なぜ楽園フィジーでは女性の管理職率が5割を超えるのか?

フィジーの女性管理職率は51%で世界第4位(125カ国中)です。

フィジーの女性管理職率は51%世界第4位(125カ国中)です(※1)。

フィジーは伝統的に父系社会であり、男尊女卑も残っているにもかかわらず。女性の管理職が多くて有名な母系社会のフィリピンですら、48%で世界第5位なのに。

私が勤務するフィジーの会社(語学学校)はどうか?

フィジー人の管理職は合計10名いますが、うち8名は女性です。女性の管理職率は、なんと80%ということになります。

私が勤める語学学校にて。真ん中が校長、両端二名が教頭。逆に男性にも頑張って欲しいところ...

彼女たちに「フィジーはなぜ女性の管理職が多いのか」を尋ねてみると、

「男がだらしないから」

「女のほうが責任感があるから」

「家事や育児を安心して任せられる家族が家にいつもいてくれるから」

等々。

フィジー人は原則、テキトーですが、男性のほうがよりテキトーです。

「○○さんが会社をクビになった」という話をたまに耳にしますが、ほとんどが男性です。私たちの会社でも、新スタッフの採用面接をすることがありますが、テキトーではなさそうな男性を見つけるのに非常に苦労しています。女性の方が大学進学率も高く、勤勉な傾向があります(※2)。

一方、日本の女性管理職率は11%112位(125カ国中)。

最下位グループを構成するイスラム諸国に埋もれてしまっています。

日本の成長戦略の中で女性の活用は非常に重要であり、「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上にする」との目標が掲げられています。しかし、達成は厳しいでしょう。

その大きな理由の1つは、「男性は仕事、女性は家事」という性別による役割分担の意識が社会全体に根強く残っているからだと言われています。

厚生労働省の発表(今年6月)によると、2014年度の育児休業取得率は、女性が86.6%なのに対して、男性はたったの2.30%...。政府は男性の育休取得率を2020年までに13%にする目標を掲げていますが、これもかなり厳しそうです。

国際基督教大学客員教授の八代尚宏さんはこういいます。

ワーク・ライフ・バランスの必要性が、長年、主張されているにもかかわらず、一向に実現しないのは、それが「男性の長時間労働と女性の就業率の低さ」という形で、「家族単位」ではすでに実現しているためだ。これを個人単位に改革するためには、女性ではなく男性の働き方を抜本的に変える必要がある。

http://diamond.jp/articles/-/58617

また、最近は「男性学」という学問を耳にするようになりました。ウーマン・リブの男性版「メンズ・リブ」運動から発生した「男性が男性であるがゆえに抱える問題」を研究するジェンダー論です。

その第一人者であり、武蔵大学社会学部助教の田中俊之さんはこういいます。

日本では、"男性である"ことと、"働く"ということとの結びつきが強すぎるんです。(中略)一般的には組織階層の上へ行くほど、働き方の見直しやワークライフバランスに強い拒否反応を示す世代の男性が多いのも事実です。(中略)僕は、男性がそういう偏狭なフレームワークから抜け出し、お互いの多様性をより認めあうきっかけづくりとして、男性学の発想を広めていきたい。

https://jinjibu.jp/article/detl/keyperson/1061/1/

フィジーで「テキトーではない」男性を採用することはなかなか難しいのですが、ただ、ゲイの方は就職に強いんです。飲食店やアパレル・ショップ、美容室、ホテルなど、いろんなところでゲイの方が働いているのをよく見かけます。この原稿を書いているレストランでも、店員3人中、2人は女性で1人はゲイの方です。

宗教的には同性愛者に寛容ではないフィジーですが、いったいなぜ?

執筆中、気さくに何度も話しかけてきてくれるゲイのウェイターさん

フィジーのHRセミナーに参加した際に出会った経営者や人事の方によると、「テキトーすぎるフィジーの一般男性と比べて、ゲイの方はオシャレで清潔感があり、お客さんへの細やかな気遣いができる傾向がある」と。実際に、お客さんからの評判も良く、成果をあげているため、ゲイの方を雇用したい企業は増えているそうです。

フィジーは保守的な国ですが、世界で2番目に憲法で性的指向を理由とする差別を明示的に禁止するなど、少しずつ前に進んでいます。

一方、日本はどうでしょうか?

年に一度は日本に一時帰国をしていますが、ゲイの方がそれとわかる容姿やふるまいで働いているのを見かけることはフィジーと比べると、圧倒的に少ないです。

ゲイの方の割合はフィジーと日本でそんなに大きな違いはないはずですので、やはり日本ではバレないように隠す必要性があるのでしょう。

今年4月、日本初となるLGBT就活生に特化した情報サイト「LGBT就活」をリリースした特定非営利活動法人ReBitによるとこうです。

2016年3月卒の就活生は43万人を超えるといわれており、国内人口の約7.6%といわれるLGBTの新卒就活生は3万人以上と想定できます。しかし現状では、「履歴書等、男女欄どっちに丸をつけていいかわからず、就活のスタート地点にすら立てない」「職場に理解がないのでは...と思うため、カミングアウトすることが不安」「就職面接でカミングアウトしたら帰れと言われた」など、求職時にセクシュアリティに由来した困難を感じるといいます。

アメリカの調査によると、カミングアウトしたほうが、生産性が約15%もあがるそうですが...。

「男は一家の大黒柱にならなきゃいけない」

「LGBTであることは隠さなきゃいけない」

そういう古びた制約まみれの価値観から日本社会が早期に脱却できることを願います。

それは企業にとっても、過労死の訴訟リスクを下げ、約6兆円と推計される日本のLGBT市場を活かすためにもなるはずです。

まずはみなさんが有給休暇を消化することから始めてみませんか? ご存知のとおり、日本の有給消化率は世界最低ランクです。みなさんが消化すれば、周りの人たちも消化しやすくなるはずです。

※1: 世界経済フォーラム「The Global Gender Gap Report 2014」より。

1位はジャマイカ(59%)、2位はコロンビア(53%)、3位はレソト(52%)です。

※2: 世界経済フォーラム「The Global Gender Gap Report 2014」より。

フィジーの大学進学率(職業専門学校を含む)は、男性15%、女性18%です。日本は男性65%、女性58%。

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