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女の子はアインシュタインなんか知らなくていい?

担当している「心理女性学」の授業を終えて部屋に帰ろうとした私を一人の学生が待ち受けて、スマホの画面でこの歌詞を見せてくれた時には目が点になりそうでした。

「アインシュタインよりディアナ・アグロン」という歌をご存知でしょうか?

"アインシュタインって どんな人だっけ? 聞いたことあるけど 本当はよく知らない""世の中のジョーシキ 何も知らなくても メイク上手ならいい""女の子は恋が仕事よ""ママになるまで子どもでいい""ニュースなんか興味ないし たいていのこと 誰かに助けてもらえばいい"・・・と、博多を拠点とするアイドルグループHKT48が歌っている歌です。

この春、担当している「心理女性学」の授業を終えて部屋に帰ろうとした私を一人の学生が待ち受けて、スマホの画面でこの歌詞を見せてくれた時には目が点になりそうでした。ノルウェーの教科書に、女の子は男の子に比べて能力が劣っているからという理由で、教科書に"女の子は解かなくてよい"というマークがつけられていたことを思い出してしまいました。でも、それは100年余り前の教科書の話です。

「女性の自立を妨げているのは男性社会ではない。女性自身の心の中に潜む男性への甘えと媚ではないか」と訴えて、ベティ・フリーダンが全国女性組織NOW(National Organization for Women)を立ち上げて、全米中に女性解放運動の旋風を巻き起こしたのが1966年、今から50年前でした。

1世紀・半世紀の時の流れが止まったかのような思いにとらわれている私に、先ほどの女子学生は「先生、私は勉強好きです」という言葉を残して立ち去っていきました。

翌週、授業の中で学生たちにこの歌のことを投げかけてみました。この歌詞をめぐって自由にグループ・ディスカッションをしてもらい、最後に発表しあうというアクティブ・ラーニング方式での授業を試みたのです。

ネット上では「女性差別だ」と炎上していましたが、さて私の「心理女性学」受講生たちの反応は・・・?

「確かにテストの点より瞳の大きさの方が気になったことがあった。高校生の時ですけれど」

「歌っているのは私たちと同世代。でも歌詞は中高生向けでは?」

「これって、作詞家の炎上商法ではないですか?」

そして、作詞家秋元康さんの歌詞に一つ一つ反論を始めたのです。

・難しいことは何も考えない 頭からっぽでいい

ふわり軽く 風船みたいに生きたいんだ

⇒からっぽな風船は しぼんじゃうよ

・女の子は 可愛くなきゃね 学生時代はおバカでいい

⇒可愛いことも大切。でも勉強も楽しい。学生時代おバカだと、一生おバカ

・アインシュタインより ディアナ・アグロン

⇒なぜ二人を比べるんだろう? ディアナ・アグロンのこと、わかってるの?

・どんなに勉強できても 愛されなきゃ意味がない

⇒どんなに愛されても 就職できなきゃ意味がない

・たいていのこと 誰かに助けてもらえばいい

⇒そんなふうに思っている人のこと、誰も助けてなんかくれない

・人は見た目が肝心 だってだって 内面はみえない 可愛いは正義よ

⇒たしかに可愛いは正義かも。でも内面からも人は輝ける

「皆さんの反論はわかった。だったら残った時間で替え歌でも作ってみて」と言ったところ、わずか10分足らずで次々と面白い替え歌ができあがりました。

その中から一つ、紹介してみましょう。

難しいこと いっぱい学ぼう

自分の頭で考えよう

地に足つけて

まっすぐ前向いて歩こう

女の子は可愛くなれる

学生時代は勉強しよう

今一番大事なことは そう

アインシュタインだ

瞳の大きさ以上にテストの点が気になる

どんなに勉強できるか それは自分次第

ペンをくるくる回して天才のように

ジョーシキわきまえて

メイク練習しつつ ニュースも見よう

みんなで助け合おう

女の子は恋も仕事もして

楽しく 自由に

アインシュタインにもなりたいし

ディアナ・アグロンにもなりたいし

もっともっと輝きたい

だってだって 可愛くなりたいもの

かつての女性解放運動の闘士たちを乗り越えた現代女子学生たちの軽やかな解放宣言ではないでしょうか。

100年、50年の時は、やはりしっかりと刻まれていたことを思いました。

(2016年5月9日「恵泉女学園大学 学長の部屋」より転載)

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