①多くの「事実誤認」があり、
②原子力規制委員会(と、その事務局である原子力規制庁)や有識者会合にも「審査プロセスの問題点」が数多く指摘され、
③この評価書について『専門家』の意見を聴くピア・レビュー会合でも多くの疑問が出されていること
を紹介した。
また、規制委・規制庁は"評価書に反映済み"だとして、活断層の存在を認定するよう強引に突き進む気でいるのではないかとも危惧していた。
ここに至って、この危惧は現実のものとなろうとしている。
先月10日、規制庁と日本原電の面談が行われた。その議事録によると、規制庁側から次のような方針が示された。
『有識者会合による評価は既に終了しており、その評価内容や検討過程を議論するために今後当方の人的資源を割くことはしない。敷地内破砕帯の活動性については、法令に基づいて貴社が原子炉設置変更許可申請を出されるならば、審査会合やヒアリングで改めて十分に審査していきたい』
これは即ち、"有識者会合は終わったのだから、もう議論はしない"と言い切っているのと同じだ。今まで事業者や『専門家』から出された意見や批判には一切答えるつもりはない、と規制庁は意思表示しているわけだ。
当初、規制委・規制庁は、発電所敷地内の破砕帯の評価について、平成24年9月26日に、次のような方針を示していた。
『・・・破砕帯について自ら確認と評価を行い、耐震設計上考慮する活断層の認定に係る判断を行う』
『判断にあたっては・・・現地調査団(仮称:後の「有識者会合」)による確認結果を踏まえ、当委員会で行う』
それを、平成26年12月3日になって、規制委・規制庁は次のように方針変更をした。
『新基準への適合性審査は、・・・有識者会合による評価にかかわらず、原子力規制委員会が審査を行った上で許認可の可否を決定する』
『有識者会合による評価を重要な知見の一つとして参考とする・・・』
この方針変更の理由については、規制委・規制庁から一切説明はされていない。だが、法的根拠なく設置された有識者会合に対する数々の批判の矛先を少しでもかわそうとする意図を私は感じてしまう。
方針変更をしても、『有識者会合による評価を重要な知見の一つとして参考とする』とある以上、規制委・規制庁の行政行為の一貫として行われていることに変わりはないはずだ。にも拘わらず、『評価内容や検討過程を議論するために今後当方の人的資源を割くことはしない』と一方的な打ち切りを通知することが公平・公正な行政行為だと言えるだろうか。
上述のように、先月10日の規制庁と日本原電の面談では、規制庁は『審査会合やヒアリングで改めて十分に審査していきたい』と今後の審査に期待を持たせる発言をしている。だが、規制委・規制庁は、不適格な審議状況や科学的根拠に基づかない評価書の実態が公開の場に曝け出されることを恐れ、議論を先延ばしにしているだけではないのか。私には、そう見えてしまう。
九州電力・川内原発の規制基準適合性審査について、規制委・規制庁は、"再稼働"を人質に取っている。数万ページも及ぶ書類を提出させ、異常に厳しい検査で事業者を虐待しているとしか映らない。これは、先般の拙稿でも書いたことだ。
日本原電が提示した「66の問題点」に対して、科学的な疑問が出されている敦賀原発の破砕帯調査について、規制委・規制庁は、言い訳ばかりで"逃げている"と思われても仕方がないだろう。"活断層"のレッテルを貼って、あとは時間の過ぎるのを待って廃炉に追い込もうとする姿勢は常識外れならぬ、良識外れである。
既設原発は、震災前に許可されたものだ。当時の行政機関である旧原子力安全・保安院は廃止され、その後継として規制委・規制庁は発足した。しかし、規制委・規制庁は、公開の場において、「前任者」である保安院時代の科学的判断者である学者・有識者の見解を聴いていない。
これでは、当時の科学的判断との整合関係が我々一般国民にも全くわからないままである。既設原発の存否を判定するのだから、それらの当初の許可時点における科学的判断者たちを公開の場で一同に会させ、旧保安院時代の判断と、現規制委・規制庁の判断を比較衡量できるようにすべきだ。
そうでないと、逆に規制委・規制庁自身が、いつまでも"原発活断層"を巡って悪魔の証明を求められ続けることになりかねない。