独身の「寂しくない」は強がりじゃない。70歳まで独身できた私がひとり生活を愛する理由

「独身なのに」ではなく、「独身だから」こそ豊かな人生を送っている
筆者のベラ・デパウロさん
筆者のベラ・デパウロさん
PHOTO COURTESY OF BELLA DEPAULO

今年で70歳になったが、私は多くの人が想像もできないことをやり遂げてきたーー。

それは、これまでの生涯ずっと独身を貫いてきたこと。そして年を重ねるごとに、私の独身生活はますます充実したものになっている。

若かった頃は、幸せのために独身でいるという選択肢があるなんて、思ってもみなかった。でも、みんなが思っていることは知っていた。本当は独身でいるのは嫌で(少なくとも長くは)、もし独身でいたいと思っているなら、それは自分自身を騙しているだけーー。そして、本当に独身で居続けるなら、年を取るにつれて悲しく、孤独になっていくだろう、と。

でも今はよく分かる。私はただ独身生活を送っているのではなく、独身生活の研究者でもある。何十年もの間、社会科学者として独身の人々を研究し、他人の研究を精査し、独身であることの意味を再定義してきた。

「根っからの独身者」

私は独身生活に強く惹かれている人々を「根っからの独身者」と呼ぶ(私もその1人だ)。私たちにとって、独身でいることは最も深く充実した生き方なのだ。

「根っからの独身者」と自認する数十人へのインタビューや、数百人とのカジュアルな会話、そしてオンライン調査に回答した数千人もの人々から、私は「独身」という状態の喜びについて学んだ。

そこで分かったのは、私たち「根っからの独身者」は「独身なのに」ではなく、「独身だから」こそ豊かな人生を送っているのだ。

パートナーを望んでいる独身の人々も充実した日々を送ることができる。でも、独身生活を受け入れ、恋愛パートナー中心の生活を望まない独身者には、隠れた強みがある。私たちの充実感の鍵となるのは、自由、孤独への愛、そして友人、家族、親密性、愛への開放的なアプローチだ。

インタビューした人々に独身でいることが好きな理由を尋ねたとき、すべての人が「自由」を挙げた。「根っからの独身者」にとって、自由は自分の生きたい生活への扉を開けるもの。私たちは自由を使って学び、成長し、新しい経験と新鮮な視点を持った、心理的に豊かな生活を創り出す。

私たちは自分で物事を決定することが好きだ。お金の使い方や自宅のデザイン、クリスマスの慣例はもちろん、寝る時間や食べるもの、観る番組、そしてトイレの便座を上げるか下げるかも、全て自分1人で決めたい。

独身生活の喜び

根っからの独身者は、「意味のある仕事」と「高収入の仕事」の片方しか選べない場合、「意味のある仕事」を選ぶ可能性が高い。私は自分の自由を利用し、研究に基づいた視点から、独身であることを欠点だらけと特徴づけるのではなく、長所を認める独身者を研究し、執筆してきた。

私はすでに退職しているべきなのに、ほぼ毎日働いている。私のように仕事を愛する独身者が、周りからどう思われているかは知っている。仕事と結婚している...仕事は愛し返してくれないのに...と。

でも、私は自分の心の生活を大切にしている。そして、ほとんどひとりで働いているこの仕事は、意外にもコミュニティの種を蒔いてきた。

これまで、仕事のおかげで、一生知ることはなかったであろう独身の人々から連絡を貰い、人生の中で会うことはなかったであろう人々と出会った

Facebookでは、自分たちの独身生活を祝福し、独身であることの様々な側面について議論する「独身コミュニティ」を始めた。ただし、デートやパートナー探しなど、周りが期待する「独身者が夢中に考えていること」について話すことはない。

従来のカップルも、独身者が享受する自由の多くを楽しむことができるが、カップルの生活では、独身者ほど自由が中心的な位置を占めていないように見える。

ヨーロッパの30カ国以上からの20万人以上を対象にした研究では、既婚者も未婚者も、自由、創造性、新しいことを試すといった個人主義的な価値観が自分にとって重要だと述べた。しかし、独身者は既婚者よりそれらの価値観をさらに重視し、取り組むことでより多くの幸福を得ていた。

孤独を味わう

私はラッキーなことに、大人になってからずっとひとり暮らしをしてきた。たくさんの時間を1人で過ごすが、退屈することはほとんどない。

家でだらだらしながら、ファーマーズマーケットから買ってきたばかりの新鮮な食材を使って食事を用意したり、ソファでごろごろしながら本を読んだり、お気に入りドラマの最新話の配信を観たり、1人の時間はリラックスできる。また、私は完全に1人で、誰にも注意力を奪われない状況のとき、最高の仕事ができる。

最悪な時期でも、私には孤独が合っている。父が予期せず突然亡くなったとき、数百キロも離れて住む母は、私がその知らせを聞いた後に誰かがそばにいてくれるよう、私の友人に電話をかけた。でも、それは私が望んでいたことではなかった。ショックを受け、打ちのめされていたが、ただ1人でいたかった。友人や親戚の訪問に安らぎを感じたのは、それからしばらく経ってからだった。

私のような根っからの独身者は、皆が孤独を大切にしていると思っていたが、インタビューした人全員が例外なく、自分だけの時間を持つことの重要性を強調したことには驚いた。

根っからの独身者たちは、孤独を味わっていた。これはメディアでよく描かれる孤立した独り暮らしの人などの「孤独」とは異なる。

社交も楽しむ

ひとりで時間を過ごすことの心理学に学者たちが注目するにつれ、ひとりの時間を意図的に選び、価値を置く人にとっては、それが創造性や精神性、そして内省に良い影響を与えることが分かってきた。

実際、自分が望むほどひとりの時間を持てない人は、自分が望む以上のひとりの時間を得ている人と同じくらいストレスや悲しみ、不満を感じている。

私たち根っからの独身者にとって、孤独への愛はスーパーパワーだ。ひとり時間を快適に過ごせる能力は、新型コロナのパンデミック中には私たちを支え、歳をとるにつれて役立ってくれる。ひとりでいることが好きだから、めったに孤独を感じない。

でも、私たちはただ孤独を愛しているだけではない。私たちのほとんどは、仲間との交流を大切にし、社交を楽しんでいる。独身者、特に根っからの独身者は、平均的により多くの人々とより深く繋がっている。既婚者と比べて友人や隣人とより頻繁に交流し、親との連絡をより確実にとっている。友人、兄弟姉妹、親、同僚、隣人との間で、より多くの道徳的、感情的、実践的な支援をし合っているのだ。

スペイン料理店で著書の発売を祝う筆者
スペイン料理店で著書の発売を祝う筆者
PHOTO COURTESY OF BELLA DEPAULO

恋愛的なカップル、またはそうなりたいと思っている人は通常、運命の相手ひとり(The One)に集中するが、独身者はどちらかというと複数人に気を配る。

根っからの独身者は、恋愛パートナーから一緒の時間や気づかいを求められることがないため、人生の中で好きなだけ多くの、もしくは少ない人と自由に交流できる。

私がバージニア大学で教えていたとき、新しく入ってきた同僚が自宅でのディナーに招待してくれた。私が気にいるかもしれないという男性も招待したと聞いて、残念に思った。私は彼女を知って友達になりたかったのだ。

根っからの独身者は、恋愛パートナーを優先するために友人を降格するような、多くのカップルがやりがちなことはしない。友人と一緒にいるときは、パートナーのことを考えたり、パートナー候補がいないかキョロキョロしたりすることなく、目の前の友人に集中している。

愛は恋愛だけじゃない

私たちは、親密性と愛に対して広く包括的なアプローチを持っている。通常家族とされる人々、例えば両親や兄弟姉妹、子どもたち(もしいれば)も、もちろん愛するが、私たちにとって家族同然の人々、例えば親しい友人や信頼できる人も大切にする。愛は偉大で大きな感情であり、恋愛だけではないとを知っているからだ。

独身者ついて最も根強い迷信の1つは、「独身者は一刻でも早く独身生活を抜け出し、恋愛相手を見つけカップルになることを何よりも望んでいる」ということ。

同僚のウェンディ・モリスと私は、自分が結婚したらどう感じると思うかを大学生に尋ねた。すると学生たちは、自分たちが可能な限り幸せになると予測した。一方、もし独身でいたら、不幸になると思っていた。他の研究では、高齢の独身者は、若い独身者よりも自分の人生に満足していないと考えられていることが分かった。

でも、そうした迷信はもう終わりだ。恋愛パートナーがいない成人3000人以上を対象にした研究では、20歳から96歳までのすべての年齢で、自身の独身生活に対する満足度が高い傾向にあることが分かった。独身生活に不満を感じている独身者もいたが、例外だった。さらに、40歳から数十年にわたり、独身者の独身生活に対する満足度は増していった

私の人生は今よりはるかに困難だった可能性もある。一生独身でいるということがとても難しい時代や場所に生きていたかもしれないし、配偶者なしで自分を経済的に支えることはほぼ無理だったかもしれない。おそらく、独身者に対する態度は今よりもっと軽蔑的だったかもしれない。

もしそうなっていたら、それはとても残念なことだ。私たち根っからの独身者にとって、恋愛パートナー中心の生活をしない場合に何を逃すかが問題ではなく、そうした場合に何を逃すかが問題なのだ。

「自分の本当の人生」の代わりに、「他人にとっての良い人生」を生きることは、最も意味のある、充実した、心理的に豊かな人生を生きる機会を逃すことになる。私たちは本当の自分であることができないだろう。

ーー

筆者のベラ・デパウロ(ハーバード大学博士)さんはこれまで、そしてこの先もずっと独身である。New York TimesやWashington Postなど、大手メディアでも執筆している。独身生活の素晴らしさについて書いた「Single at Heart: The Power, Freedom, and Heart-Filling Joy of Single Life」の著者。デパウロさんのTEDxトーク「What No One Ever Told You About People Who Are Single」(独身者について誰も教えてくれなかったこと)は160万回以上視聴されている。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

注目記事