是枝裕和さんら映画監督「若者が働きたいと夢見る世界ではない」。ハラスメント撲滅の具体策求め、映連に提言書を提出

映画業界でハラスメントや性被害の訴えが相次いでいる問題。松竹、東宝、東映、KADOKAWAの大手映画会社が加盟する業界団体に、調査やハラスメント防止策の実施、相談窓口の設置などを求めた。
左から映画監督の深田晃司さん、西川美和さん、是枝裕和さん、岨手由貴子さん
左から映画監督の深田晃司さん、西川美和さん、是枝裕和さん、岨手由貴子さん
時事通信社

映画業界でハラスメントや性被害の訴えが相次いでいる問題で、是枝裕和さん、諏訪敦彦さん、岨手(そで)由貴子さん、西川美和さん、深田晃司さん、舩橋淳さんらで成る映画監督有志の会が、一般社団法人日本映画製作者連盟(以下、映連)に対し、具体的な対策を求める提言書を提出した。4月22日に同会が発表した。

提言書では、ハラスメント撲滅をめぐり、▽声明の発表、▽実態の検証・調査、▽防止対策の具体化、▽第三者機関による相談窓口の設置の4点を求めている。

「フリーランスが相談できる機関、受け皿がない」と指摘

映連は、松竹、東宝、東映、KADOKAWAの映画製作配給大手4社が加盟する業界団体で、「映画製作事業の健全なる発展を目的」として活動。経済産業省が2021年4月に公表した「映画制作現場の適正化」に向けた取り組みにも委員として参加している。

映画監督有志の会はこれまで1年以上にわたって、映連と映画業界の労働環境改善を含む包括的な改革のために協議を重ねてきたという。フランスの映画振興の機関であるCNC(国立映画映像センター)に相当する統括機関を、日本にも設立することなどを検討してきた。

提言書が提出されたのは4月13日で、諏訪さん、西川さん、 深田さん、舩橋さんらが参加。それぞれ、映連に対し次のように訴えた。

▽諏訪敦彦さん

「現在、労働環境等の改善に向けて映連でも協議中かと思いますが特にハラスメントの問題については、業界でも影響力の強い映連からも、声明でなくても何かしらの指針、方針を打ち出していただいた方が、広く社会に伝わり、具体的な対策実施に向けても強い推進力を得られるのではないでしょうか」

▽深田晃司さん

「表面化してなくても、調査や報告、そして我々に寄せられているメッセージを見ると、事態はかなり深刻です。映画業界は、俳優にかかわらずスタッフも多くはフリーランスの方で支えられていますが、特にそのフリーランスの方が相談できる機関、受け皿がない状況で、今、このタイミングで、スピード感をもって動いていくことが大切」

▽舩橋淳さん

「明らかな犯罪以外の『グレー』なハラスメントに対する業界内での基準は曖昧というか、制度が整備されてないのが実情です。問題の理解・把握の次には自分たちでガイドラインなりを策定することはできないでしょうか」

▽西川美和さん

「韓国映画界の現場もここ数年で劇的に改善されたと聞きます。各国で急速に措置が取られていて、困ったときに声をあげて連絡できる第三者機関も置かれています。何か施作をすれば、一気に『0』にはならなくとも、確実に変化があるのでは」

提言書の内容は? 「若者が働いてみたいと夢見る世界ではない」

映画監督有志の会は3月18日に、映画業界でハラスメントや性被害の訴えが相次いでいる状況を受け、「私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します。」と題した声明を発表。賛同者は400人以上に上るという。

映連に提出した提言書の中では、その賛同者の多さに言及した上で、「ハラスメントや暴力は個人の資質の問題ではなく、職務上の優越的な関係の悪用を許す環境を放置してきた映画業界全体の責任」だと指摘。 「労働環境保全・ハラスメント防止に向けた明確な改善策が打ち出される社会的責務がある」として、以下の4項目を求めた。

(1)ハラスメントや暴力に関する声明の発表

責任ある団体として、映画映像の製作、撮影現場におけるあらゆる暴力ハラスメントに対してこれを容認しない、という基本的な態度を表明してください。

(2)ハラスメントの実態の調査と検証

現状を把握し、改善するそのために、現場を支えるスタッフや俳優たちの声に耳を傾けてください。

さらに業界全体で既に行われたヒアリングと調査を検証してください。撮影現場のみならず企画開発からキャスティング、興行に至るまで、映画業界におけるあらゆる労働現場において、スタッフならびに俳優の安全が十分に守られていない現状を、最大限の危機感をもって認識するようお願いします。

(3)ハラスメント防止のための具体的な施策の実施

製作現場の安心安全を守り高めるため、リスペクトトレーニングの実施、ハラスメント防止ガイドラインの作成、キャスト保護のためのインティマシーコーディネーターなど新しい取り組みの導入を検討し、業界全体への普及と浸透に尽力してください。

(4)第三者機関による相談窓口の設置

被害を受けた俳優やスタッフが過大なリスクを負って告発をしないで済むよう、製作過程で起きたあらゆる問題を相談できる窓口としての第三者機関が必要です。その設立に向けて主体的に行動し、全面的に協力してください。

提言書では、「残念ながら今の映画業界は、若者が働いてみたいと夢見る世界でもなければ、私たちが胸を張り就職を勧めることができる場所でもありません。この現実を、私たち映画関係者は直視しなければなりません」とも言及。ハラスメントの撲滅や労働環境の改善に向けた具体策を求め、有志の会としても「継続して業界の改革に力を尽くします」とした。

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