ゴーン被告が語った「これは陰謀だ」 再逮捕の前日に録画した3つのメッセージ(動画あり)

「日本に対する私の愛情、日産に対する私の愛情は、私がいま経験している厳しい試練を経た後であっても、少しも変わることはありません」とも語りました
ゴーン氏のビデオより
ゴーン氏のビデオより
弁護団提供

日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告の弁護人、弘中惇一郎弁護士が4月9日に外国特派員協会で記者会見を行った。

スーツにノーネクタイの姿でカメラに向かったゴーン被告は「みなさんがこの動画を見ているということは、11日に予定していた記者会見を開けなかったということになります」と話し始め、三つのメッセージを語り始めた。

ゴーン氏はまず、「私は無実です」と語った。

すべての嫌疑、自分に向けられる非難は「事実無根」だと主張し、「私を強欲な人物、あるいは独裁的な人物として塗り固めるだけになされたもの。偏見に歪められたもの」と述べた。

「日本と日産への愛は少しも変わらない」

二つ目のメッセージとしてゴーン被告が語ったのは、日本と日産への愛だった。

「私は日本を愛し、日産を愛しています」

「1999年に来日したのは、打算ではなく、この国に魅了され、日産を再生させるという挑戦に心を躍らせたから」と言い、「すべてのキャリアを日産の再生計画に捧げてきた」と語った。

「日本に対する私の愛情、日産に対する私の愛情は、私がいま経験している厳しい試練を経た後であっても、少しも変わることはありません」

「日産の仲間たちと共に、日産のために多くのことを行ってきました。それは私の誇りです」

「日産の仲間たちと共に、日本経済、そして日本企業の経営のあり方にも貢献してきました。これらすべてのことは、この数ヶ月を経験した後であっても依然として、私にとって何者にも代えがたい記憶であり、大切な財産です。先々、みなさんにもきっとお分かりいただける時がくると思います」

ゴーン被告のビデオより
ゴーン被告のビデオより
弁護団提供

「いま起きていることは『陰謀』」

三つ目のメッセージとして語ったのが陰謀説だ。

ゴーン被告は「いま起きていることは『陰謀』。これは単に事件ということではない。これは『陰謀』『謀略』『中傷』だ」と語った。

また、「陰謀」の背後には「恐れ」があると指摘。日産とルノー、三菱自動車との経営統合が「日産の独立性を脅かすかもしれない」と恐れがあったと主張した。

さらに、日産の業績低下についても「現経営陣に問題があった」と指摘。

「数名の幹部が自分たちの利益のために、自分勝手な恐れを抱いて、会社の価値を毀損している」として「今回の汚い企みを実現させるべく仕掛けた多くの名前を挙げることができます」と話した。

「私はこれまで日産の独立性を最も強力に守ってきた。どのような展開になっても日産の独立性は保ち続けるということを明確にしてきた」

「当然、独立性は業績に支えられるもので、独立性を得ること自体が目的になることはあり得ません。それが目的化してしまったために生じた『恐れ』です」

「いったい誰が日産の舵取りをしてくれるのか、ブランドを守っているのか。企業価値を守っているのか、株主の利益を守っているのか。株価の下落と業績の低下を目にしながらも、幹部たちは、『あれはしない』『これはしない』と言って、今後何をするのかも言わず、未来のビジョンもなく、日産の業績を向上させるためのビジョンもなく、アライアンスの将来を強化するためのビジョンもなく、自らを誇っている現経営幹部たち。それを見るのは非常に悲しいことです。本当にうんざりさせられることです」

独裁ではなく、リーダーシップ

ゴーン氏は自身の「リーダーシップ」についても次のように強調した。

「率直に言って、テーブルを囲んでコンセンサスで意思決定をしていくということは、競争が激しい自動車業界ではなんのビジョンも生み出さない。必要な時にはリーダーシップを発揮しなければいけない」

「コンセンサスか独裁か、この2つの選択肢しかないと考えている人は、『リーダーシップ』の本質を理解していない」

動画の最後には、「公正な裁判を受けることを切実に希望している」と語った。

ゴーン被告のビデオより
ゴーン被告のビデオより
HuffPost Japan

実名部分はカット

動画は、再逮捕前日の3日に撮影されたものだという。

弘中弁護士は「もともと4月中旬に予定していたゴーン氏の会見が、もしかしたら検察側の妨害でできなくなるかもしれないと懸念して用意していたもの」だと説明した。

本来の動画では、誰が陰謀を企てたのか日産の幹部の名前が実名で語られていたが、「実名を列挙することは法律的なリスクを伴う」との弁護側の判断で実名部分はカットされた。

一連の騒動を「陰謀」とするゴーン氏の主張について、弘中弁護士は「ゴーン氏の名誉回復のためではなく、弁護のため」と強調した。

ゴーン被告が「私は無実」と主張しながら、逮捕や起訴の内容については触れていないことについても、「現時点では検察側から主張も証拠も出されていない。この段階で被告人から想像によって発言するのは不適当であるため」と説明。

「裁判が始まれば反撃する」と強調した。

会見する弘中惇一郎弁護士
会見する弘中惇一郎弁護士
Jun Tsuboike/HuffPost Japan

キャロル夫人への対応は「非人権的、非人道的なやり方」

会見で、弘中弁護士は「今回の逮捕や勾留、捜索・押収には問題がある」と改めて強調した。

保釈中の逮捕について「ゴーン氏に不当な圧力をかけて屈服させることを狙いとしたものだ。一度保釈された人が再度逮捕されるのは、大変な肉体的精神的なダメージを与える。検察官はこの残虐な仕打ちでゴーン氏に自白を強要している」と強い口調で批判。

さらに、逮捕時の家宅捜索で、ゴーン被告の妻キャロルさんの携帯電話などが押収されたことについても「いかなる手段を用いてもゴーン氏を有罪にしようというやり方で、違法・不当な捜査で必ず国内外の世論の批判を浴びるだろう」と抗議した。

キャロルさんがフランスに出国した理由については、検察側のキャロルさんへの対応が「正当な理由のない、非人権的、非人道的なやり方だった」と指摘。身の安全と抗議のためだったと明かした。

キャロルさんが早朝パジャマ姿のままトイレやシャワーも見張られ、携帯電話やパスポートを押収されたことに対して「どんなに怖い思いをしたかは想像していただけると思う」と訴えた。渡仏の際には、状況を理解した在日フランス館大使が空港まで付き添ったという。

弁護団はゴーン被告の勾留を認めた裁判所の決定を不服とし、10日に最高裁に特別抗告を申し立てる予定。

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