BTSはなぜホワイトハウスに呼ばれたのか。アーティストが人種差別に声をあげる意義

アジア系住民をはじめ社会的マイノリティ層を中心に、アメリカで支持を拡大してきたBTS。SUGAは「私たちは多様性がもつ力について話したかった」と語った。
会談するBTSとジョー・バイデン大統領
会談するBTSとジョー・バイデン大統領
Twitter / President Biden @POTUS

BTSが現地時間5月31日にアメリカのホワイトハウスを訪れ、アジア系へのヘイトクラムの問題や差別をなくす取り組みについて、ジョー・バイデン大統領と会談を行い、大きな反響を呼んだ。

アメリカの大統領が自国のアーティストと会談を行うことはこれまでもあったが、他国のアーティストを招くのは異例のこと。BTSは2017〜18年頃からアメリカでも人気を獲得し、アジア系住民をはじめ社会的マイノリティ層を中心に支持を拡大してきた。

一方で、BTSのホワイトハウス招致が発表された時、なぜアメリカに住むアジア系の人々ではなく、韓国を拠点に活動するアーティストが、ヘイトクライムについて語るのかという疑問の声も一部であがっていた。

なぜ、バイデン大統領はBTSを呼んだのか。BTSのように、世界中にファンダムを持つ、強い影響力のあるアーティストが、差別や偏見に対して声を上げることの意義とは何か。

会談の後日、その裏側を追った動画がホワイトハウスのSNSアカウントで公開され、バイデン大統領がBTSを招致した理由、そしてBTSのメンバー自身が声をあげた理由について話す一幕があった。

RM「この『声』を使いたい」

バイデン大統領は、メンバーが集まったホワイトハウスの一室でBTSの楽曲「Butter」を流して歓迎の意を示した。

動画の中で、作詞作曲を手がけることの多いメンバーのSUGAは、アジア系へのヘイトクライムや差別について、これまでの活動と関連づけ、こう語っている。

「韓国人、そしてアジア人として、 私たちはこの問題に関して認識を高めるため、声を上げる必要があると感じていました。

韓国のアーティストとして、また海外渡航を通じて言葉や文化が壁をこえていく瞬間や、ツアーで世界中の人々に音楽が届く様子を目の当たりにしてきた身として、私たちは多様性がもつ力について話したかったのです。違いが人々を団結させるというポジティブなケースがもっと増えることを望んでいます」

インドにルーツがあるカマラ・ハリス副大統領は「憎しみや偏見は、人々を恐れさせ、孤独を感じさせるもの。力を感じられなくなってしまう」とした上で、BTSの役割について、「あなた方が語りかけることで、人々は孤独ではないと思い起こすことができる」と話した。

ハリス副大統領の話を受け、リーダーのRMはこう答えている。

「私たちはこれまでにもらった愛を返して、そして、今あなたが言ってくれたように、この『声』を使いたい。それが私たちの望みです」

「ポジティブな影響を与える手助けができることを嬉しく思うと同時に、大きな責任も感じています」

「どのように憎しみをなくせるかについて話すのは、重要なこと」

バイデン大統領は、公民権運動を例にあげ、「あの頃も、有名なアーティストが人々を動かす助けになった」と振り返った。1950〜1960年代に起こった公民権運動では、ボブ・ディランなどのアーティストがプロテストソングを発表し、音楽を通じて運動を率いていたことでも知られている。

アーティストと社会の関わり、そして差別をなくすために声を上げることの意義について、「BTSの活動によって大きな変化が生まれます。どのように憎しみをなくせるかについて話すのは、重要なこと」だと話したバイデン大統領。

RMは「私たちの努力を認識していただき、感謝しています。私たちがやってきたことが報われたのだと感じました」と答え、ヘイトクライム法案への署名などの対策強化についても「心から感謝したい」と伝えた。

バイデン大統領は最後にメンバーに向け、「あなたたちが素晴らしいのは、その才能だけではなく、重要なメッセージを伝えているからです」と鼓舞。RMは今回のホワイトハウス訪問で「アーティストとして何ができるか思い出させてくれた」と感謝を伝えた。

BTSへの差別や偏見

銃撃事件の標的になるなどアジア系へのヘイトクライムがアメリカで問題になる中、2021年3月にBTSはヘイトクライムに抗議する声明を発表した。

その中では、「アジア人として差別を受けた」経験があるとし、「理由もなく罵声を浴びせられたり、容姿を馬鹿にされたこともありました。なぜアジア人が英語で話すのかと聞かれたこともありました」などと、自身が受けた差別被害についても明らかにした。

アメリカ進出当時、BTSは「韓国のアイドル」として、その容姿や、リーダーのRM以外がインタビュー時などに英語を話さないことなどを揶揄する声は多くあった。また、コロナ禍に入ってからも、ドイツのラジオ番組の司会者がBTSについて「くだらないウイルスだ」と発言。人種差別だと批判があがり、のちに謝罪した。アメリカの人気トーク番組でも、司会者がBTSの人気を新型コロナに例え、物議を醸したことがあった。

BTSが社会の問題について発信するのは、アジア系に対するヘイトクライムや差別・偏見の問題だけではない。2020年6月には、「Black Lives Matter」の活動支援として100万ドルを寄付。それを受け、ARMY(BTSのファンの愛称)も同額寄付するなど、社会貢献活動が広がった。

BTSはユニセフと協力して、子どもや10代の若者への暴力撲滅を訴える「Love Myself」キャンペーンも行い、国連総会では、貧困や気候危機、メンタルヘルスの問題についてもメッセージを発信している。