辺野古に基地を移すなら「辺野古基地設置法」の制定が必要 憲法学者・木村草太さんが主張する理由

「米軍基地の設置場所は内閣が勝手に決めていいと考える人もいると思いますが、それならば内閣が勝手に決めていいという法律を定めればいい」
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辺野古移設問題について憲法学者の木村草太さんに聞いた
(左)Jun Tsuboike/HuffPost (右)時事通信社

2018年末、インターネット上で沖縄にある米軍基地問題をめぐり、声を上げる動きが広がった。普天間飛行場移設に伴う辺野古新基地建設工事について、トランプ大統領に工事中断を求める署名はネット上で火がつき目標の10万筆を大きく超えている。憲法を通して見ると辺野古問題はどう映るのか。憲法学者で首都大学東京教授の木村草太氏が、12月20日放送のdTVチャンネルのネット番組「ハフトーク」で語った。

木村教授は元大阪市長の橋下徹さんとの著書「憲法問答」(徳間書店)などで、もし新たに辺野古に米軍基地を建設するならば、憲法に基づき「辺野古基地設置法」の制定、さらに基地を立地する自治体の住民投票が必要になるのではないかと主張している。

その理由は何か。まず問題の前提を整理する。

「沖縄県民や辺野古周辺の住民は日本全国からみると少数派です。軍事的な合理性を考えるなら、本当は、米軍基地は沖縄県外に移設してもよかったとしても、沖縄に基地を作ろうという声は受け入れられやすい。全国的に考えれば、自分たちの自治体周辺に基地負担が無く、安全保障の効果は享受できる、という状況を歓迎する人が多いからです。民主主義の下では、少数派である沖縄に不公平な負担が押し付けられやすい状況にあるということが前提になります」

「その上で考えないといけないのは、国が特定の県、自治体にだけ負担を押し付ける政策を進めていいのかという問題です。それでは公平な行政、公平な政治は実現できませんから、それにブレーキをかけるような装置が憲法に組み込まれています」

そもそも米軍基地を作るとはどういうことなのかを考えてみよう。日米地位協定では、日本の国内法が不適用となる事項が規定されているので、米軍基地があるところでは、自治体の自治権が制限される。

憲法92条は、「地方公共団体の運営」にかかわる事項は法律で定めるように求めており、自治体の自治権を制限するのは、当然、憲法92条の「地方公共団体の運営」に関わる問題にあたる。

米軍基地のような地方自治体の権限をかなり制限するようなものを新設する場合には、自治権をどこまで制限するのか、法律で定める必要があるという趣旨だ。

また、92条以外にも問題がある。立法事項について定めた41条だ。

「憲法41条は、国会が立法機関であることを定めていますが、何でもかんでも細かいことまで法律を作る必要があるわけではありません。国政の重要事項については、国会が法律によって定め、細かいことについては、内閣が決めてよいとされています」

「ただ、米軍基地をどこに作るのかは国政の重要事項のはずです。それなのに、現在は内閣だけで決めている。本来ならどこに米軍基地を作るのかは、国会で法律を作って決める必要があるのではないか。辺野古でいえば辺野古基地設置法のような法律を定めなければいけないのではないかというのが私の考えです」

さらに憲法95条に「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない」とある。

「一の」というのは「特定の」という意味だ。国が特定の自治体に対して不利益を課すような法律を安易に作らせないために定められた条文だ。

95条に基づけば、自治権をどのような範囲で制限するのかを定めた法律や、米軍基地の設置場所を定めた法律について、辺野古のある名護市はもちろんのこと、自治権を制限される沖縄県の住民投票も必要になるのではないか。

「米軍基地の設置場所は内閣が勝手に決めていいと考える人もいると思いますが、それならば内閣が勝手に決めていいという法律を定めればいい。その代わりに内閣がルーレットで決めた、ダーツで決めたと言っても文句が言えなくなります」

木村教授はこう強調した。

「(沖縄だけでなく)うちの自治体に米軍基地設置が決まったとしても、この手続きなら仕方ないと国会議員だけでなく住民も納得できる。それが憲法の要請する手続きです」

問題は「沖縄」にはない。沖縄に起きていることが、もし自分の地元で起きたら納得できるだろうか? これが大事な問いである。