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前田晃平さん「夫婦で大黒柱をやっていく」男性の家庭進出が必要な理由

約8割の女性が抱えていると言われる「隠れ我慢」。家事育児は家族で分け合い、支え合うことが大切です。本記事では、フローレンス代表室長・前田晃平さんに男性の家庭進出について話を聞きました。
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多くの女性が「隠れ我慢」を抱えているといわれています。「隠れ我慢」とは、不調を我慢して仕事や家事をしてしまうこと。

ツムラが実施した調査では、全国20~50代女性の約8割が「隠れ我慢」を抱えながら日々過ごしていることが分かりました。

フローレンス代表室長の前田晃平さんは、女性が直面する育児の大変さやジェンダーギャップについて、自身も育休を取ったことで初めて「分かった」と言います。

前田晃平(まえだ・こうへい):認定NPO法人フローレンス代表室長。1983年、東京都出身。慶應義塾大学総合政策学部中退。リクルートホールディングス新規事業開発室プロダクトマネージャーを経て、現在、フローレンスでマーケティング、事業開発に従事。政府・行政に政策を提案、実現するソーシャルアクションを行う。妻と娘と三人暮らし。著書に、『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!』(光文社)。
前田晃平(まえだ・こうへい):認定NPO法人フローレンス代表室長。1983年、東京都出身。慶應義塾大学総合政策学部中退。リクルートホールディングス新規事業開発室プロダクトマネージャーを経て、現在、フローレンスでマーケティング、事業開発に従事。政府・行政に政策を提案、実現するソーシャルアクションを行う。妻と娘と三人暮らし。著書に、『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!』(光文社)。
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ジェンダーギャップ解消。鍵を握るのは「男性」

──前田さんは、日本社会をより良くするためには「パパの家庭進出がまず必要」と訴えています。この理由は何でしょう?

今、メディアをはじめさまざまな場所で「女性の社会進出」「ジェンダーギャップ」「少子化」といった問題が論じられています。こういった問題が取り上げられるとき、スポットライトが当たるのは、とにかく「女性」です。

例えば、女性の社会進出という話で挙がってくるのは、「女性のモチベーションを高めるために研修をやろう」「女性が働きやすい職場づくりをしよう」といったもの。いかに女性にもっと頑張ってもらうかという方向性で話が進むわけです。

ですが僕自身、育児休業(以下、育休)を取って子育てにコミットして痛感したのは、「これは女性の問題ではない」ということです。

僕の前職もそうでしたが、日本企業の多くは労働時間がとても長い。そういった職場にいながら、毎朝子どもを保育園に送り、定時には退社してお迎えに行くのは至難の業です。だから子どもを持つと、キャリアの土俵から下りるしかない。これが、今まで多くの女性に起こっていたことです。

定時で帰ったとしても、子育てはめちゃくちゃ忙しいんですよ。すでにそのような状態である人(女性)に対して「もっと頑張れ」というのは無理な話でしょう。

例えば少子化問題も、夫が家事育児をすればするほど出生率が高まることは、さまざまに証明されています。鍵を握っているのは、むしろ「男性」なんです。

――社会ではそのような認識が低いように感じます。

少し前まで「男なら長時間労働は当たり前」でした。「大黒柱はキャリアアップして給料を稼いで家族を養っていかないといけない」という意識が社会全体にあったし、それを期待されていた。今もその延長線上にいる人は少なくないのではないでしょうか。

僕自身も家族ができるまではそうでした。ですが今は、パートナーと支え合って家事育児をすることがとても幸せな時間であることを知っています。

本来、誰もがその素晴らしい体験をする権利を与えられている。ですが男性は、仕事のためにその権利を享受してこなかったわけです。このことに、ほとんどの男性が気づいていない。

酷な言い方かもしれませんが、仕事の人間はいくらでも「替え」が利きます。でも家族は「替え」が利かない。むしろ家事や育児をした経験が、男性のその後のキャリアにとってもプラスになると僕は思っています。

だから今、家事や育児に時間が割けていない男性は、今一度、家族とどうありたいか、人生をどう生きたいかについて、見つめ直した方がいいと思います。

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産後の女性は満身創痍。夫が家事育児をしないでどうする

――前田さんがそのような考えに至ったのは、ご自身が育休を取られたことが大きかったのですか?

圧倒的に大きかったですね。もともと社会課題に興味はあったので、ジェンダーギャップや育児の大変さについての“情報”は知っていました。ですが、育休を取って自分が子育てをしたとき、「知っていた」から「分かった」にフェーズが変わりました。

子どもは個人差が大きいので育児の大変さは家庭によりけりなのですが、わが家はかなりキツくて、夫婦 2人がフラフラになりながらやっていました。娘がもう全然寝てくれなくて(笑)。

産後、女性の体は満身創痍(そうい)で、ホルモンバランスも崩れて情緒不安定にもなります。それなのに、俗に言う「ワンオペ」で家事育児をするなんて、正気の沙汰じゃないと思いました。出産による身体へのダメージがない方が、家事育児をしないでどうするんだ、と。

――産後の女性の状態については、どのように理解を深めていったのですか?

とにかく勉強しました。というのも、産前は夫婦仲が良好だったのに、産後になって急に悪化したんです。僕自身は何も変わっていないのに、妻はいつも怒っていて。

あまりにもおかしいので、「出産で女性に何が起きたんだ?」と思って調べ始めたんです。そうしたら「出産は全治数か月の交通事故と同じくらいのダメージ」なんていうネット情報もあってビックリしました。

――女性の8割が「隠れ我慢」をしているという、この数字をどう受け止められましたか?

驚きました。でも一方で、納得する自分もいました。育休中のあるとき、娘と公園に行って砂場で遊んでいたんです。そのとき隣で遊んでいた子どもたちのお母さんグループの会話が聞こえてきた。

子どもの習い事について話をしていたのですが、よくよく話を聞いてみると、子どもに習い事をさせることによって、どうにか自分の時間を捻出しようとしていたんです。

さらに夫について、「1週間に1回、子どもが起きている間に帰ってきたらいい方だよね」などと言っている。普段、女性が1人でどれほど忙しい状況なのかということです。

わが家は、育休を取って夫婦で育児をしているし、実家が近いので両親の力を借りることもできる。それでも、こんなにキツい。でも、今男性の育休取得率は13%ほど。多くのお母さんが日常的にワンオペをしているはず。そりゃあ多くの女性は我慢しているよね、と思いました。

――前田さんはパートナーに「隠れ我慢」をさせないために、工夫していることはありますか?

わが家では、意識的に言いたいことをその場で言い合うようにしています。でも最初は違いました。子どもが生まれた直後、僕は家事育児を「やっている気」になっていた。

「世の男性は育休も取らず、好きなだけ働いている。だけど僕は育休も取って、復帰後も定時で帰ってきている。これ以上何を求めるの?」という感じで。

それで一度、妻の怒りが大爆発しました。「あなたが頑張って働いていると思っていたから我慢していたけれど、もう言ってやる!」と。フタを開けたら、僕の視界から見えていなかった妻のタスクや悩みなどが山のようにあったんです。

この一件から、普段からきちんと話し合いをしなくてはいけないことを学びました。だからわが家は、ルーティンとして意地でも夫婦の時間を確保するようにしています。夫婦ともリモートワークの時は2人で必ずランチに行くとか、それができない時は寝る前に時間を取るとか。

だから、ケンカは絶えないですけど、「隠れ我慢」はないかなと僕は思っています。今度、妻に聞いてみようかな(笑)。

ツムラ

全体の3割が変われば、カルチャーは変わる

――「女性の8割が~」という言い方をすると、時に男女の分断や互いの反発を招くことがあります。共に協力して解決するには、どうすればいいのでしょう?

人類の半分は女性です。その女性の8割ということは、全人類の40%もの人が問題を抱えていることになります。男女関係なく、困っている人が大勢いるのなら、それを解決するのが社会にとっていいことだし、そちらの方がみんないいでしょ?とシンプルに思います。

でも僕はさほど悲観的に見ていなくて。なぜなら、知人の男性陣を見ても、知らないから招いている誤解だったり偏見だったりがある。面と向かって話すことが、相互理解の糸口になると信じています。だから、女性のみなさんはぜひ我慢を隠さないでほしいなと思います。

ほとんどの男性は、女性の我慢に気づいていないんです。僕も妻から「こんなに私が我慢してるのに、見てて分からないの!?」と言われたのですが、スミマセン、本当に分からなかったんです……。

もちろん「隠れ我慢」になるゆえんはいろいろあると思います。周りに心配をかけたくない、負担に思われたくない、など。「我慢しないで言って」と言われても「それができたら苦労しないよ」と思ってしまうのかもしれない。

それでも、僕が社会問題の解決を仕事にしているから特に思うのですが、できれば声に出してほしい。そこが解決の糸口になることもきっとあると思うのです。

日本全体で言えば、特に20〜30代の男性は家事育児への意欲が高いし、制度的にも男性に育児に参加する動きが加速しています。

組織でもなんでも、全体の3割くらいが変わればカルチャーは一気に変わる。だからそう遠くない将来、日本社会も男性全体の意識もガラッと変わる。僕はそう信じています。

――前田さんが家事育児をすることでパートナーの愛情曲線は上向いたと思いますか?

そう思いたいですね(笑)。普段から僕は早く家に帰りたいと思うし、妻もそうだと言ってくれています。

これがわたしの#OneMoreChoice

ツムラ

「夫婦で大黒柱」

最初は僕1人で大黒柱を担おうとしました。でも残念ながら、その器ではなかった(笑)。いまは夫婦で大黒柱をやっています。だから男性の皆さんには、「1人で担わなくてもいいよ」と言いたい。

また収入面だけでなく、家事育児を担っている人も家庭の大黒柱です。育児は素晴らしいこととはいえ、1人で担うとやっぱりつらい。家族で支え合って、分け合っていくほうがずっといい。

一人一人が仕事、家族、人生を見つめ直して、「本当にありたい姿」を実現させていってほしいと思います。人生は長いですからね。

取材・編集=野村高文 文=藤橋絵美子 撮影=Shin Ishikawa

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