マスクの下の表情、3歳や5歳の子どもはわかる?コロナ下で「感情を読み取る能力に悪影響」が危惧されていた

「保育や教育の現場では、(子どものために)必要以上に『マスクを外さなければ』と思わずに、個人の判断が尊重されると良い」(研究者)

「顔の一部が隠れているときには、感情を込めた声でコミュニケーションをとることで、子どもは相手の感情を理解しやすくなる」

静岡大学と畿央大学の研究グループは5月、そんな研究結果を発表した。

研究グループはマスクやサングラスを着けている人の表情を、3~5歳の27人の日本人の子ども(男児11名、女児16名)が読み取れるかどうかを調査した。子どもに、▽顔の全てが見えている画像▽マスクで口元が隠れた画像▽サングラスで目が隠れた画像ーーを見せた。

その際、▽感情を込めた音声を一緒に聴くとき▽音声のないないときーーに分けて見せるようにした。

調査に使用した顔写真
調査に使用した顔写真
静岡大学

画像を見せた後、「喜び」「悲しみ」「怒り」「驚き」の感情を表している顔はどれか、子どもに画像を選択してもらった。

その結果、音声のないときの正答率は、▽顔の全てが見えている画像▽マスクで口元が隠れた画像▽サングラスで目が隠れた画像ーーの順に高かった。ただ、最も正解しにくい「サングラスの着用時」でも、正答率は約80%だったといい、正しく読み取れる場合が多かった。

感情を込めた音声を聴きながら画像を見たときには、顔が全て見えていても、マスクやサングラスを着用していても、正答率に違いはなかった。子どもたちは、ほぼ100%正答していたという。

研究チームの古見文一講師(静岡大学)は「マスクやサングラスを着用していても、明確に表情を示したり、感情を込めた声でコミュニケーションをとったりすることで、子どもたちが(他人の)感情を理解するための発達を支えられる可能性がある」と指摘。

その上で、「保育や教育の現場では、(子どものために)必要以上に『マスクを外さなければ』と思わずに、個人の判断が尊重されると良い」と述べている。

研究チームによると、1歳半頃から小学校入学頃までの幼児期には、顔の表情を認識する能力が著しく発達する。

ただ、新型コロナウイルスの感染拡大によってマスクの着用が頻繁になったことで、子どもが他人の表情を認識しにくくなる可能性が指摘されていた。「マスクの着用が、表情から感情を読み取る能力の発達に悪影響を及ぼすのではないか」と危惧されていたという。

〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉

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