必要とされる「終活ワンストップサービス」、国の「身寄りなき老後」支援の新制度に思うこと

2050年、私は75歳。ロスジェネがとうとう後期高齢者になるわけだ。その時までに、「終活ワンストップサービス」が充実していてくれれば、みんなどれほど安心して老後を迎えられるだろう。
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sot via Getty Images

「一家に一冊、というより一人に一冊」

「老後への漠然とした不安が激減した」

「どういう準備をし、どこに連絡をし、どんな制度を使えばいいか具体的なことがわかった」

「これで生き延びられる」

これらの言葉は、2月に出版した『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)に寄せられた感想である。

本書は発売2カ月で早くも5刷。書いた本人である私が一番驚いている。物書きになってから24年、これほどの勢いで売れているのは初めての経験だ。私の不安ってみんなと同じものだったんだ。そんな思いをひしひしと噛みしめている。

そんな折、ある報道を目にした。

それは5月7日の朝日新聞に掲載された「身寄りなき老後、国が支援制度 日常生活から死後対応まで、試行へ」というものだ。

記事によると、今後増えていく「頼れる身寄りのいない高齢者」が直面する課題を解決しようと、政府が新制度の検討を始めているという。その内容は、行政手続きの代行など生きている間のことから葬儀・納骨といった死後の対応まで。

「入院時に頼れる親族がいない」「認知症になったときのお金の管理が心配」「遺言を残したい」「葬儀や納骨をしてくれる人がいない」「死後の家財の処分はどうすれば」などなどの困りごとへの対応ということで、これってまさに『死なないノウハウ』で書いたことじゃん! と叫びそうになった。

「お金」や「仕事」「健康」など6章からなる『死なないノウハウ』だが、反響が大きいのは親の介護や自らの終活・死について触れた章。特に「民間の終活団体」「一種の家族代行業」として注目を集めている「一般社団法人LMN」のサービスには大きな関心が寄せられている。

LMNとは、Life(生活)、Medical(医療)、Nursing(介護)の組み合わせ。公式サイトには「医療・介護の場面はもちろん、QOL(生活の質)の維持や誰もが必ず迎える終末期の準備まで、クライアント様のあらゆるニーズに関わる方々との『つなぎ役』となることを目的としております」という言葉がある。

そんなLMNが提供するのは、施設選びから納骨までの仲介サービス。墓じまい、実家じまいにも対応している。ちなみに依頼者の9割が、「親の介護ができない」という子ども世代。40〜50代がメインで、そうなると親は70〜80代が中心だ。親が毒親で関わりたくないということもあれば、働き盛りの現役世代ゆえ、なかなか対応できないというケースもある。

そんな中でも歓迎されているサービスは、親が入る施設からの第一連絡先になってくれること。ちなみに施設によっては関西の施設から東京の子どもに「トイレットペーパーがなくなったから持ってきて」というような連絡が入ることもあるそうで(勘弁してほしい……)、そのような「施設ガチャ」にも詳しいからこそ、施設選びから関わるサービスを提供しているという。

一方、本書では親や自分が口から栄養が取れなくなった場合の注意点にも言及している。

このような場合、胃ろうや経鼻経管栄養、CVカテーテルなどの選択肢があるわけだが、何を選ぶかによって、今いる施設にいられなくなる可能性もあるのだという。

それは非常に困る、という人が大半だろう。多くの場合、「看取りまで」ということで高いお金を払って入る施設だ。そこを追い出されてしまうなんてたまらないが、その理由は、夜は看護師がおらず、医療行為ができない施設が多いから。が、施設によっては「うちは胃ろうならできますよ」「CVカテーテールならOK」ということがある。そうなると、必然的に施設で対応しているものが選択肢となるわけだ。そうすれば、安心して施設にいられることになる。

高齢者施設を選ぶ際、多くの人は何を基準にしていいのか、そこからもうわからないわけだが、必要なのはこのような「情報」ではないだろうか。「お金がないから有料サービスなど使えない」という人でも、こういう情報があれば、施設選びの参考にできる。本書には、このように知っていて損はないもろもろを盛り込んだ。

ちなみに私は、知人の付き添いで高齢者施設についての説明を受けたことがある。知人の親が施設に入るかもということで同行したのだが、その際、情報として出てきたのは食事のメニューや「こういう楽しいイベント、レクリエーションがあります」というものばかり。それはそれで重要だが、もっと医療的なことや「いざという時」のことこそ必要だと、今になってしみじみ思う。ただ、その時の私は、「何を確認すべきか」ということさえもまったくわかっていなかった。

さて、それではこれから制度化が目指される国の支援はどういうものなのだろう? 厚労省は、ふたつのモデル事業を始めるという。

ひとつは市町村や社会福祉協議会などに相談窓口を設け、「コーディネーター」を配置するもの。日常の困りごとや終活、死後の遺品整理などの相談に乗る。法律相談や終活支援をする専門職、葬儀・納骨や遺品整理をできる業者などとつないで契約手続きを支援するそうだ。

非常にいい取り組みだと思うが、もっとわかりやすい「終活ワンストップサービス」みたいなものが無料、もしくは低額で受けられたら……と思ったところ、次のふたつ目が、方向性としてはそれに近いようだ。

内容はというと、市町村の委託、補助を受けた社会福祉協議会などが、介護保険の手続き代行から金銭管理、緊急連絡先としての受託、死後対応などをパッケージで提供、とのこと。またお金については「国による補助で少額でも利用できるようにする」という。

記事によると、国に先立ち、すでに独自の事業を始めている自治体もあるそうだ。

東京都豊島区の「終活あんしんセンター」では「任意後見」や「死後事務委任」の契約を支援。また愛知県名古屋市では、資産や所得が一定以下で、子や孫がいない独居の65歳以上に、見守り・安否確認、葬儀や納骨、家財処分などのサービスを提供しているという。

ちなみに私は単身・子なしゆえ、「この先」の不安から取材を重ねて『死なないノウハウ』を書き上げたわけだが、単身世帯は今や4割近くで2.5世帯に1人。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、65歳以上の単身世帯は20年には738万世帯だが、30年には887万世帯に、そして2050年には1084万世帯と1000万を超える予定。65歳以上の「独居率」は50年には男性で26.1%、女性で29.3%に達する見込みだという。

2050年、私は75歳。ということは、ロスジェネがとうとう後期高齢者になるわけだ。

その時までに、無料もしくは安く使える「終活ワンストップサービス」が充実していてくれれば、みんなどれほど安心して老後を迎えられるだろう。

そんな制度づくりの参考になるのは、民間の有料サービスだ。なぜならそれは、お金を払ってでも必要とされる、現場の切実なニーズから生まれたものだからだ。

『死なないノウハウ』にて、民間の有料サービスについてはLMNだけでなく、「相談室ぱどる」も紹介した。私自身がさまざまなトラブルに見舞われたり、既存の公的制度では対応できないケースの相談を受けた際、またどう考えても警察沙汰なのに警察が動いてくれない時などにお世話になってきた相談室である。

行政書士、精神保健福祉士、社会福祉士、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士などなどの資格を持つ原昌平さんが立ち上げた「ぱどる」のパンフレットには、以下のような言葉がある。

「生きていく安心から、相続・死後の備えまで」

「社会保障+福祉+法律+医療+お金+住宅」

「総合的に相談に乗り、生活の設計と支援をおこないます。公的機関で対応しづらいサービスを有料で提供します。国家資格をもつ専門職が、家族の代わりになります」

このようなサービスが生まれたきっかけは、この国の「縦割り行政」の中で制度の狭間に落ちるようにしてセーフティネットから漏れてしまう人が生み出されるのを見てきたからだという。

例えば、福祉職の人は福祉に詳しくても、法律や税金についてはわからない。一方、弁護士や司法書士は福祉や社会保障制度のことをあまり知らない。行政の人は、自分の窓口のことはわかっても、違う分野のことは知らない。また、困りごとがある時、私たちはそもそもどこに行けばいいのかわからないことが多々ある。市役所なのか、保健所なのか、労基署なのか、ハローワークなのか、年金事務所なのか。だからこそ、ナビゲート役が必要ということで開設されたのが「ぱどる」だ。

そんな「ぱどる」が得意とするのは、社会保障をフル活用するノウハウや暮らしのサポート、相続、遺言、終活サポートなどなど。中には「継続的な生活支援サービス」もあり、「緊急時連絡カードの作成」や「カギの預かり」、また「パソコン・スマホ・通信の設定補助(基本的なもの)」というのもある。今すぐ高齢の親戚なんかに勧めたいし、なんなら私も使いたい。

…と、少し触れただけでも「国の支援」が新しく作られるなら、ぜひ参考にしてほしいことが盛りだくさんではないだろうか。

一方、身寄りのない高齢者への新制度が充実したものになれば、高齢者が亡くなった後に放置される空き家問題や、増え続ける孤独死などにも対応できるだろう。「終活ワンストップ」という横串を刺すことで、解決できる問題はたくさんある。そもそも老後2000万円とかほとんどの人にとっては不可能なんだから、安心できる制度をみんなで知恵を絞って作って生き延びるしかないのだ。

ということで、この新制度、どんなものになるのか見守っていきたいし、自分のために、さらに情報を集めてきたいと思っている。

最後に。『死なないノウハウ』をまだ読んでない人はぜひ、立ち読みでもしてほしい。「ラーメン一杯の値段(990円)で無敵になれた」という嬉しい声も多数頂いている。

雨宮処凛『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)
雨宮処凛『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)
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