「番組炎上の舞台裏と成宮くんアウティング」の真意とは LGBT界のヒール役、サムソン高橋さんが語る

「自分はゲイだってことを恥ずかしいと思ったことが今までない人間ですから『いいじゃん、別に』とか思うんだよね」

サムソン高橋さんと言えば知る人ぞ知るLGBT界のヒール役。

TBS『クレイジージャーニー』で海外のハッテン場を紹介したその姿を目にした人も多いだろう。

ゲイ当事者としての彼の発言は、世間を席巻するLGBTブームとは一線を画している。それはセックスも含めた上品とは言えない赤裸々なゲイ事情を反映したものだ。

またTwitterにおける露悪的な発言もありLGBTムーブメントに関わる者の中にはサムソンさんに批判的な者も少なくない。

ことに昨年11月24日にBSスカパーで放送されたクイズバラエティ番組『ダラケ!』に出演した際には、企画の中にゲイを笑い者にするようなものがあったことや、オンエア直後のタイミングで話題となった俳優・成宮寛貴さんについてのアウティングともとれる発言がサムソンさんにあったためにTwitterはちょっとした炎上状態に。

一般のゲイが、あまり表に出したくない情報をあえて発信するサムソンさんの意図はどこにあるのか?

サムソン高橋さん

■人それぞれだった炎上のポイント

――今日はLGBTムーブメント的なものとサムソンさん的なもの、というか土着ゲイ的なものの対立と超克、そして最近、プチ炎上している件のエクスキューズなど伺えればと思うのですが。

炎上してんのかしら? あまり直接、言ってくる人は少ないからぜんぜん分からないんですよね。

――『ダラケ!』について個人的な感想を言わせていただくと、他のところは別になんてこともないと思ったんですけど、やっぱりあの「アナルを見てホモを当てる」っていう企画は本当に腹立たしかったというか呆れました。

あれはほんとにひどいね。でも人によって怒りのポイントがすごい違うの。新宿2丁目以外のゲイタウンの名前を上げたのが一番頭に来たっていう人もいて。

「あの街は2丁目に行きにくい人が行ってるんだから、名前を出すな」とかって怒られて。で、他には、芸能人をアウティングするような真似はやめろっていう人もいて。ああ、いろいろと問題があったんだねっていう。

インタビューに答えるサムソン高橋さん

――まあ、成宮くんの件については、実際にはもうとっくの昔に、女性誌でアウティングはされてたわけですけどね。

今更でしょって。それが、まさかあんな神がかり的なタイミングでっていう。

――イニシャルトーク的なことをやってくれって言われた時にサムソンさんの中で、あれは出せるって判断したわけですよね。

ていうかね、まず言ったのが、「ホモだからって知らないですそんなこと」って。一般的な女性誌とかに載ってる、たとえば成宮くんくらいしか知らないですって言ったら、成宮くんが採用されたわけ。

――ああ、そうなんだ、みんな知ってるでしょっていう前提で。でも、微妙ですよね。あれがいけないっていうんだったら、今だって成宮くん本人はゲイであるってことをはっきりとカミングアウトはしてないわけだから。

してるわけじゃないんですよね。だから私にとって成宮くんは三島由紀夫みたいな存在で。三島由紀夫とか橋本治みたいな存在ですから。

――共演者の方がゲイに人気のバッグが「ホモランドセル」と呼ばれてると紹介したことも批判されました。

それね! 言われて「あ、あれ怒るんだ!」ってびっくりしちゃって。というのも俺、ホモランドセル自体を知らなくて。へえそうなんだって、普通に感心してたの。

「あんな情報出しても、ノンケの人にとっても使ってるゲイにとっても全然メリットがない、ウィンウィンじゃなくてルーズルーズじゃない」って言われたんだけど。自分はゲイだってことを恥ずかしいと思ったことが今までない人間ですから「いいじゃん、別に」とか思うんだよね。

「ゲイにはこれがトレンドなんだよノンケのみんな、これがゲイのおしゃれ感覚だよ!」って感じで。逆に流行ればいいのにとか思ってさあ。

バックに見える「女子力の高い」壁紙と襖は気に入った材を取り寄せて本人が貼り替えたもの。

――それは90年代のゲイブームの時のゲイセンシティビティみたいな感じで、ゲイってこんなにおしゃれとか、ゲイカルチャーの良さを発信するみたいな方向性の......。

そう、これがゲイカルチャーじゃん、ぜんぜん恥ずかしくないよって、俺、思ったんだけど。私はゲイが恥ずかしいっていうのは1ミリもないんだけど、自分が恥ずかしいっていう人間だからさ。

ただまあ、あの『ダラケ!』に関してはねえ、最初に依頼が来て、ディレクターと話したら「ノンケ」(異性愛者)って言葉すら知らなかったんですよ。それで打ち合わせで、例の成宮くんの話をした「ゲイ業界裏話」と「肛門当てクイズ」の企画が出るから、さすがにそれはいかがなものか、大丈夫かなと思って......。

だから「共演者のおふたりがやるんだったら乗りますけど、絶対、これやったら叩かれますよ」みたいなことは言ったの。そしたら共演者のふたりも同じこと言ってて、なし崩し的にああなっちゃったっていう。

■全く情報がないよりは、笑われても話題になるほうがいい

ただ、まあ、笑いものにされて怒る基準ていうのが私はゆるいんですよ。昔からゲイがお笑いとかでピックアップされて笑われたりすることがあるじゃないですか。あれ、むしろ嬉しい感じなの。

それは80年代の鳥取で生まれ育ったゲイとして、全く情報がないよりもマシと思ってるから。

当時、とんねるずとかダウンタウンがよくゲイをネタにしてたんだけど、嫌とは思わずに、「ああもっと取り上げて、笑って!」みたいな感じ。カジュアルにホモがテレビの画面に現れて嬉しいって。

だからLGBTムーブメントの人たちがガンガン怒ることに対しても、私は基本さほどでもない。

――ただ、バラエティ番組の企画によっては、今回炎上したように、ゲイはみんな淫乱みたいな捉えられ方をされちゃう可能性があるじゃないですか。

まあ、その片棒を私、かついでますけどね。

――でも逆に、ノンケだって淫乱だよねっていう考えが一方である気もするんですよね。

そうなのよ。男はみんな基本的にやりたがりで、それがゲイになると両方ともやりたがりっていうことになっちゃうから女というストッパーがいないと、そうなっちゃうって話なんですけどね。

■自分にはハッテン場しかなかった

――サムソンさんは『ダラケ!』以前にも、『クレイジージャーニー』で海外のハッテン場を紹介してこれも物議を醸しました。以前、ハフィントンポストで大塚隆史さんのインタビューを掲載した時に、その件にも軽く触れていて。そしたらサムソンさんがすぐに「アタシのこと叩いてるわね」みたいなツイートをしてたんですよ(笑)。

あ、そうなの? なんとなくほんのり記憶あるけど。

――あれ、大塚さんは、必ずしもサムソンさんを叩いてないと思うんですよ。異性愛者の側がゲイの性的に突出した部分だけ強調するのは問題だし、自分の中に「ノンケの倫理観」を内面化してるゲイは、ハッテン場みたいな話が出ると動揺するかもしれませんね、みたいな。

いいインタビューだから読まれればいいなと思って。「ああ、叩かれてる!」とかそういう形で引用ツイートした記憶がありますよ。

ホームウェアだというフォトジェニックな衣装で待ち構えていてくれたサムソンさん。これもサービス精神。

――大塚さんのインタビューでその話が出たのは、LGBTの可視化を進める時に、都合のいい情報だけを出していくってことが出来るのか、と。あんまり出したくない情報も出て行っちゃうかもしれないし、そもそもネットがあるから悪意を持って調べようと思えばいろんな情報にアクセスできちゃうわけで。だから『クレイジージャーニー』みたいなものを叩く意味はあまりないんじゃないかなと個人的には思ってるんですけど。ハッテン場の情報を出すことについて、サムソンさんはご自分でどんなふうに整理されてるんですか。

とりあえず、日本のハッテン場にはあんまり触れないようにしてるし。出しても分かる人にしか分からないようにしようとは思ってますが。

『クレイジージャーニー』の話が来た時も、日本ではなんかありますかって聞かれて、さんざんそれは無理だって断って。で、海外なら別にいいかな、バンコクの有名なハッテン場だったら出しても恥ずかしくない施設だからいいかなって。

――ハッテンもゲイカルチャーの1つとして僕はいいなと思っていて。ノンケだってもしハッテン場みたいのがあったら行くくせにとも思うんですけど。

そうね、むしろ、自分にはハッテン場しかなかったんですよ。若い頃からゲイ雑誌の文通欄とかゲイバーで挫折してきたので、自分に残されたのはハッテン場しかなかったんです。

――ハッテン場でしか掬い上げられないゲイもいる、と。LGBTライツ的な運動では掬い上げられないような......。

そうそう。で、LGBTのキレイなこと言ってる人たちだってハッテン場によく行ってるしね。

――こないだジョージ・マイケルが亡くなった時にいろいろ昔の発言がツイートされてたんですよ。彼は公衆トイレでハッテンしてて逮捕された経験があるんだけど「俺は別に今までのセックスを変えるつもりもないし、これからも同じようなことをやる、ゲイセックスはいいもんだ」とか言ってたのがすごくいいなと思って。僕も個人的にはハッテン場は嫌いじゃなくて、ハッテン場独自の楽しさってあるじゃないですか。あれをノンケに伝えられるもんなら伝えられればいいなと思うんですけどね。グロテスクなものとしてじゃなくて、こんなに楽しいよみたいな。

私が基本的に言いたいのは、ハッテン場はノンケさんにとっては風俗であるってことと、そこに行ってる人は自分の意思で行ってるんだから自由恋愛みたいなもんなんだよってこと。自由恋愛出来る風俗っていったらそれは最高じゃないっていう。ハッテン場って風俗プラス自由恋愛なんですよ。

インタビューはサムソンさんの自宅で行われた。コーナーのシェルフもDIYで一から作り塗装して仕上げたもの。かなり本格的で丁寧な仕事

■叩かれて、番組側も是正して、相互理解が進めばいい

――テレビ局側の反応っていうのはどうでした?

『クレージージャーニー』も『ダラケ!』も反響がすごかったらしいの。視聴率じゃなくて、反響がね。まあ、叩かれたりすることがすごく多かったらしいんですね。

で、私は見た人が苦情を言うのはぜんぜんありだと思ってて。ノンケっていう言葉を知らないレベルの人が作ってる番組で、あたくしもそれを矯正することは出来なかったんで、そこはアタシの至らないところですけど。それを見て視聴者が怒って、番組を作ってる人がちょっと反省したりするってことはいいことなんじゃないの。

友人で某そこそこ有名なオネエタレントから「面白かったけど、いろんな人から叩かれて大変でしょ」って言われたんだけど、叩くのは全然OKなんですよ。そりゃ見て怒ったんだから叩いてね、番組作った人も是正してね、そうやって相互理解を深めていけばいいんじゃないって思うんですあたしはね。まあブルボンヌですけどね、そう言ったの。で、ブルボンヌは「アタシもふざけたいんだけど有名になっちゃったからもうふざけられないの~」とか言ってて......。エラそうなこと言いやがって!

実際に話をしてみるとサムソンさんはTwitterでの露悪的なキャラとは全く違う。むしろ優しく繊細な印象。一人称が私だったり、アタシだったり、俺だったりするのも、表現内容への自然なこだわりのようにも思え、高感度な人という感じを受けた。ヒール的な発言は優しさから来る照れと、サービス精神なのだろう。後編では、そんなサムソンさんがLGBTムーブメントについて思うこと、これからの方向性について聞いた。

サムソン高橋(さむそん・たかはし)

ゲイライター。ゲイ雑誌『SAMSON』編集部を経てフリーに。『G-men』などのゲイ雑誌で連載。LGBTメディアサイト「Letibee LIFE」でも毒のあるコラムで人気を博す。著書に『世界一周ホモのたび』シリーズ(ぶんか社)などがある。

(聞き手・文:宇田川しい)

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