「成人の日」で新成人の若者たちはみんなが浮かれている。
私は大学の教師ですが、現役で入学した学生だと大学2年生がちょうど「新成人」になります。
地方から首都圏に出てきて「成人」になる若者たちは、明日、それぞれの郷里で「成人式」のセレモニーを祝ったり、あるいは住民票がある自治体の成人式に出たりで様々です。
地方によっては「うちの地方ではすでに昨年、成人式は終わりました」などと言っている学生もいて、地域差があって面白いものです。
ところで、彼ら彼女らの話を聞いているとこの日のためにかなり前から準備を行っていることがわかります。「成人の日」はお金もかなり動く一大イベントなのです。
女子学生は1年以上、人によって2年以上前から美容院やレンタルの振り袖を予約しています。美容室は早朝4時、5時などの予約もザラだとの話。振り袖姿だと草履にショール、和装バッグ。また、振り袖姿で成人式に出た後は、高校や中学などの同級生たちと一緒にドレスに着替えてパーティを予定し、その間、着替えた後の振り袖などを大きな袋に入れてどこにしまおうか、などと相談し合っています。そのドレスもレンタルで、たぶん、明日は駅などのコインロッカーに大勢の新成人たちが殺到することになるでしょう。
女子だけかと思っていたら、男子も和装→洋装という流れは同じようです。
そんな成人式ですが、はたして彼ら彼女らは「20歳」になって何が可能になるのでしょう?
大学教員の立場だと、未成年の飲酒や喫煙にはうるさく注意しなければならない日常なので、この2つは19歳までと20歳までの大きな違いだということはわかります。
とはいえ、実際には未成年の大学生が喫煙したり、飲酒しているのを止めることは不可能に近いものです。
大学のキャンパスでタバコを吸っている学生一人ひとりに「君、未成年では?」などとはなかな注意できません。
だから、大学生になった時点で飲酒や喫煙が事実上「容認」されてしまうケースが多いのだと感じます。
(もちろん、私は飲酒の場合は特に厳しくチェックしていますが・・・)
「では、20歳になるとできること」って何でしょう?
そんなことを考えながら、いろいろググっていたら、ネット上の「naver まとめ」に以下の記事が出ていました。
<新成人>知ってた? 二十歳になって変わること
▼成人するってどういうこと?
成年に達した者を成年者といい、未成年者はこれと対する概念である。一般に大人というと成年者などを指すことが多い。また、成年に達することを「成人する」「成人になる」という。
日本における成年の定義
日本では、民法第4条の「年齢二十歳をもって、成年とする。」という規定に基づき、20歳以上の者を成年者としている。
▼成人するとなにができるようになるの?
(NAVER まとめ「《新成人》知ってた?二十歳になったら変わること」より)
この後で、成人になるとできることが列記されています。
あります、あります・・・
酒、タバコ、裁判員に選ばれる可能性、競輪・競馬などの投票券の購入、賃貸契約などに親の同意不要になる、国民年金の支払い義務が生じる、親の同意なく結婚できる、養子を迎えることができる、運転免許やパスポートなどの取得の幅が広がるなど・・・
でも、よくよく考えてみると、タバコや酒の購入、馬券やボート券の購入などは生活においてそれほど大きな問題だとはいえません(もちろん、なかにはそういう人もいるでしょうけど)。naverまとめに書いてあるなかで、かなり重要な問題だと思われる要素は以下の2つの点だと感じました。
選挙権が与えられます
日本においては、1889年に大日本帝国憲法及び衆議院議員選挙法が公布され、一定以上の財産を持つ25歳以上の男子に選挙権が与えられ、数度の改正を経て、1925年に25歳以上の男子全員に選挙権が与えられた1。その後、1946年に日本国憲法が公布され、20歳以上の男女と定められており、現在まで改正がなされていない。
2007年に公布された国民投票法では、投票権は18歳以上の者と規定されているが、公職選挙法上の選挙権が改正されるまでは20歳以上の者しか投票できないこととなっている。
(NAVER まとめ「《新成人》知ってた?二十歳になったら変わること」より)
法律を作る議員や裁判官を罷免したりする「選挙権」は、確かに一番と言っていいほど大事な要素です。
投票のいかんで国や自治体の方向性を決めるわけですから。
今年焦点になっている憲法改正がどうなるかも「選挙権」を持つ人たちの意思で決まってしまうのです。
まさに社会のなかで「大人」でなければならない要素です。まだ「子ども」だという人たちに任せては怖い怖い。
でも、あれっ? 投票権って公職選挙法が改正されて18歳に下がったのでは?・・・と思ってよくよくこの記事を読んでみたら、このnaverまとめは2015年1月3日の記事。ちょうど1年あまり前の記事でした。
その後の2015年6月17日に公職選挙法が改正されて、今年(2016年)夏の参議院選挙から「18歳から選挙権が与えられる」となっています。
すでに公職選挙法上は「18歳で大人」になっているのです。
それからもうひとつは少年法とのからみです。
よく問題になる、人を殺しても未成年だと実名が出ないで匿名で保護される、という問題。
やらかすと実名報道されます
少年法 - Wikipedia
未成年時は少年法61条により個人を特定できるような情報が報道されないよう守られていますが、成人にはもちろん適用されません。
(NAVER まとめ「《新成人》知ってた?二十歳になったら変わること」より)
これも少年法で保護されて、罪を犯しても「匿名」として保護される少年の年齢をもっと引き下げるべきだ、という意見が国民の間で根強くあります。
で、この点も実は、昨年6月に成立した改正公職選挙法の付則に選挙権年齢引き下げを踏まえた上で、民法の成人年齢や少年法の適用年齢などについても「検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」と盛り込まれています。
つまり近い将来、少年法の適用年齢は下げられるし、民法の成人年齢も18歳になる可能性が大だということです。
だったら・・・今年はもう間に合わないとしても、
来年(2018年)から成人式は18歳、「成人の日」の行事も18歳を対象にすべきではないでしょうか?
なぜなら、成人=大人として一番大事な「選挙権」をもう18歳の人たちは手にしているわけですから。
20歳ではなく、18歳で「大人の自覚」を持って、社会のこと、国のことなど真剣に考えてもらわないとこの国の将来は不安なものになってしまいます。
「18歳になったのだから、大人として、有権者として自覚ある行動をしてくださいね!」
ということにすればいいのでは?
大学教員として見る限り、日々向き合う大学生の<精神年齢の低年齢化>は目を覆うような惨状にあります。
もちろんなかにはしっかりした若者もいますが、どちらかと言えば「心はお子ちゃま」の学生が多くなっていて指導に苦労する日々です。
このまま、彼らに「憲法を改正するかどうか」など、国の重大な決定を委ねてしまっていいのか、と心配になってしまいます。でもすでに法律が改正されて選挙権を与えてしまったのなら仕方ありません。あとは早く、彼らに精神的に「大人」になってもらうだけです。
「成人式」「成人の日」の対象が20歳でいいのか、18歳にするのかというのは、実は政治的にもけっこう重要なことだと感じます。
イベント好きの今の若者たちには、「成人式」は「大人の自覚」を持つきっかけにはなりそうです。
選挙権が与えられて、有権者として「大人」であるなら、その自覚を持ってもらう機会を可能な限りふやすべきだと思います。
それとも、公職選挙法は「成人」である若者たちを<まだ大人扱いしない>で、お気楽なばか遊びをさせていた方が都合のいい人たちがいるでのでしょうか?
「成人の日」で全国各地、浮かれている若者だらけで申し訳ないけれど、私、間違っていますかね?
(2016年1月10日「Yahoo! 個人」より転載)