前田裕二さん『メモの魔力』を、書店員の私はこう読んだ。店頭での売れ方は…

《本屋さんの「推し本」 水嶋書房・たかつきの場合》
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『メモの魔力』は秋元康さんが「ホリエモン(堀江貴文)以来の天才」と称した、前田裕二さんの2冊目となる著書です。

幻冬舎の天才編集者・箕輪厚介さんが1冊目の『人生の勝算』を作っていたとき、8歳で両親を亡くされて、路上でギターの弾き語りをしてお金を稼いでいたなど、前田さんの人生のエピソードを聞き、「すごい人だ!」と思ったそうですが、なかでも一番衝撃を受けたのがメモのとり方だったそうです。

すでにその時点で、前田さんのメモ本を作ろうと思ったほど濃い内容だったと言われています。

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前田裕二『メモの魔力』(幻冬舎)

 

まず、メモには2種類あって…

1つめは「記録」のため

2つめは「知的生産」のため

1つめの「記録」は、AIやロボットにも出来ること。

2つめの「知的生産」はアイデアを言語化することで、これこそが前田さんが「メモ」と呼んでいるものです。

前田さんのメモは見開きで使われます。

左ページに左脳的な事実、右ページに右脳的な発想を書きます。

左ページには具体的な、実際目にしたり、聞いたりした事実=ファクトを書き、右ページは2つに分けて、左側にファクトを抽象化したものを書き、さらに、その右に実際どうしたらいいかという転用を書きます。

インプットしたファクトをもとに、気づいたことを抽象化し、自分の行動に転用するのです。 このように書くと難しく感じられるかもしれませんが、前田さんはそのやり方を自身のノートを使って丁寧に説明されています。

この方法にもとづいて、巻末についている自分を知るための1000個の自己分析をしていきます。 ファクトは仕事や日常の中で気になったことを書くのですが、抽象化、そして転用まで進めることで思考が深まります。

実際やってみるとファクトまでは書けるものの、その先が難しく、止まってしまうのですが…

抽象化 → 「ということは」

転用 → 「他のことで生かすと」

など、実際にメモ魔を始めた人たちのメモの写真やヒントがSNSにアップされていて、それらを参考にしながら進めることができました。

読者がツイッターにアップしたメモに、前田さんご本人が返信やリツイートをすることでノウハウが拡散され、みんなもがんばってやっているから私も…、という一体感がさらなる読者を増やしていく様子がわかりました。

これは、前田さんが『メモの魔力』を読者に届けるための30のアイデアの1つですが、ほかにも…

・『メモの魔力』出版前に、人生の軸(人生という航海を進めるためのコンパス)を募集し、約1000人の方から寄せられた人生の軸を巻末に載せている。

・3月2日から31日まで『メモの魔力』にサインをするため、書店まわりをする様子や本に書いてないことを動画にしてYouTubeにアップ。

・24万人のフォロワーがいるホリエモンチャンネルにゲストとして登場、『メモの魔力』を宣伝。

・表紙のペンの色を増刷の度に変えているうえに、全色揃えて背表紙側からみるとペンの絵が完成するという、何冊も集めたくなるような装丁。

・朝の情報番組『スッキリ』にコメンテーターとして不定期レギュラー出演。

なかでも『人生が変わる1分間の深イイ話』出演の際には、放送前に「#深イイ前田」でみんなでコメントしてトレンド1位をとりましょう、と呼びかけ実際世界のトレンド1位になり、読者参加型の祭りになりました(私もツイッターにコメントをアップし、お祭り気分を味わった1人です)。

2018年12月の発売当初はビジネスマンが主な購入層でしたが、翌3月には大学生や高校生も店頭のコーナーに立って話題にする様子がみられ、現在は中高年男女のお客様層まで広がりを見せています。

『メモの魔力』の売れ方は過去のビジネス書とは一線を画していますが、その大きな理由1つは、前田さんが代表を務めるSHOWROOMの双方向型ビジネスを“本”に試みて、達成したことでみんなが感動したり、ワクワクしたことでしょう。

自分が何をしている時に一番楽しいのか、発見することができたのはこの本の「ファクト→抽象化→転用」のおかげでした。

ピアノ講師から書店員という人生の中で、わたしは自己分析をする機会を持ち得ませんでした。 具体的に何がしたいかわかれば、行動がわかり、自分がトップダウン型のモチベーションかボトムアップ型モチベーションかどちらの生き方に喜びを感じるのか把握し、行動を細分化していきます。

トップダウン型は重要度を価値観との関連で決定し、行動をゴールから逆算します。

一方、ボトムアップ型は重要度をワクワクするかどうかで決め、行動は目の前の面白そうなことに飛びつきます。

例でいうと西野亮廣さん、前田裕二さんはトップダウン型、ボトムアップ型は堀江貴文さん、箕輪厚介さんです。

この本には、自己分析1000問がキビシイ方のために、簡略化したライフチャートという自己分析フレームワークも用意されています(前田さんの、誰も見捨てない、まさに神対応…!)。

巻末に掲載された1000人の多種多様な人生の軸のうち、共感したものにアンダーラインを引くことで自分の人生の軸がわかりやすくなる、というヒントもあります。

AIが進化したら、時間が余る、そのとき何をしたらいいかわからないということがないように、自分を知っておくためにもメモは大切だということ。AIの発達によって店舗に人がいなくなったりすることで、人と人の関わり、接点がなくなりもっと人は寂しくなると前田さんは言っています。

また、音楽やエンタメなど、ついそのことばかり考えてしまう可処分精神の奪い合いがこの先のビジネスを制するという予測もされています。

ブレイディみかこさんの『ぼくはホワイトで、イエローでちょっとブルー』を読んでイギリスの中学生たちが学んでいるシチズンシップエデュケーション(市民としての資質、能力を育成するための教育)を知り、つい日本の教育と比べてしまいました。

自己分析をして、深く自分を掘り下げることで、前田さんがそうであったように、子どもたちの生きやすさも変わるのではないかと。

そして単なるビジネス書には終わらないこの本の終章には、お兄さんや先生に対する感謝と、前田さんが書くかどうか最後まで迷った、というコンプレックス体験が書かれています。 はじめて読んだとき、正直涙ぐんでしまいました。

人の能力の差はそんなに大きくない、やるか、やらないかだと思う。輝いている人は努力している、というのが1日3時間睡眠の前田さんからのメッセージです。

連載コラム:本屋さんの「推し本」

本屋さんが好き。

便利なネット書店もいいけれど、本がズラリと並ぶ、あの空間が大好き。

そんな人のために、本好きによる、本好きのための、連載をはじめました。

誰よりも本を熟知している本屋さんが、こっそり胸の内に温めている「コレ!」という一冊を紹介してもらう連載です。

あなたも「#推し本」「#推し本を言いたい」でオススメの本を教えてください。

推し本を紹介するコラムもお待ちしています!宛先:book@huffingtonpost.jp

今週紹介した本

前田裕二『メモの魔力』(幻冬舎)

今週の「本屋さん」

たかつきさん/水嶋書房

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撮影:橋本莉奈(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

(企画協力:ディスカヴァー・トゥエンティワン 編集:ハフポスト日本版)