どうなる?同性パートナーシップ LGBTの議員たちが語る「最前線」

この先、何が起きるのか。
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Taichiro Yoshino

ゲイやトランスジェンダーであることを公表している性的少数者(LGBT)の地方議員が2017年7月、議員連盟を立ち上げた。同性パートナーの関係性を公的に認める「パートナーシップ制度」が2015年渋谷区・世田谷区を皮切りに各地で始まるなど、自治体が国に先駆けて議論をリードしている側面もある。

いま、どんな動きが起きているのか。議員連盟のメンバーに語ってもらった。

参加者

石川大我(43) 東京都・豊島区議

石坂わたる(41) 東京都・中野区議

細田智也(26) 埼玉県・入間市議

前田邦博(52) 東京都・文京区議

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前田邦博さん
Taichiro Yoshino

――前田さんは2017年7月、議員連盟の立ち上げ記者会見で、ゲイだと公表(カミングアウト)しました。その後の反応はどうでしたか?

前田 国内の新聞やテレビのほか、海外のメディアでも大きく取り上げられました。ネットで即時配信されたこともあって、会見直後から「見たよ」という反応がSNSでひっきりなしに来ました。ただ、身近な生活はほとんど変わっていないのが実情です。

支援者は、今まで19年間議員として活動してきた自分のことを知っているから、その評価は変わらなかった。文京区役所内の反応は「今までカミングアウトしなかったこと自体が驚いた」。地域の人は「応援しています」「勇気をもらいました」というポジティブなものが多かったですね。「文京区民として誇りに思います」という声があったのがうれしいことでした。

唯一、ネガティブな反応は、私が所属する議会会派に電話してきた比較的高齢の方で、要は「渋谷区や世田谷区のようにしてほしくない」という意見でしたが、よく聞いてみると非常にLGBT界隈の話に詳しかった。多分当事者で、自分が得られなかったものを他の人が得られるのはしゃくだという思いかも知れないし、あまり騒がれると自分の生活が脅かされるという恐怖から出た反応かも知れない。

政策面でも、積極的に当事者として語れるようになりました。文京区では、公営住宅に同性パートナーが入居できるよう検討が始まったんですが、よく「うちには当事者がいない」と言われがちなので、「あなたの前にいるのが当事者です」と厳然と言えるようになったのが大きい。

自分としては、すごく楽になれたのが大きい。いろんな発言やふるまいも、隠すというか、分からないように気を遣うことにエネルギーも使ってきた。自分のことを正直に語れるようになって、自分自身を取り戻せた。25歳からLGBTの解放運動に取り組んでいて、議員になってから少し距離があった感じはしたんですけど、元いたところに戻れたという安心感はあります。

――現在はどのような活動をしているのですか。

前田 議連の活動目標は、同性パートナーシップ制度の創設、差別禁止や差別解消に向けた取り組み、LGBTの生活環境上の課題解決で、そのための情報共有と交流に取り組んでいます。

昨年7月に開いた研修会には、全国から100人近くの参加者があった。名簿上は、オープンにしていない人も含めて200人を超えました。記者会見のときは120人程度だったので、ほぼ倍増しているわけです。

石川 議連に加わった方の中で、我々とつながった後にカミングアウトした方が2人いる。議連ができたことで、とても大きな力になっていると思います。

石坂 複数の「公にはできないんだけど、自分もLGBTの当事者である」という議員同士を、双方の了解を得た上で引き合わせたこともありました。引き合わせた後はお互いにオープンにできない地域柄の大変さを話したりもしていましたね。

前田 各地でこの問題に取り組んでいる人は、当事者でなくても少数派なので、ともすれば孤立してめげてしまう。そういう人たちを励まし、勇気づける意味が非常に大きい。一人じゃない、仲間がこれだけ各地で奮闘していることが分かれば、自分たちも頑張ろうかと思えます。

石川 そこは我々も改めて気づいたことですよね。議員だから一人一人が強い人たちだと思っていたんだけど、実はLGBTを扱うことで地域で白い目で見られている議員がいて、孤立している人同士のつながりが今回できたことはすごく大きな成果でしたよね。

懇親会の場で「地域で変な目で見られる」「役所の人に『そんなこと質問しない方がいいんじゃないですか』と言われて、辛かったんです」と言ってくる人もいた。ああ、こんなにつながりをつくることは大事なのかと。

石坂 渋谷区にパートナーシップ制度ができたということは知識として知っているけど、なぜ制度が必要なのか、実際にどんな生活上の困りごとがあるのかということを知らない方も多い。研修会で、メンタルヘルスの問題など、いろんなことを知って、自分が主張してきたことについての論拠が得られたという方もおられましたね。

――日本で当事者であることを公言している議員が初当選したのは2003年の上川あやさんですが、当時は立候補すること自体が大きなニュースでした。

石川 区役所近くの電柱に嫌がらせの貼り紙をされるなど、本人も大変な経験を語っておられます。

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石川大我さん
Taichiro Yoshino

――ゲイで初めてというのが2011年の石川さんと石坂さんですね。

石川 立候補したのは石坂さんが先で、2007年です。

石坂 僕はそのときは落選しています。

石川 0を1にする努力はすごく大変ですけど、1が2になり、2が3になると、加速度的に増えていく。どんどん仲間が増えていけば、よりカミングアウトもしやすくなるし、オープンにして選挙に出る人も増える。

そもそも議連を作ろうと思ったきっかけが、今年3月にトランスジェンダーの細田さんが当選したこと。我々も面識がなかったので、4月に我々と上川さんでお会いして食事した。そこで「せっかく人が増えたから議連みたいなものができたらいいよね」という話になって、5人で記者会見したんです。

細田 当事者の前例がいることは心強かったですね。でも皆さん、東京の23区だから。私は埼玉の山間部で空気が違うから、どうなるんだろうという若干の不安も正直ありました。

石川 選挙をやってみてどうでした?

細田 誹謗中傷は特になかったんですが、噂にはなっているんだけど、本人には直接言わない。当選してから「あー、あなたが細田さんね。知ってる知ってる」といろんなところで言われました。地方で人間関係が密だからこそ「こんな面白い話を無視するわけがない」と。

前田 選挙はそうなんですよね。噂になった方が勝ち、みたいなところがあって。

石川 僕も最初の選挙で、地元で悪口として言いふらされていたことがありました。それを聞いて「嫌だね」と思う人もいれば「いいんじゃない」と思って投票する人もいました。応援したいという人が出てきたというのは、時代の変化を感じますね。

――時代の変化ですか。

前田 今まではLGBTが住民として見えていなかったんです。当事者も地縁血縁から離れたくて、同志縁みたいなものでつながっていたけど、高齢化すると地域での支え合いも欠かせない。家を買うと引っ越しもできない。快適に暮らすために地域や住民も変えていかないといけないという意識の変化だと思いますね。

石川 いろんな偏見や差別が嫌だから、自分の地域を変えたいという人たちが動き出している。ここ2、3年ぐらいの大きな変化じゃないかな。

前田 特に高齢化は非常に大きい。自分は52歳ですけど、異性と結婚せずに当事者として生きていこうとし始めた最初の世代なので、そろそろ老後や介護を考え始める。元気なうちは地域コミュニティーに関係なく何とか普通に暮らしているけど、他者に依存せざるをえない状況になってくると、行政や地域のサポートが必要になってくる。

そういうとき、法的な制度や保証がないことで困るケースが出ているんですよね。葬儀や相続の問題、病院で面会できるか、医療情報が聞けるか。パートナーシップへの保証がないことの困難さに直面する世代が増えてきている。もともといたんだけど、泣き寝入りしなくて済むようになってきたのかもしれない。

石川 港区議会でも同性パートナーシップ制度を求める請願が可決されました。そういう動きが今年は増えていくんじゃないかと思っています。

前田 グローバル化の影響も大きいんじゃないか。外国人とのカップルの場合、外国人は居住資格がもらえない。不法滞在になってしまって裁判で争っている例もある。一方で海外では同性婚が認められる国や地域も増え、そういう国から来ている人も地域に住んでいる。民間企業で、海外の本社で制度として認められて、現地法人に適用される所もある。そういった動きが行政を動かしつつあるし、住民の意識も変えてきている。

――当事者の議員は少数派です。どのように自治体を動かすのですか?

前田 自治体のLGBT施策が動くには、首長と議会と職員、住民運動の4つのファクターがあって、そのうち2つ以上がそろわないとうまくいかないと思っています。渋谷区は議員のときに熱心だった長谷部健さんが区長になって、住民も動いていた。札幌は住民とトップ。世田谷区は区長と議会、住民。港区は住民だけだったのが議会も前向きになったので、今後動いていくでしょう。

石川 トップが言えば職員は動きますからね。議会が動くためには住民が求めているという裏付けが必要で、港区のようになってくれば、今後は議員提案で条例を制定することもできる。そうなると、逆に自分がやる、と首長が動き出す要素にもなる。

石坂 中野区は同性カップルの住み替え支援などのほか、災害時の緊急連絡先として同性パートナーが指定できます。LGBTと直接の関係はないですけど、23区で唯一、日曜日にHIVウィルスの即日検査をやっています。どちらかというと個別の困りごとに対応していこうという思いが区長にもあります。

前田 中野区は逆に行政サービスの実態の方が進んでいるんですね。

石坂 議会では、保守系会派も含めて発言はするけど、実際の取り組みの方向性や温度の差はありますね。ただ、中野区で保守的な発言をされている議員でも、中野区にLGBTがいっぱいいて、生存権を考えなきゃいけないというコンセンサスはある。私が議員になる前は同性愛者を批判するような発言をする議員もいましたけど、実際に私が議員になって一緒に仕事をしてみて、偏見はなくなってきたと思います。

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石坂わたるさん
Taichiro Yoshino

前田 議連の研修会で、各自治体でどんな施策をしているかという網羅的なアンケートを取ったんですね。自治体のサービスは生活全般にわたっているので、それぞれでLGBT関係のことができる。教育ならカリキュラムに入れたり、図書館に関連の本を置く、福祉窓口や人事担当職員の研修をやる、町づくりなら公衆トイレをLGBT対応にするとか。それぞれの自治体の自己評価もできるし、できていないところも分かる。

自治体が動くのは、結局、人なんです。熱意ある職員がどこにいるか。自治体自体も人口規模も地域性も政治的な状況も多様な中で、できることからやっていく。自治体の業務は生活全般を網羅していますから、その事例が積み重なっていくのも強みと思いますね。

石川 文科省が、各学校にLGBTの子が何人いるか、自治体を通じて集計したことがあるんですが、豊島区は各校長に電話で問い合わせただけで「調査したところゼロ」という回答をしたんですよ。委員会で「いや、電通の調査でこれだけいるでしょ?」って言ったら、教育長は「豊島区の報告と、全国の実態との間に乖離があると認識を持っている」と答弁してきた。つまり、電通などの調査は「小中学生の調査ではないでしょ」というスタンスなんです。行政、特に教育分野は「自分の目で確認していないから分かりません」「いるとはいえません」という認識だから、LGBT施策は進まないんです。

前田 本当に子どもに向き合っていれば分かるはずなんですよ。

石川 信頼に足る先生であれば、子どもたちは話すけど、やっぱり学校の先生が信頼されていない。

前田 LGBTのテーマだけじゃない、人に言えない困難さを抱えている人はいっぱいいると思うんだけど、教師が受け止める余裕がない。自分とは全然違う生活をしなきゃいけない人たちがいると気付き、思いを広げられるのは、先生に対する貴重な機会になりますよね。

――渋谷区から始まった同性パートナーシップ制度は6自治体に広がりました。今後、広がっていくでしょうか。

前田 パートナーシップ制度を導入した6自治体は北海道から沖縄まで点在しているので、その点を面にしていきたい。自治体は顔が見える関係で動かせるので、新しいことに比較的柔軟に取り組める。先進自治体が出てくると、「あそこがやっているのになぜうちはやらない」と前例踏襲主義の自治体職員も変わっていく。オセロゲームのように、黒だったところを白というか、レインボーに変えていきたい。議連は、その布石を打つためのネットワーク作りでもあると思っています。

石坂 最終的にはそうですけど、私に相談に来るLGBT当事者を見ていると、抑圧、貧困や心身の病気を抱えて困っているという話が数多く出てくるので、そちらの方がより緊急性が高いとも思いますね。

前田 貧困や病気の問題に比べ、優先順位は低いとされるが、「承認されていない」ため問題が生じることも大きいと思うので、パートナーシップが公認されれば、問題も解決されやすい。大企業は結婚圧力がすごいので、年を取れば取るほどいづらくなって、安定した職業からドロップアウトせざるを得ず、貧困に結びついてしまう。職場でオープンに語れて辞めずに済むようになれば、仕事を守るという貧困の予防にもつながりますね。

石川 パートナーシップ制度は一つの施策に留まらないパワーがあって、この制度を作ろうという旗を掲げたとき、当事者や支援者が実現に向かって一つになれる。港区でも請願が委員会で通ったとき、傍聴席は抱き合って泣いて喜んでいた。議連はそうした推進力、起爆剤になりたい。中野区の例も、議連で情報共有することで、LGBTの抱える問題が分かりやすくなると思います。

石坂 ただ、パートナーシップ制度で本当にいいのかという問題もある。登録しているから家族として認めるけど、登録していない人はまず登録して下さいということになって、これまで拡充してきた施策が適用されなくなってしまうかもしれません。

前田 制度を作ることが排除になっちゃうんだ。

石坂 中野区はもともと地方から出てきた人が住みやすい地域柄もあって、HIVや鬱、性的暴力やDV被害など、地方で悲惨な目に遭ったり、何とか縁を切ってきたりしてきたというLGBT当事者の方も少なくない。そんな地方をふくめた状況を、少しでも改善していくことも併せてやらなくちゃいけないとすごく感じています。

地方では「LGBTって何ですか」というレベルの場合も多いという話も聞くので、そこの子どもや若者がいかに肯定感を高められるようにしていくのか。LGBTが少なくとも存在していて、悪いことじゃないんだよと、しっかりとそれぞれの自治体の中で訴えていくことも必要だと思います。

前田 パートナーシップ条例で喜ぶ人、救われる人はたくさんいるけど、困る人っていないはずなんですよ。自民党の竹下亘・総務会長が宮中晩餐会の同性パートナー出席に「反対する」と発言しましたが、家制度や家族観に関わってくるので、反対した方が票が取れると読み違えている。しかし今は、同性パートナーも家族として認めようと、家族の概念が広がってきている時代。パートナーシップ制度ができたときも、家族の伝統的な価値観を守ろうとしている人たちから反対は起きなかった。そこをもっと認識した方がいいと思う。

――入間の現況はどうですか?

細田 当事者がいることで、地域の方も「あ、身近にLGBTがいるんだ。普通なんだ」と認識が変わったと思います。当事者がいるにもかかわらず、自分たちがまったく知らないのはまずいと、今年の議員研修でLGBTについて勉強することになりました。保守系会派でも若い方は「やりたい」と言って下さった。

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細田智也さん
Taichiro Yoshino

前田 政党間の違いというよりは世代間の違いですよね。

石川 豊島区議会でも非公式な勉強会を開催していて、今月2回目を予定しています。自民党の若手の議員はけっこう好意的な反応を示してくれるので、若手は変わってきていることに希望を持っています。

――パートナーシップ制度が出来た自治体でも、兵庫県宝塚市のように3年間で申請がゼロ組というところもある。声を上げづらいのでしょうか。

石坂 地域によっては、顔や名前を知られたくないということから、職員の前に行って手続きができない人も多いんだろうなと思います。

前田 申請することが事実上のカミングアウトになって、今のところ大きなメリットがない、むしろリスクになってしまうということかもしれない。

石川 宝塚にLGBTがゼロではない。制度があることで、宝塚市役所が出会えていないLGBTの当事者を勇気づけているし支えになっている。住民がLGBTを理解する上で、制度があることは役立っているので、申請ゼロだから意味がないということではない。

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Taichiro Yoshino

●今年は何が起きる?

――2018年に取り組んでいきたいことは。

石川 地域の当事者が声を上げ、議員がサポートして議会とつなげていく。当事者団体も、今までゲイ同士、レズビアン同士と比較的分かれていたのが、今は「レインボーとしまの会」「中野LGBTネットワーク にじいろ」など、地域ごとにLGBT全体で、アライも含めてつながるという形が広がりつつある。そうした団体と連携しながら地域を変えていくと面白いと思っています。地域が変わることで国も変わっていくのではないか。

前田 議員だけでは成し遂げられないので、港区のような請願の働きかけも応援していきたい。あとはそれぞれ、きめ細かく自治体の政策をチェックして、やれることをやっていく。事務事業評価という役所の仕事を評価する仕組みがあるんですけど、その中にLGBTについての評価項目を入れると、職員が自分の使命としてやるようになり、役所側も動かざるを得なくなる。そして役所間で競争して施策が向上することを期待しています。

石坂 HIV施策を拡充した中野区では、陽性者の多い区として日本エイズ学会と東京エイズウィークを誘致しましたし、その際に駅前に大きなバナーを掲げ、商店街のアーケードや区役所庁舎にレッドリボンの垂れ幕を下げるなど、地域活性化や理解の促進につながりました。住んでいる人にも「どこの地域にもLGBTっているんだよ。関心持っている人がいるよ」と発信していければ、苦しんでいる人が数多くいる地方の力にもなれると思う。

細田 私の場合は地域に団体もないので、まずは声を上げられる地域作りをしていきたいです。私が当事者でいることで、少しでもイメージを変えられるようになれば。

前田 国会議員の議連もできましたが、政策の面では行き詰まっている感じが否めない。地方から変えるしかないというのが自分にとっても切実な思いです。最前線で手応えを持って政策を変えていける実感があるから、基礎自治体にこだわっています。