アートとカルチャー
2021年02月16日 09時24分 JST

香港「時代の声」を記録する映画を上映したい。しかし「障壁」があった

映画「BlueIsland 憂鬱之島」制作のため、クラウドファンディングを通じて支援を呼びかけています。

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映画「BlueIsland 憂鬱之島」

喧噪につつまれ、活気にあふれ、数々の俳優たちがスクリーンで燦然(さんぜん)と輝いた香港。いま、その未来に恐れを抱く人々が増えています。

揺れる香港のアイデンティティーを見つめ、「時代の声」を記録しようと、香港の映画人たちがドキュメンタリー映画づくりに乗り出しました。

民主化デモを題材にしているため、撮影や資金、上映など困難は多く、制作陣は「映画の完成、日本での公開、世界に向けた展開のため、ぜひ支援をお願いします」とクラウドファンディングを通じて呼びかけています

 

映画のテーマは、これからの香港の未来

映画は香港・日本合作「BlueIsland 憂鬱之島」。

2014年の雨傘運動を記録し、山形国際ドキュメンタリー映画祭で小川紳介賞を受けた映画「乱世備忘 僕らの雨傘運動」の監督陳梓桓(チャン・ジーウン)がメガホンを取り、任硯聰(ピーター・ヤム)がプロデューサーを務めます。

また、香港で大ヒットし、日本でも話題を呼んだ社会派映画「十年」を制作した蔡廉明(アンドリュー・チョイ)も共同プロデューサーとして参加。日本の配給会社なども協力しています。

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蔡共同プロデューサー(左)、陳監督(中央)、任プロデューサー(右)

映画のテーマは、過去と現在を踏まえ、これからの香港の未来を想像することです。香港が英国領だった1960年代の反植民地闘争、中国の文化大革命、天安門事件という三つの時代を経験した、実在の3人が登場します。

恋人と海に飛び込み文化大革命から逃れてきた男性は、逃亡に失敗して亡くなった友の追悼を今も続け、天安門広場から逃げ帰った男性は、自分を「脱走兵」と戒めます。反植民地闘争に参加した男性は経済人に。彼らが貫こうとした信念とその記憶、今も残る心の傷痕(きずあと)をカメラが追います。

撮影を始めて1年半後に逃亡犯条例改正案への抗議に端を発した大規模な民主化デモが起こり、条例案の撤回や民主的な選挙の実現などを求めました。映画にはデモや集会、街の様子が盛り込まれ、過去を再現するパートではデモに参加した若者たちが3人の青年時代を演じます。

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撮影を進める陳監督(中央)とスタッフたち

陳監督は「若者たちが街に出て、先人たちの意志を受け継いで声を上げました。催涙弾の白煙と放水車から噴き出す青い水。燃えさかる炎。レンズ越しに記録された過去と現在と未来はすべて一本の線でつながっています」と話します。

 

「時代を記録する自由な映画のために」

2020年6月、統制を強め「自由」を制限する国家安全維持法が施行され、街の様子は一変。民主派の人々の逮捕が相次いでいます。民主化デモのその後もカメラは追い続けましたが、新型コロナウイルスの影響などで一時中断。制作期間が大幅に延びたため資金が不足しています。

陳監督は「青年時代に抗争に身を投じた実在する3人の生活をドキュメンタリーとして記録し、記憶と傷痕をドラマで再現します。そこにいま香港で起きていることを交え、自由と公正を求める信念が各世代の人々に与える影響を映像によって探ろうとしました」と話し、蔡・共同プロデューサーは「香港の過去と現在と未来を映すこの映画は『時代の声』です。時代を記録する自由な映画のためにご協力ください」と支援を呼びかけています。

 

5月5日までクラウドファンディングで支援募る

クラウドファンディングは5月5日まで実施。支援は1000円から受け付けています。支援額によって、特製クリアファイルや鑑賞券、ダイジェスト版DVD(15分)、日本公開版への名前掲載、完成披露試写会への招待などの特典があります。詳細はこちらをご覧ください

(朝日新聞社総合プロデュース本部 阿部毅)

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撮影現場の様子