握力5キロ以下の世界を想像出来ますか?
ALSの発症から進行するにつれ、私の手に何が起きて行ったか書こうと思います。
例:車の運転
右手の握力低下により、鍵が回せなくなり左手で回す。左手の握力もなくなると、サイドブレーキがおろせず、四苦八苦しながら、両手で10分以上かけておろすこともしばしば。
例:お昼ごはん
基本、近くのコンビニで買うのだが、財布から小銭を取り出せなくなり、支払いは電子マネーに移行。箸やフォークを使えなくなり、ひねって封を切る事も出来ないため、引っぱって開けられるおにぎりとサンドイッチのローテになる。
例:銭湯
私は銭湯が大好きだが、進行に伴いロッカーの鍵を回せなくなる。風呂上がりの身体に靴下を履いたりする力がない。水分補給しようにも、缶もペットボトルも開けられる握力がない。
例:乾杯
空のグラスでも片手で持つのはかなりしんどい。ビールが入れば、両手で持ってもプルプル震える始末。こんな若僧がビールの栓も抜かないのは、さぞマナー知らずに見えただろうとと思う。
例:ハンコ
仕事の中でハンコを押す機会は何度もあったが、本当に骨が折れた。普通に押すと朱肉が全くうつらず、力を入れると滑ってハンコが横に倒れてしまう。何とも難儀。
このようにALSの診断から、公表するまでの間、悶々としていました。昨日出来たことが今日出来るとは限らない。それがALSです。
しかし、それを仕事の言い訳にする訳には行きません。騙し騙しやってましたが、粗相につながる可能性があまりに多くなり、公表する事にします。公表して、気持ち的にはかなり楽になりました。
公表から約1年。たとえ5キロでもいいから、握力が戻って欲しいです。
恩田聖敬
(2016年2月17日「片道切符社長のその後の目的地は?ALSと共に生きる恩田聖敬のブログ」より転載)