![優勝を決めた表彰台でハートマークをつくるザギトワ選手=2017年12月9日、名古屋市](https://img.huffingtonpost.com/asset/5c637141240000b102a22334.jpeg?ops=scalefit_720_noupscale)
女子フィギュアスケート界で注目が高まっているロシア人がいる。アリーナ・ザギトワ選手(15)だ。ジュニア時代に圧倒的な強さを見せつけ、今シーズンからシニアシリーズに参戦。初戦で優勝を決めたほか、これまでグランプリシリーズでも3勝している。
母国ロシアで開催中の選手権では、世界女王のメドベージェワ選手がけがで欠場する中、ショートプログラムで首位に立った。フリーを得意とするだけに、優勝する可能性は高い。
国ぐるみのドーピング問題を受けて、ロシアは2018年に韓国・平昌で開催される冬季五輪に選手団を派遣できなくなったが、選手が個人資格で出場することは認められた。ザギトワ選手は出場について態度を明らかにしていないが、参加すれば優勝候補の一人として注目されることは確実だ。
ザギトワ選手とはいったいどんな人物なのか。
「今回の課題はきれいに滑ること。演技の構成要素は難しく、うまくいけば、3位ぐらいには入れるかな」。12月22日、ロシア・サンクトペテルブルクで開催中のフィギュアスケートロシア選手権を取材する記者たちに、ザギトワ選手は控え目に言った。
そんな言葉とは裏腹に、ザギトワ選手は圧倒的な実力を見せつけていた。この日あったショートでは78.15点をただき出して首位。70点台をマークしたのはほかに5人いたが、格の違いは明らかだった。
![グランプリファイナルで優勝し、メダルを掲げるザギトワ選手=2017年12月、名古屋市](https://img.huffingtonpost.com/asset/5c637141250000be00c81a1e.jpeg?ops=scalefit_720_noupscale)
ザギトワ選手はモスクワの約1000キロ東にある工業都市イジェフスクの出身。アリーナという名前は、ロシアを代表する新体操選手だったアリーナ・カバエワさんにちなんだ。大ファンの母親が付けたという。
![アテネ五輪に出場するカバエワ選手=2004年](https://img.huffingtonpost.com/asset/5c6371412400007002a22336.jpeg?ops=scalefit_720_noupscale)
父はアイスホッケーのコーチで、ザギトワ選手も小さい頃からスケートに親しんでいた。
フィギュアスケートを本格的に始めたのは5歳になってから。力をつけるためにモスクワに移住し、トップアスリートを養成する「サンボ70」傘下のフィギュアスケートクラブ「フルスターリヌィ(『クリスタルガラス』の意)」に入った。
コーチはエトゥリ・トゥトゥベリーゼさん(43)。引退したリプニツカヤさんや、メドベージェワ選手らを育てた実力派だ。
![ソチ五輪に出場するリプニツカヤさん=2014年、ソチ](https://img.huffingtonpost.com/asset/5c6371412500002304803481.jpeg?ops=scalefit_720_noupscale)
2016年2月にジュニアの国内大会でデビュー。8月にあったジュニア国際大会では初出場で優勝した。12月にあったジュニアグランプリファイナルでは、ショートとフリーでジュニア世界最高得点をマークし、ジュニアの選手としては初めてとなる200点超で優勝した。
2017年9月にシニアデビューし、初戦で優勝。その後も名古屋であったグランプリファイナルを含め、3勝している。
![GPフランス杯で演じるザギトワ選手=2017年11月](https://img.huffingtonpost.com/asset/5c6371463b0000b6036b0c95.jpeg?ops=scalefit_720_noupscale)
ショート、フリーともに基礎点が上がる後半にジャンプ要素を詰め込み、得点を稼ぐのが特徴だ。
立て続けにジャンプをすることは、体力と精神力のいずれも高いレベルが求められる。そのため、こうした演技構成は一般的ではない。逆にそれが、ザギトワ選手の実力を表している。
尊敬するフィギュアスケーターとして、イタリアのコストナー選手とロシアのメドベージェワ選手を挙げている。メドベージェワ選手とは同じクラブで練習しており、「見習っている」と話した。「競争している意識はない」とも話し、ライバルというより仲間であることを強調した。
一方、アスリートとしては、カバエワさんを敬愛する。「意志が強く、演技をしている時が好き」と理由を明かす。
![メドベージェワ選手](https://img.huffingtonpost.com/asset/5c6371472500004401c81a24.jpeg?ops=scalefit_720_noupscale)
今シーズンは、ショートプログラムでアメリカのサイコスリラー映画「ブラック・スワン」の曲を使っている。
ブラック・スワンは、ナタリー・ポートマンが演じるバレエダンサーが主人公。「白鳥の湖」の主役に抜擢され、善の象徴である白鳥と、邪悪な存在の黒鳥を演じ分けることに苦しみ、やがて精神のバランスを狂わせていくという内容だ。
ザギトワ選手は「自分の性格に合っているかはわからないが、演じていくうちに合うようになっている」と言う。
フリーの曲は、クラシックバレエの演目「ドン・キホーテ」。とりわけ注目されたのは真っ赤な衣装だ。
バレエの中でも、娘役のダンサーは赤い衣装を着ており、ザギトワ選手もそれに合わせた形だ。「私が好きな色は黒と紫なんだけど、赤も似合うでしょ。コーチが特に似合うって言ってくれています」とザギトワ選手は話す。
![赤い衣装のザギトワ選手(中央)=2017年12月、名古屋市](https://img.huffingtonpost.com/asset/5c6371473b000075036b0c99.jpeg?ops=scalefit_720_noupscale)
![エキシビションで演技を披露するザギトワ選手。独特な衣装に注目が集まった=2017年11月、フランス](https://img.huffingtonpost.com/asset/5c63714723000004012226f8.jpeg?ops=scalefit_720_noupscale)
2017年3月に台北であったジュニア選手権後に受けたインタビュー取材で、ザギトワ選手は「帰国したら祖母に巻きずしを買ってもらう約束をした」などと発言、日本食好きを明かした。
また、羽生結弦選手からプレゼントされた「くまのプーさん」のぬいぐるみや、「リラックマ」のティッシュカバーを大事にしており、何かと日本との「つながり」もある。
ロシアメディアの取材に対し、「リラックスのためにアメリカのコメディドラマをインターネットで見ている」と話した。
また、ネコとチンチラを飼っており、「不在中にネコがチンチラを食べないか心配か?」とロシア人記者に尋ねられた際、「ネコはおとなしいし、チンチラはすばしっこいので大丈夫」などと答えた。
ロシア選手権の女子フリーは現地時間の23日にあり、この成績によって平昌五輪に出場(ただし個人資格)できるかどうかが決まる。