渡辺直美さんの演出案は「ダジャレだった」「大変な侮辱」。佐々木宏さんが辞意表明【謝罪文全文掲載】

渡辺直美さんの容姿を侮辱するような演出プランを提案していた。
東京五輪・パラリンピックの開閉会式について記者会見するクリエーティブディレクターの佐々木宏さん
東京五輪・パラリンピックの開閉会式について記者会見するクリエーティブディレクターの佐々木宏さん
時事通信社

東京オリンピック・パラリンピック開閉会式の演出の総合統括を務めていたクリエイティブディレクターの佐々木宏さんが、人気タレント・渡辺直美さんの容姿を侮辱するような企画を提案していたと週刊文春オンラインが報じた問題で、東京2020組織委員会は3月18日、佐々木氏の謝罪文を報道各社に発表した。

佐々木さんは発表した文章の中で「発言内容に不適切な表現があった」などと渡辺直美さんに謝罪した。

週刊文春オンラインの報道によると、佐々木さんはオリンピックの語尾を「ピッグ」に変え、佐々木さんは、渡辺直美さんの容姿を侮辱するような演出を提案していたが、関係者からの批判を受け撤回に追い込まれていたという。

どのような謝罪があったのか。謝罪文の全てを振り返る。

演出は「ダジャレ」。他のメンバーから「ありえない」と指摘も

佐々木さんは文の冒頭で経緯を説明。アイデアや発言内容に不適切な表現があったと認めた。渡辺直美さんの容姿を動物に例えたことについては「⼀時的なアイデアだとしても、⾔うべきじゃない」などと他のメンバーから指摘されていた。

昨年3⽉の私のLINEのグループラインの中において、オリンピック開会式のアイデアフラッシュを仲間うちでやり取りする中で、私のアイデア及び、発⾔内容に⾮常に不適切な表現がありました。

出演者の候補として名前が上がっていた渡辺直美さんに対する演出アイデアの中で、宇宙⼈と地球⼈の接点的な役柄で、オリンピックの使者的キャラということで、オリンピックの語尾をピッグという駄洒落にして、オリンピッグという名前のピンク⾊の⾐装で、⽿がぶたのはどうだろう、というような発案をしました。

アイデアをLINE上で書き、みんなの意⾒を聞きましたが、すぐに、MIKIKOさんから「ピンとこない」と他のメンバーからは⼿厳しく「⾯⽩くない」「⼥性を豚に例えるなんてありえない」「⼀時的なアイデアだとしても、⾔うべきじゃない」などと、LINE上で、スタッフから⾮常に怒られ、私も、その場で、⼤変恥ずかしながら、スタッフからの率直な直⾔で⽬が覚めました。メンバー全員に LINE 上で謝り、撤回しました。気づかせてくれたことに礼も⾔ったつもりです。

失言が表に出たら辞任すべきと思っていた「⼤変な侮辱。取り返しのつかないこと」

佐々木さんは自らの企画案について、「⼤変な侮辱となる私の発案、発⾔となること。これは取り返しのつかないこと」とした上で、渡辺直美さんに対し、「⼼から反省し、ご本⼈、そして、このような内容でご不快になられた⽅々に、⼼からお詫び申し上げます」と謝罪した。

また、LINEでの失言が公となった場合、辞表を出すとの考えがあったとした。

MIKIKOさんから、オリンピック開会式のストーリー強化を⼿伝って欲しいというご依頼を受けて、パラリンピック担当だった私はパラリンピックの企画チームを呼んで、MIKIKOさんを⼊れた10名以上のグループで、ざっくばらんにやりとりした中で、私が調⼦に乗って出したアイデアです。

渡辺直美さんに対しては、⼤変な侮辱となる私の発案、発⾔となること。これは取り返しのつかないことです。⼼から反省して、ご本⼈、そして、このような内容でご不快になられた⽅々に、⼼からお詫び申し上げます。 ⽂春さんから電話取材を受けた段階で、この私のLINE上での、⼤失⾔が表に出て、渡辺直美さんにも伝わるときが来たら、責任をとって辞表を出すべきと考えて来ました。

あと数ヶ⽉に近づいたオリンピック・パラリンピック開閉会式を⽇々死にものぐるいで準備するメンバーにも、本当に申し訳ない気持ちです。 先程、橋本会⻑には、夜分ではありますが、お電話で、私の辞意をお伝えしました。 あらためて、辞表を書かせて頂き、 お届けするつもりです。

LINEが好きで、内輪でのやり取りのつもりでしたが、今回多くの⽅に伝わることになり、 渡辺さんにはどのようにお詫びをしてもしきれないと思っています。世界的な活躍をされ、 個⼈的にも⼤変ファンでした渡辺直美さんに、この度のことで、ご不快な思いをさせてしまったことが、本当に悔やまれてなりません。 ⼼からお詫び申し上げます。

ふだんは、⾃分では、多様性、ジェンダー問題、そして、容姿などを揶揄して⼈を傷つけてはいけないと⾔うことには、気をつけているつもりでしたが、このようなことで、それがとんでもない勘違いで、⾃分の意識の低さ、無神経さにあらためて、気づいた次第です。今後は、⾃分の⽣活全般、仕事に対する姿勢、⽇常の⾔動などについて、猛反省し、意識改⾰をし、⾃らの思い込み、偏⾒、鈍感さ、などを⾒直し、あらためて、⽣まれ変わりたいと思い ます。 この度は、⼤変申し訳ありませんでした。

前任者の企画を乗っ取ったかのような内容は「事実ではない」

一方、佐々木さんは文春オンラインの報道内容について、「事実ではない」と一部については反論している。以下のように説明した。

⽂春オンラインを拝読しましたが、 オリンピック・パラリンピックの開閉会式の内容についても、いくつかご指摘があるようですが、昨年春以降のコロナ禍のもと、開催⾃体が危ぶまれる空気の中で私はパラリンピック開閉会式担当として、かなり準備していたものをどのようにすべきか、オリンピック・ パラリンピック合同の4式典を2式典にするという簡素化プランも考えましたが、叶わず。 そんな中、1年前イベントを池江璃花⼦さんにお願いし執り⾏いました。

オリンピック・パラリンピックは、もともと8⼈の企画メンバーで進めて来ましたが、途中から、私はパラリンピック開閉会式の責任者として、去年初夏まで、企画⽴案制作に関わりました。 今回の、私の LINE 上の発⾔は、 オリンピックの開閉会式の実質責任者MIKIKOさんが、 ストーリー強化のために、私に⼿伝って欲しいという申し出があり、パラリンピック準備の傍らではありますが、パラリンピックのスタッフ数名に呼びかけ、もともとあったオリンピック開会式アイデアをより⾯⽩くするための、アイデアフラッシュ会議を進めるという趣旨で、スタッフ限定で、オリンピック演出責任者の⽅も含めてのやりとりです。

報道に関しては、 全て拝読しましたが、 私の認識としては、 前任者の企画を乗っ取ったかのような内容は、事実ではないと思います。 3⽉までは、開会式演出実質責任者の⽅に、頼まれ、パラリンピック開閉会式をやっていたメンバーを呼び、MIKIKO さんを前に、アイデアの出し合いを、何度かやりました。その中の、私の失⾔は、その場でダメ出しされて引っ込めたわけです。 その後はコロナ禍で、全てはフリーズ。 また、MIKIKOさんを中⼼に考えられていた開会式プランは、私が⽩紙化した事実はなく、 演出予算が10 億で4式典をやると⾔われ、私はむしろ、簡素化、安⼼安全へのコロナ後の、 また⼤幅に予算削減の中で、それまでの企画演出を、LIVE ではなく、remoteでできないかという視点から、MIKIKO さんのプレゼンされた企画書の絵を使い、縮⼩したりしながらIOCに提案しました。 私のプレゼンが受け⼊れられなかったのは、感染拡⼤を防ぐために、⼊場⾏進を⼈数⼤幅に制限してとか、それまでの作り始めていた設備を完成させる、1年後まで保存させる、 共に予算オーバーで無理なので、⽊を1本⽴てるだけとか、リモートや少⼈数での簡素化であまりに簡素過ぎて、ダメだったのかと、認識しています。それもあり、 4式典をやめて、 オリンピック・パラリンピック合同の2式典も提案しましたが、受け⼊れられませんでし た。7⽉には、池江璃花⼦さんにメッセージを頂き、新聞広告と、国⽴競技場での15 分間イベントをやりました。

「重要な場⾯に起⽤させて頂くつもりでした」 女性の起用についても言及

佐々木さんは最後に、本来は式の開催まで「秘密裏に企画されるべき演出アイデア」が明かされてしまった事について言及。「スタッフに男性が多い」との指摘についても認めていた。

MIKIKOさんは、私にとっては、本当に開会式にはなくてはならない⽅という認識でしたし、⾃分は低予算ながら、4式典をまとめて実現する役割、それをパラリンピック開閉会式を元々作り上げたメンバー中⼼にオリンピック・パラリンピック開閉会式のストーリー・流れを作って頂き、オリンピック開会式のLIVE的なパフォーマンスやプロジェクションマッピングなどは、MIKIKOさんにお願いするつもりでしたが、私が、その辺の仕切りをきちんと逐⼀お話しできていな かったりして、スタッフ、キャストの皆さんに、⼤変なご迷惑をおかけしたことも、申し訳なく思っています。

この場をお借りしてお詫び申し上げます。 昨年4⽉以降、コロナ禍で、開催の有無もわからない中、 開催を信じて、4 式典の元々の予算の5分の1というキツい条件の中で、企画を練り直し、 コロナですっかり変わってしまった世の中で開催されるオリンピック・パラリンピックは、 どんな式典になるべきかを⼨暇も惜しんで考え、作り続けてくれているメンバーのことを考えると、やはり、ツラいです。

本来、当⽇まで秘密裏に企画されるべき演出アイデアが、まだアイデアだしのやりとりの LINE 上のものがオープンになり、また、どの段階のものを仰っているかはわかりませんが、 若い才能豊かなクリエイターが頑張っていますし、決して⾒劣りしない良い式典を作ってくれると思います。 記事にもありましたが、スタッフに男性が多いというご指摘はその通りです。 私に責任があります。 最後のブラッシュアップ段階ですが、橋本新会⻑のご意志も伺い、 ⼥性のクリエーティブディレクター、アートディレクター、映像監督、などを重要な場⾯に 起⽤させて頂くつもりでした。 あらためて、 渡辺直美さん、 今回は⼤変申し訳ありませんでした。

佐々⽊ 宏

佐々木さんの辞意を受け、東京2020大会組織委員会の橋本聖子会長は18日午後に記者会見を行い、経緯や佐々木さんの処遇について説明する見通しだ。

注目記事