日本初の「ゼロエネルギー」ホテルがオープン。これからは旅行も「サステナブル」が潮流に

2022年の調査では、日本の旅行者のうち73%が「サステナブルな旅は自分にとって重要である」と答え、サステナブルな宿泊施設の需要も高まっている。
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ITOMACHI HOTEL 0
©︎Yoshiro Masuda

コロナ禍での行動制限が緩和され、旅行に行く人が増えている。

社会全体が「SDGs」を意識することが当たり前になりつつある今、旅行業界でも「サステナブル・ツーリズム(持続可能な観光)」つまり、移動やホテル、飲食などを通じ、なるべく地球に負担をかけないように旅行をする動きが広がっている。

日本でもそのトレンドは広がっており、2022年の調査では、日本の旅行者のうち73%が「サステナブルな旅は自分にとって重要である」と答え、サステナブルな宿泊施設の需要も高まっている。

そんな中、ホテル運営において実質的に電力エネルギーを消費しない「ゼロエネルギー」ホテル、「ITOMACHI HOTEL 0(ゼロ)」が5月、愛媛県西条市に誕生した。

省エネと創エネ(再生可能エネルギーを創出)で年間の一次エネルギー収支ゼロを目指した建物に与えられる「ZEB認証」を得た日本初のホテルだ。

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ITOMACHI HOTEL 0
©︎Yoshiro Masuda

建築設計は世界的な建築家・隈研吾氏が担当。館内のインテリアには再生ガラスやジーンズの切れ端なども利用され、循環を意識しつつも「愛媛のたのしみ」を感じられる仕掛けが散りばめられているという。

また食事やアメニティなども地元の食材や工芸品を中心に厳選しているそうだ。

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食にもこだわっている
ITOMACHI HOTEL 0
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ITOMACHI HOTEL 0で提供されるアメニティなど
ITOMACHI HOTEL 0

環境省のZEBポータルによると、建物用途別のエネルギー消費量において、ホテルは飲食店に次いで床面積あたりの電力使用量が多いという。そのためITOMACHI HOTEL 0の「ゼロエネルギー」実現は、業界全体に新たな流れを生み出すきっかけとなりそうだ。

 

エネルギー消費が高いホテルをゼロエネルギー化するというチャレンジ

しかし、その実現の裏には苦労があった。

同ホテルの企画・運営を行う株式会社GOODTIMEの代表取締役・明山淳也さんは、「ホテルとしての非日常感を出しながら、ゼロエネルギーをしっかり具現化していく難しさがあった」と語る。電気に関しても、「LEDを使うのは当然ですが、使えるワット数なども限られている」と話し、省エネのための照明などの演出やデザインにはデザイナーと共に頭を悩ませたようだ。

一方、隈研吾氏が設計した石鎚山の山並みなどを意識した大屋根には、エネルギー創生のためのソーラーパネルを設置した。

他にも、ゼロエネルギー達成のためには空調などで高効率の設備を入れる必要があるため、一般的にコストがかかるという問題もあるという。

こうした費用面での調整について、同ホテルを含む西条市の新街区「いとまち」のまちづくりを手掛ける株式会社アドバンテックに勤める星川正幹さんは、ゼロエネルギー達成にかかる初期投資について精査を重ねることで、「投資回収に見合うものを、設計段階からみんなで苦労しながら実現できた」と話す。

 

見どころは西条を象徴する「うちぬき」

「ゼロエネルギー」で注目を集めている同ホテルだが、ホテルの顔となるのは広場エリアにある「うちぬき」だという。元々は隈研吾氏の初期段階の設計には含まれていなかったが、明山さんから提案したという。

うちぬきとは、愛媛県西条市に湧き出る自噴井のこと。西日本最高峰である石鎚山系から流れる水を、地下にパイプを打ち込んで吹き出したもので、西条には3000本以上あると言われている

うちぬきは江戸時代から受け継がれており、「西条は人間の営みと水とが共存し育まれてきた町。その象徴がうちぬきです」と明山さんは話す。

ITOMACHI HOTEL 0でも、「人間の技術と、太陽光のような自然の力が共存する新しいホテルの形」を目指している。

うちぬきからは水のせせらぎによる心地よい音が聞こえるといい、「これだけは写真だけでは伝わらない。音などを含めて西条の良さが凝縮されているので、それを現地で体感いただきたい」と自信に満ちた顔で語る。

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日本初のゼロエネルギーホテル「ITOMACHI HOTEL 0(ゼロ)」がオープンした
©︎Yoshiro Masuda

今後への期待

現在、ITOMACHI HOTEL 0はオープンして約1カ月。

現時点では、完成を楽しみにしていた地元の人々や家族の帰省での利用などが多いが、中には、海外から訪れたゲストもいるという。

「未来に向かって日本が観光立国化していく中で、こういった環境への取り組みを増やしていくこと、日本らしくテクノロジーを活用しながら自然と共存していくことは、重要だと思ってます」