Nintendo Directが新作一斉発表でネットをジャック。背景には岩田聡元社長の思いがあった。

「発言が思いもよらない歪んだ形で広まってしまう」という危惧から、Nintendo Directは生まれました。
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2月14日朝、日本のTwitterトレンドが任天堂関連のワードで埋め尽くされた。午前8時時点で、バレンタイン絡みの「#バレンタイン10連ガチャ」「ハッピーバレンタイン」を除くトップ10全てが、「マリオメーカー2」などの任天堂のゲーム関連のワードだったのだ。

任天堂が午前7時から放送した、Youtubeチャンネルの「Nintendo Direct」で『ゼルダの伝説 夢をみる島』などのNintendo Switch用の新作タイトルを10本以上も、一斉に発表したことが原因だった。

任天堂が記者会見などではなく、ネット上の動画で新作を発表したのはなぜなのだろうか。その背景にはSNSの発達で、任天堂が会見などで発表した情報がネット上で「思いもよらない歪んだ形で広まってしまう」ことへの任天堂の警戒感があった。

■2011年当時、岩田聡社長はこう語っていた。

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故・岩田聡元社長
Bloomberg via Getty Images

2011年10月28日、Nintendo Directを開始直後の決算発表会で、当時の岩田聡社長は以下のように述べていた

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私が、E3やニンテンドーカンファレンスなどの発表機会に加えて、決算説明時にプレゼンテーションを行い、それをその日の夜までにホームページを通じて動画とテキストで発信し、少し遅れて質疑応答をテキストで掲載するようになってかなりの時間が経ちます。

投資家のみなさまに情報をお届けするこの機会は、同時に、私たちのお客様に新しい情報を伝える機会でもありましたし、開示姿勢としてご評価いただいている手応えも感じてきました。

Twitterなどに代表されるソーシャルメディアの普及により、情報の伝わり方と速度が大きく変わり、この場での発言が思いもよらない歪んだ形で広まってしまうことも何度か経験しました。

そんな状況の中で、先月、ニンテンドー3DSカンファレンスを、国内のイベントとしては初めて、インターネットで生中継しましたが、平日の昼間にもかかわらず、大変多くの方にご覧いただき、大きな反響をいただきました。

特に、日本国内では、このカンファレンス後に、新しいソフトが発売されたわけではないのに、ニンテンドー3DSハードの販売が伸びるなど、お客様に適切な情報を直接お伝えできたことで、3DSプラットフォームに対する期待を高めていただくことができたという手応えがありました。

この結果をふまえて、私は、インターネットで直接多くのお客様にメッセージをお伝えできる時代が来ていて、その体験がソーシャルメディアを通じて直接ご覧にならなかった方々にも広がっていく可能性があること、そして、以前から考えていたとおり、「投資家のみなさまへの情報発信」と「お客様への製品に関する情報発信」は明確に分けるべきではないか、ということを確信するようになりました。

その結果生まれたのが、ちょうど1週間前に行った、Nintendo Directです。

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岩田社長は2015年、胆管腫瘍のため55歳で亡くなったが、そのDNAは今も任天堂に受け継がれている。

 

【訂正】2019/2/17 23:07
岩田社長の亡くなられた年は2015年の誤りでした。