財務省の矢野康治事務次官が10月8日発売の月刊誌「文藝春秋」に寄稿した記事が波紋を広げている。
内容は、新型コロナウイルスの経済対策を巡る政策論争を「バラマキ合戦」と批判し、「10万円の定額給付金のような形でお金をばらまいても、日本経済全体としては死蔵されるだけだ」などと主張したもの。日本の財政赤字をさらに膨らませることになり、「タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものだ」と例えた。現職の事務次官による意見表明は異例で、しかも衆院選を間近に控えているとあって政府・与党からさまざまな声が上がっている。
岸田文雄首相は10月10日のフジテレビ番組「日曜報道 THE PRIME」で「いろんな議論があっていいと思うが、いったん方向が決まったならば、しっかりと協力してもらわなければならない」とくぎを刺した。
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バラマキ合戦との批判について「大変失礼な言い方だ」と不快感を示したのは自民党の高市早苗政調会長。10日のNHK番組「日曜討論」で「基礎的な財政収支にこだわって本当に困っている方を助けない。それから未来を担う子供たちに投資しない。これほどばかげた話はない」と切り捨てた。
また、松野博一官房長官は11日の記者会見で「財政健全化に向けた一般的な政策論について私的な意見として述べたものだ」との認識を示した。矢野次官の進退については「現時点で答えは差し控えたい」と述べるにとどめた。
矢野次官は記事の中で、岸田首相が策定を指示した経済対策について「本当に巨額の経済対策が必要なのか。そのコストや弊害も含めて、よく吟味する必要がある」とも主張している。
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