どんなに練習しても足りないように感じることもある

私の本番強さは生まれ持ったものもあるかもしれませんが、とにかく稽古、稽古、稽古。飽きるまで練習することこそが本番強さへの基礎を作ってくれると思います。繰り返し行うことで、自信が少しずつついていきます。練習や準備は、自分を支えてくれるのです。

私の役者としての喜びは役として生きられたときです。そしてそれが本番でお客さんやディレクターの前で出せたらそれが最高です。

しかし現実にはそれが達成されないことも多くあります。 ただ思い返すと、達成できたときは死ぬほど練習して、台詞が悪夢になって出てくるほどだったときでした。

そして稽古はパフォーマンスのクオリティを上げるだけでもなく、本番への心の不安も取り去ってくれます。

しかし、時には本番が怖いこともありました。どんなに練習しても足りないように感じたこともありました。

正直いえば、きっといくら練習しても足りません。満足することはないのでしょう。

しかし一度舞台に踏み出したら、オーディションが始まれば、戻ることはできないのです。

筆者提供

私の能力が低いから、落とされたのではない、と思うことも大事

「開き直ること」も本番に強くなるひとつの近道かもしれません。

私はオーディションでは「もしも私が落ちたとしても、受かった人が私より優れていたわけでない、その人がこの役をやるために生まれてきたような人で、私には私にぴったりの役がある」と開き直るのです。

時にはその役のイメージにぴったりな人が他にいて、部屋に入った瞬間にもう決まっているようなオーディションもあります。私の能力が低いから、落とされたわけではありません。

そう思うことで、オーディションに落ちることへの恐怖がなくなり、落ちたとしても次に進める力をくれます。

そして自分では上手くいったと思っていたオーディションほど落ちてることが多かったり、全然上手くいかなかったと感じたオーディションほど受かってたりすことがあるから不思議なのです。

たとえば、Instagramのコマーシャルのオーディション。

それは全て即興で、パートナーの女の子がとても盛り上げるのが上手な子で私たちは良いコンビだったのですが、オーディション後には彼女と比べたら自分は良くなかったんじゃないかと不安になりました。

しかしパートナーの女の子も私も一緒にオーディションに受かっていました。

なので、他人と比べたり、自分のパフォーマンスに後悔する暇があれば、次のオーディションにむけて稽古するほうがよっぽど合理的と言えるかもしれません。

特に演劇は、観る側、審査する人の主観的評価が元になることが多いので、ある意味自分ではコントロールできない部分もあります。だから、自分にコントロールできないものについて、あれこれ考えても時間の無駄なので、はなから考えすぎず、気にしないことにしています。

観てくれる人の信号をキャッチする

また私の本番でのパフォーマンスが練習よりも良いことが多いのは、観客と一緒にパフォーマンスを作り上げる能力に長けているという要因もあると思います。
オーディションでも、相手がいるときは、ペアになった人とちゃんと台詞やその場の雰囲気を合わせてを一緒にパフォーマンスを完成させる。
そうすることで言葉を相手に届ける、相手や観客のリアクションを受け取ってそれを芝居にに反映させることができるのです。
観客がパフォーマンスに魅せられる瞬間とは、自分は作品の一部として参加してると自覚することだと思います。ただ座ってテレビを観てるように観るのではなく、自分もパフォーマンスを受け止めてリアクションをしたい!観客と作りあげる最高のパフォーマンスは、お客さんも終わった後に何かやり遂げたような気持ちになれるのです。それがライブパフォーマンスでは演者の理想的なパフォーマンスと言えると思います。
なので、独りよがりになるのではなく、ちゃんと聞いてくれてる人の信号をキャッチすることも人前で何かをする上で重要です。観てる人を観察できなければ、パフォーマンスを通して相手と会話することもできません。

観客がパフォーマンスに魅せられる瞬間とは、自分は作品の一部として参加してると自覚することだと思います。ただ座ってテレビを観てるように観るのではなく、自分もパフォーマンスを受け止めてリアクションをしたい!観客と作りあげる最高のパフォーマンスは、お客さんも終わった後に何かやり遂げたような気持ちになれるのです。それがライブパフォーマンスでは演者の理想的なパフォーマンスと言えると思います。
なので、独りよがりになるのではなく、ちゃんと聞いてくれてる人の信号をキャッチすることも人前で何かをする上で重要です。観てる人を観察できなければ、パフォーマンスを通して相手と会話することもできません。また私の本番でのパフォーマンスが練習よりも良いことが多いのは、観客と一緒にパフォーマンスを作り上げる能力に長けているという要因もあると思います。
オーディションでも、相手がいるときは、ペアになった人とちゃんと台詞やその場の雰囲気を合わせてを一緒にパフォーマンスを完成させる。
そうすることで言葉を相手に届ける、相手や観客のリアクションを受け取ってそれを芝居にに反映させることができるのです。
観客がパフォーマンスに魅せられる瞬間とは、自分は作品の一部として参加してると自覚することだと思います。ただ座ってテレビを観てるように観るのではなく、自分もパフォーマンスを受け止めてリアクションをしたい!観客と作りあげる最高のパフォーマンスは、お客さんも終わった後に何かやり遂げたような気持ちになれるのです。それがライブパフォーマンスでは演者の理想的なパフォーマンスと言えると思います。
なので、独りよがりになるのではなく、ちゃんと聞いてくれてる人の信号をキャッチすることも人前で何かをする上で重要です。観てる人を観察できなければ、パフォーマンスを通して相手と会話することもできません。また私の本番でのパフォーマンスが練習よりも良いことが多いのは、観客と一緒にパフォーマンスを作り上げる能力に長けていると周りから評価されるという要因もあると思います。

オーディションでも、相手がいるときは、ペアになった人とちゃんと台詞やその場の雰囲気を合わせてを一緒にパフォーマンスを完成させる。

そうすることで言葉を相手に届ける、相手や観客のリアクションを受け取ってそれを芝居にに反映させることができるのです。

観客がパフォーマンスに魅せられる瞬間とは、自分は作品の一部として参加してると自覚することだと思います。ただ座ってテレビを観てるように観るのではなく、自分もパフォーマンスを受け止めてリアクションをしたい!観客と作りあげる最高のパフォーマンスは、お客さんも終わった後に何かやり遂げたような気持ちになれるのです。それがライブパフォーマンスでは演者の理想的なパフォーマンスと言えると思います。

なので、独りよがりになるのではなく、ちゃんと聞いてくれてる人の信号をキャッチすることも人前で何かをする上で重要だからです。観てる人を観察できなければ、パフォーマンスを通して相手と会話することもできません。

人前に出てることがとにかく好きな私なので、いまの課題は客の数が少なくなればなるほどパフォーマンスのクオリティが下がってしまうことですが(笑)。

友達とマックでだべってるような漫談が最高

私は俳優だけではなく、コメディアンとしても活動しているのですが、特にコメディはそれが顕著で、お客さんの数が少ないと私も調子に乗れなくなってしまいます。

コメディもかなりの本番力が試される気がします。コメディは演者の不安をお客さんに感じとられると面白さが半減してしまうのです。

私はスタンドアップコメディ、漫談をやるのですが、練習が足りていないジョークは不安を見透かされて、スベってしまうこともあります。

とにかく舞台上でどれだけリラックスできるかがポイントで、とにかく友達とマックでだべってるような漫談ができたらそれが一番最高です。そのためにはお客さんとちゃんとつながること。その日のお客さんの客層や雰囲気をよく観察して、お客さんが私の友達のように感じてくれないと大きな笑いはとれません。

こうして私の経験をここまで書いてきましたが、結局、本番に強くなる瞬発力を身につけるのに必要なのは、日々の練習と開き直り、観客(相手)と繋がることがポイントだと思います。緊張する場面では是非思い出してみてください。

(文:藤井美穂 編集:榊原すずみ/ハフポスト日本版)

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