裁判員制度「市民からの提言2018」<提言③>裁判員裁判及びその控訴審・上告審の実施日程を各地方裁判所の窓口及びインターネットで公表すること

裁判員制度は5月21日でスタートから丸9年となり、制度開始10年目を迎えます。

裁判員制度は5月21日でスタートから丸9年となり、制度開始10年目を迎えます。裁判員ネットでは、これまでに345人の市民モニターとともに650件の裁判員裁判モニタリングを実施し、裁判員経験者からのヒアリングも実施し、裁判員裁判の現場の声を集める活動を行ってきました。この「市民からの提言」は、裁判員制度の現場を見た市民からの提案です。裁判制度の現状と課題を整理し、具体的に変えるべきと考える点をまとめました。今回は、提言③を紹介します。

<提言③>

裁判員裁判及びその控訴審・上告審の実施日程を各地方裁判所の窓口及びインターネットで公表すること

1 現状と課題

(1)裁判所による裁判員裁判実施日程のインターネット公表

制度開始当初から裁判員ネットの事務局には「裁判員裁判の傍聴がしたいので日程を教えてほしい」、「裁判所のホームページ上に裁判の日程を公表してほしい」といった問い合わせが寄せられており、各地方検察庁のホームページや新聞記事などから裁判員ネット独自に「裁判員裁判最新日程カレンダー」を作成してきました。そして、裁判員ネットは、「裁判員裁判の実施日程を事前に各地方裁判所の窓口及びインターネットで公表すること」を提言してきました 。

2016年5月から各地の地方裁判所のホームページにおいて裁判員裁判の開廷情報の掲載が開始されました。現在、各地方裁判所で毎月1回程度更新され、市民が事前に裁判員裁判の実施日程を知ることができるようになりました。この裁判所の取り組みは高く評価できるものであり、今後も継続すべきものだと考えています。

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(2)控訴・上告の有無と控訴審・上告審の実施日程

最高裁判所の「裁判員裁判の実施状況について(制度施行~平成30年2月末)」によると、第一審終局人員が10,915人であるのに対し、控訴人員は3,848人であり、36.0%の被告人が控訴を行っています 。

控訴審は、職業裁判官だけで行われ、裁判員は参加しません。控訴審については、現状では一部の裁判官が任意で情報を提供している以外は、裁判員経験者は自分が担当した事件が控訴されたかどうかがわかりません。裁判員経験者は、自分が裁判員として関与した事件であるにもかかわらず、その事件が控訴されたか否かということや控訴審、上告審の日程についての情報提供を受けていない状況です。

裁判員経験者は、自分が担当した事件のその後に対して強い関心があると考えられ、その関心に応えるために、控訴の有無等の情報について裁判所が裁判員経験者に個別に連絡することも考えられます。しかし、裁判員経験者の中には、判決言い渡し後は「事件に関わりたくない」という人もいるでしょうし、個別連絡の場合には裁判所の事務も繁雑になることが懸念されます。そこで、市民に対して広く情報を提供するという視点から、裁判員裁判の日程公表と同じように、裁判員裁判の控訴審、上告審に関する情報についても、各地方裁判所がホームページ上及び窓口で事前に公表すべきです。

2 市民からの声

裁判員経験者に対して行ったインタビューでは、「控訴審の有無や日程を知りたかった」という声を多く聞きました。そして「被告人の今後が気になる」「控訴した理由が知りたい」「裁判員裁判で重い責任を担ったのにもかかわらず、その事件の控訴の有無や控訴審の日程が全く伝えられないのはおかしい」などという意見も裁判員経験者の方々から聞きました。

裁判所が行った裁判員経験者意見交換会でも「一所懸命自分なりにやった裁判について、その後どうなったかという情報を開示というか、担当したものだけにでもいいので開示をしていただけないか」という声が寄せられています 。

控訴審の有無や日程を知りたかった

被告人の今後が気になる

控訴した理由が知りたい

裁判員裁判で重い責任を担ったのにもかかわらず、その事件の控訴の有無や控訴審の日程が全く伝えられないのはおかしい

3 具体的な提案

掲載すべき情報は、裁判員裁判の実施日程及び控訴・上告の有無、控訴審・上告審の実施日程です。現在、各地方裁判所のホームページで行っている裁判員裁判の開廷情報を利用すれば、被告人や関係者のプライバシー保護の観点からも問題はありません。

裁判員裁判の開廷情報を裁判員裁判終了後も一定期間掲載して、そこに控訴・上告の有無及び控訴審・上告審の実施日程の情報を加えて、担当した裁判員経験者だけではなく広く市民が知ることができるようにすべきです。

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裁判員制度「市民からの提言2018」

1.市民の司法リテラシーの向上に関する提言

<提言①>無罪推定の原則、黙秘権の保障などの刑事裁判の理念を理解できるような法教育を行うこと

<提言②>無罪推定の原則、黙秘権の保障などの刑事裁判の理念を遵守するように、公開の法廷で、説示を行うこと

2.裁判所の情報提供に関する提言

<提言③>裁判員裁判及びその控訴審・上告審の実施日程を各地方裁判所の窓口及びインターネットで公表すること

<提言④>裁判員だけではなく、裁判員裁判を担当した裁判官も判決後の記者会見を行うこと

3.裁判員候補者に関する提言

<提言⑤>裁判員候補者であることの公表禁止を見直すこと

<提言⑥>裁判員候補者名簿掲載通知・呼出状の中に、裁判を傍聴できる旨を案内し、問い合わせ窓口を各地方裁判所に用意すること

<提言⑦>裁判員候補者のうち希望する人に「裁判員事前ガイダンス」を実施すること

<提言⑧>思想良心による辞退事由を明記して代替義務を設けること

4.裁判員・裁判員経験者に関する提言

<提言⑨>予備時間を設けることで審理日程を柔軟にして、訴訟進行においても裁判員の意見を反映させる余地をつくること

<提言⑩>裁判員の心のケアのために裁判員裁判を実施する各裁判所に臨床心理士等を配置すること

<提言⑪>守秘義務を緩和すること

5.裁判員制度をより公正なものにするための提言

<提言⑫>裁判員裁判の通訳に関して、資格制度を設けて一定の質を確保するとともに、複数の通訳が担当することで通訳の正確性を担保すること

<提言⑬>裁判員裁判の控訴審にも市民参加する「控訴審裁判員」の仕組みを導入すること

<提言⑭>市民の視点から裁判員制度を継続的に検証する組織を設置し、制度見直しを3年毎に行うこと