高浜原発、再稼働差し止めの仮処分 樋口英明裁判長「新規制基準は緩やか過ぎ」

関西電力高浜原子力発電所3、4号機について、福井地裁の樋口英明裁判長は再稼働を差し止める仮処分決定を出した。仮処分の取り消しなどがない限り、再稼働はできない。
時事通信社

関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県高浜町)について、福井地裁の樋口英明裁判長(62)は4月14日、再稼働を差し止める仮処分決定を出した。両機が原子力規制委員会が策定した新規制基準に適合しても、「安全性は確保できない」という。

仮処分で原発の運転を禁止する決定は初めて。仮処分決定はただちに法的効力が発生するため、今後の司法手続きで仮処分の取り消しや執行停止がない限り、再稼働はできない。NHKニュースなどが報じた。

決定では「10年足らずの間に各地の原発で5回にわたって想定を超える地震が起きたのに、高浜原発では起きないというのは楽観的な見通しに過ぎない」と指摘しました。

そのうえで、原子力規制委員会の新しい規制基準について、「深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な基準にすべきだが新しい規制基準は緩やか過ぎ、適合しても原発の安全性は確保されていない。規制基準は合理性を欠く」と指摘しました。

高浜原発 再稼働認めない仮処分決定 NHKニュースより 2015/04/14 14:04)

高浜原発3、4号機を巡っては、安全対策は不十分として周辺住民9人で構成する原告団が2014年12月、再稼働差し止めの仮処分を申し立て、「重大事故が起きれば、生存権を基礎とする住民らの人格権が侵害される」と訴えていた。

これに対して関電側は、「地震や津波などに対する安全対策を十分に行っている」と反論。事故が起きても放射性物質の流出は確実に防止できるなどとして、却下を求めていた。

高浜原発3、4号機は原子力規制委員会が2月、政府が「世界で最も厳しい」と強調する原子力規制委の審査に合格。関電は2015年11月の再稼働を想定し、地元同意の手続きに入っていた

■関電は、樋口裁判長の「忌避」申し立てをしていた

樋口裁判長は2014年5月、関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転をめぐる訴訟で、差し止めを命じる判決を出している。その際「豊かな国土とそこに根を下ろした国民の生活を取り戻せなくなることが国富の喪失だ」とした。しかし、関電と住民側の双方が控訴して裁判は確定せず、いまだ名古屋高裁金沢支部で審理中。法律上は再稼働できる状態だ。

そのため住民側は、高浜原発について、より法的な即効力がある仮処分の手続きをとっていた。関電側は「争点が多岐にわたり、専門性が高い。仮処分の判断が多方面に影響を及ぼす事案である」として、慎重な審理を求めていたが、樋口裁判長は2015年3月11日に開かれた仮処分申し立ての第2回審尋で、「判断する機は熟した。決定を出す」として審理を終えた。

このため関電は翌12日、「議論を尽くさず、決定を出そうとしたことは不当」として、樋口裁判長ら3人の裁判官の交代を求める忌避を申し立てた。忌避とは、裁判の公正を妨げる事情があるときに、裁判官の変更を求める手続き。2015年4月14日付の中日新聞によると、忌避申し立ては名古屋高裁金沢支部に棄却されている。

なお、樋口英明裁判長は2015年4月1日付で名古屋家裁判事に異動した。しかし、名古屋高裁が福井地裁判事職務代行の辞令を発令したため、今回の決定を言い渡すことができた。今回の仮処分申請の代理人で「脱原発弁護団全国連絡会」の共同代表を務める海渡雄一弁護士は2月、ロイターの取材に対し、裁判官にとっては「自分の判断が、次の原発事故を防ぐかどうかの決定的な判断になる」という状況になり、再稼働容認には慎重になりかねないとの見方を示していた

■関電は不服申立てへ

関電は今回の決定を受け、コメントを発表。福井地裁に対し、「合理的な理由なく審理を終結した」として批判し、「誠に遺憾で、到底承服できるものではない。速やかに不服申立ての手続きを行う」としている。

脱原発弁護団全国連絡会の内山成樹弁護士によると、今後の関電の動きについては、保全異議や執行停止の申し立てなどが考えられるとされるが、「保全異議の決定だけでもおそらく1年はかかる。無理やり原発を動かせば、裁判所は関電に億単位の間接強制金を課すでしょう。そんなことをしたら社長が株主から責任を追及されかねない」という

また、今回の決定について菅義偉官房長官は14日午後の記者会見で、「原子力規制委員会の判断を尊重して再稼働を進める方針に変わりはない。粛々と進める」と明言。その上で「仮処分の段階であり、事業者の対応を注視していく」と述べ、関電などの動きを見守る考えを示した。

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