PRESENTED BY 日本アイ・ビー・エム

「ビジョンを描くなら最低でも30年先の未来?」サステナブルな社会の実現のため、企業が持つべき視点とは

IBMが入山章栄教授、ポーラ社長の及川美紀さんら登壇のオンラインセミナーを開催。2022年、日本企業がとるべき次の戦略は?
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「“こうなったらいいね”という願望を掲げる時代は、もう終わりました」
日本IBMの大塚泰子さんは、Wayne Balta・ IBMチーフサステナビリティーオフィサーの言葉「The time for just goals is over.」を紹介した。

1971年から環境保護に関する企業ポリシーの公表を続ける日本IBMは、ハフポストと共にオンラインセミナー「サステナブルな社会の実現に向けた2022年・企業のToDo List」を開催。サステナブルな社会に向け、企業が今年やるべきことを探った。サステナビリティーに対する企業の理解がある程度進んだ今、次の手となる具体的な施策とは。

日本企業に不足する長期的経営が、ゴール達成のネックに

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IBMコンサルティング事業本部 戦略コンサルティング パートナー 大塚泰子さん
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大塚泰子さん(以下、大塚)「ビル・ゲイツ氏やイーロン・マスク氏が二酸化炭素回収技術のスタートアップに投資していたり、中国が砂漠一面の太陽光発電を導入したりしています。これはサステナビリティーだけでなくビジネスとしてのアプローチでもありますが、日本企業にはまだ“SDGsはきれいごと”の意識があり、具体的な施策につながっていない問題があります」

続いて、大塚さんは、日本企業の持つ課題感の変化を指摘。2021年はサステナビリティーに対する経営層の理解が求められる段階だったが、2022年は一歩進み、現場に携わるマネージャー層の理解、そして具体的な戦略が求められるフェーズとなった。

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2022年 企業のToDo List(日本IBM制作)

日本IBMがまとめた「2022年 企業のToDo List」が従来と異なるのは、ゴール設定。企業の長期戦略は通常10年程度であるが、それではサステナビリティーのゴールである「2050年カーボンニュートラル」といった時間軸に対応できない。登壇者の早稲田大学ビジネススクール教授・入山章栄さんは「10年では短すぎますよね。時間軸は非常に大事だと考えています」とコメント。

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早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄さん
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 入山章栄さん(以下、入山)「日本の経営は長期的といわれていますが、実は極めて短期的です。短期的になってしまう理由の一つは社長の任期が短いこと。グローバル企業の場合、結果さえ出せば社長の任期はめちゃくちゃ長くなります。任期が長いので、遠い未来のことも考えられるんです。

気候変動問題がいきなり来年解決することはないですよね。“20年、30年先に向かってみなで社会課題を解決しながら、会社としても収益を出していく”ことがグローバル企業の底流にあるもので、日本企業にとっては弱い部分と理解しています」

ダイバーシティもイノベーションも、センスメイキングが促進する 

大塚さんも「日本企業は長期での世界観を描くことが不得手なのではないか」と続けた。

ここで、ポーラ社長・及川美紀さんより、自社のサステナビリティーへの取り組みを紹介。ポーラでは、100周年を迎える2029年ビジョンを中期計画としている。

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ポーラ代表取締役社長 及川美紀さん

及川美紀さん(以下、及川)「サステナビリティーに取り組むとき、まず“私たちは将来どんな社会をつくっていくのだろう”と考えました。コロナ禍であったり分断や格差が叫ばれたりするなか、つながりにあふれた社会をつくりたいということで、2029年の中期ビジョンを私と社会の可能性を信じられる、つながりであふれる社会”と制定しました。

SDGsは、1人では絶対実現できない」という及川さん。サステナビリティーの推進にあたり、ポーラがもっとも注力したのは”個の力”をいかすダイバーシティ経営。

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ポーラのダイバーシティ経営。管理職女性比率や、男性育休などに力を入れている

及川「ダイバーシティにこだわる理由は、SDGs実現にもイノベーションが起こせる風土づくりにもダイバーシティ&インクルージョンが欠かせないからです。そしてまだまだ女性の力が発揮できていない環境があるので、ダイバーシティ&インクルージョン、ジェンダーの平等を一丁目一番地に置いています」

入山SDGsもサステナビリティーもダイバーシティも、“何のためにやるか”のセンスメイキング(腹落ち)が重要。日本の企業にはサステナビリティーに関しての腹落ちが不足していることが多いので、個人それぞれの理解を深める戦略はとても良いと思います」

「ダイバーシティはイノベーションのために不可欠」という入山さん。ダイバーシティ実現のためには「ダイバーシティ1点だけでなく全体で取り組むこと」「多様な人が言いたいことを言える心理的安全性」「ビジネスパーソンがマイノリティ経験を持つこと」も必要だとも提言した。

デジタルツインで、温室効果ガス削減をシミュレーション

現状では、2030年のSDGsゴール達成は難しい。企業及びビジネスパーソンがサステナビリティーへの理解を共有するだけでなく、実際の成果に結びつけるためにはテクノロジーの活用が必須。日本IBMではデジタルツイン(仮想環境でシミュレートを行い、将来を予測する技術)をサステナビリティー実現に向けて活用し、どのような選択でよりGHG(温室効果ガス)を削減できるかシミュレーションできるサービスを開発している。

セミナーでは、日本IBMのエッジコンピューティングCTO・坂本佳史さんが前述のサービス・Digital Twin technology for Sustainability Estimation(DTSE)を実演。一例として、製造量を変えずに、火力や風力などの熱源に変更した場合のCO2排出量と必要な電気代がすぐに算出される流れがプレゼンテーションされた。

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IBMの新ソリューションサービス・Digital Twin technology for Sustainability Estimation(DTSE)。CO2排出量ほか、様々なシミュレーションが可能に
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坂本佳史さん「ビジネス利用のために重視したポイントはシンプル・プラクティカル・簡単・速いことです。再生エネルギー導入が進まない要因の一つにコストへの懸念がありますが、DTSEを使えば電気代もCO2も減らせる方法や、もっとも電気を使う工程がどこなのかを発見することができるんです」 

非効率に見えるような、工程内に在庫をためておく方法でエネルギー消費が減るなどの実演には登壇者らも大きな関心を寄せた。

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入山費用対効果を全部計算できるという提案には、ものすごく価値があると思います」

及川「数字の見える化は私たちも非常に苦心しているところ。数字が可視化されることはもちろん、エネルギー問題に絡んで複雑化するものづくり環境が整理されるところも非常に面白いですね」

大塚「これまでのようにクオリティさえ担保すればいい状況ではなくなり、デジタルによるシミュレーションがより重要になってきています。デジタルツイン使って、その複雑さを少しでも解きほぐしていきたいと思っています」

サステナブルな社会実現のため、テクノロジーができること

これからのサステナブルな社会実現に向け、登壇者たちはテクノロジーに期待するところについて述べた。

及川ダイバーシティ&インクルージョンを実現するにも働き方のデザインは大事です。現在90%以上がオンラインに移行し、ペーパーレス化で紙14万枚の削減も達成しました。これからも事業としてどうあるべきかと考えた際に、より具体的な相談にのっていただくための課題発見ツールのようなテクノロジーに期待しています」

入山サステナブルな社会に向けての課題のほとんどは、テクノロジーが解決すべきことだと思っています。フードロスやアパレルの廃棄問題には、需給バランスをとるために精度の高い予測をする仕組みや、もちろんトレーサビリティが重要ですよね。今、世界中の若い世代は“どんな経緯で誰がつくっているのか”にとても敏感になっています」

大塚情報の見える化も需給バランスの分析もトレーサビリティも、すべてテクノロジーで解決できる領域です。例えば、日本は現在かなりのフードロスを出してしまう国といわれていますが、需給のマッチングも含めて対策を検討しているところです。

私たちはテクノロジーだけでなく、ビジョンを明確にすることの重要性も含めて社会にポジティブな影響を及ぼすGoodTechを日本企業のみなさまと共有しながら、サステナビリティーを進めていきたいと思っています」

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 2022年の企業のToDo List、入山さんは特に「長期視点」、及川さんは「現状把握」を重視。理想を並べるだけで済む段階ではない。サステナブルな社会の実現、また企業の未来のためにも、実践に進むことが必要ではないだろうか。

▼「サステナブルな社会の実現に向けた2022年・企業の「To Do List」」でのアーカイブはこちら

 

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 (撮影/小原聡太 取材・執筆/樋口かおる 編集/磯本美穂)