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2020年12月23日 14時17分 JST | 更新 2020年12月25日 19時02分 JST

2021年は、国から「誰一人、困窮では死なせない」というメッセージを

私の2020年は、コロナ禍の困窮者支援の現場で活動し、政府や東京都などに申し入れをし、そんな現場をレポートし続けることで終わった。

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菅首相

2021年の元日、私は「大人食堂」にいるはずだ。大人食堂とは、コロナで困窮した人などに食事を振る舞い、相談支援を行う場所。私も属する「新型コロナ災害緊急アクション」などの団体が集まり、大晦日には池袋で食料配布と相談会、元日と1月3日には「大人食堂」と相談会を開催するのである。

「新型コロナ災害緊急アクション」は、新型コロナウイルス感染が拡大し始めた3月、貧困問題に取り組む30以上の団体によって立ち上げられた。緊急事態宣言の出された4月に相談フォームを開設すると「ネットカフェが閉まって行き場がない」「所持金が尽きた」「家賃滞納でアパートを追い出された」などのSOSが続々と届き、現在もそれが途切れることはない。

 私の2020年は、コロナ禍の困窮者支援の現場で活動し、政府や東京都などに申し入れをし、そんな現場をレポートし続けることで終わった。

 

人の命や生活を犠牲にし続けてきたシステムが限界を迎えた

いろんな人に会った。

コロナで仕事を失い、何日も食べていなかった人。住まいを失い、路上に座り込んでいた高齢の男性。内定を取り消された若い男性や、非正規の仕事を切られてシェアハウスを放り出された若い女性。住宅ローンが払えないという自営業の親子。勤めている風俗店の寮を追い出されそうだという女性。

共通していたのは、コロナ禍は「きっかけ」に過ぎなかったということだ。

新型ウイルスの流行は、この国の経済がとっくに崩壊していたということを、嫌というほど露呈させた。非正規雇用を増やし、彼ら彼女らを低賃金で不安定な立場に押し込み、何かあればその層を放り出す一一一。そうやって人の命や生活を犠牲にし、騙し騙しで続けてきたシステムが限界を迎えていることが、白日のもとに晒された。矛盾が一気に噴出した。

冷静に考えれば、誰だってわかる話だ。働く人の4割が非正規雇用で、将来の見通しを立てづらい。社会的信用に乏しいが故にローンなどを組むのが難しく、賃貸物件の入居審査に落ちることもあるなど居住の不安定さにも晒されている。そんな非正規雇用で働く人の平均年収は179万円(国税庁・18年)。男性は236万円。女性非正規に限ると154万円。これでは何かあった時のための貯金も難しい。実際、金融広報中央委員会の19年の調査によると、貯蓄ゼロは単身世帯で38%。

 

「寮付き・日払い」の仕事を渡り歩き、とうとう路上生活へ

そんな人々が、コロナ禍で真っ先になんの補償もなく放り出された。

出会った一人一人が、この「失われた30年」の、そしてこの国の雇用破壊の歴史の生き証人だった。

 例えば私が会った中には、20代から約20年、全国各地の「寮つき・日払い」の工場などを転々としてきた40代のロスジェネがいた。就職氷河期で正規雇用の道がなく、派遣の仕事に就いたが最後、そこから抜け出せない人というケースだ。

仕事を失うたび、同時に派遣会社の寮も出されるので、次の仕事も「寮つき派遣」しか選択肢がない。その上、職探しの間にわずかな貯金が尽きてしまうと「寮付きの上、日払いOK」の職を探すようになる。日給の一部でも日払いにしてもらえればその日の食事をとることができるからだ。

そんなふうに生活していると、次の仕事も「寮付き・日払い」しか選択肢がなくなる。安定した住まいを確保したくとも、初期費用など貯まらないから綱渡りのように「寮付き・日払い」の仕事を渡り歩くしかない。

そんな生活を約20年続けてきた彼は、コロナによってとうとう路上生活となった。そうして「新型コロナ災害緊急アクション」にSOSをくれたことで、生活保護を申請。20年にわたる自転車操業のような生活からやっと脱出できると胸を撫で下ろした。

 

鍵のかからない個室で熟睡できない生活が10年以上

ネットカフェ生活を10年以上続けていたという人もいた。

その生活を知らない人は、「好きでやってる」「気楽でいいよな」なんて言う。しかし、足や腰も伸ばせず、鍵のかからない個室で熟睡できないという生活が10年以上続くことを想像してほしい。私たちがタンスを開けるのと同じ動作をするごとに彼らにはロッカー代がかかり、風呂にも洗濯にもいちいち出費が発生する暮らし。

そればかりか毎日、「今日の寝床、明日の仕事」に気を揉む日々。そんな人たちがコロナで仕事を失い、緊急事態宣言でネットカフェが休業になったと同時に寝床まで失った。「もうこんな生活は終わりにしたい」「精神が削られる」。疲れた様子でそう口にした人と多く出会った。そんなネットカフェ生活者は、都内だけで4000人。この層が放置されていたこと自体が異様なことなのだ。

女性からのSOSも多く受けた。飲食店や宿泊、小売、風俗、キャバクラ、ヨガやジムのインストラクターなど職種は幅広かった。働く女性の半数以上が正規雇用で、男性を100として女性の賃金が74であるこの国で、女性が困窮するのは当然のことだった。

しかもコロナ禍は、非正規女性が支えるサービス業にまず打撃を与えた。住まいを失う女性の中には、シェアハウスに住む人も少なくなかった。非正規だと賃貸物件の入居審査に落ちることがあることは前述したが、シェアハウスであればそれほど審査が厳しくない上、初期費用も低く抑えられる。が、一部シェアハウスは少しの家賃滞納であっという間に追い出される。

peeterv via Getty Images
イメージ写真

 

「何かあったらホームレスになる層」を放置すれば国が滅ぶ

コロナ以前から、不安定層からのSOSはあった。「仕事を切られた」「怪我で入院。治療費がかかった上、その間、仕事ができずにアパートを追い出された」。それぞれ個別の事情から住まいも職も所持金も失った彼ら彼女らは、ネットで見つけた支援団体にメールしたり、炊き出しの現場に現れたりしていた。それが、コロナによって多くの人に一斉に、経済危機が訪れた。結果、立場の弱い人たちが、生きる土台を崩された。

今、政治に望むのは、コロナ禍を機に、これまで破壊されてきた雇用の安定をはかってほしいということだ。「何かあったらホームレスになる層」をこれほど増やし、そしてこれ以上放置しておけば、それは確実にこの国を滅ぼしていく。

政府は今年度から地方自治体の「AI婚活」を支援するらしいが、未婚率を下げ、少子化を食い止めたいのであれば、雇用の安定をはかることがAI婚活なんかよりもずーっと重要なことだと私は思う。しかし、国は一向にこの根幹部分に手をつけようとはしない。

 

携帯がないことが、社会参加の壁に

一方で、公的支援のアップデートも必要だ。

例えばコロナ禍で、民間の支援は大幅に進化した。例えばSOSをしてくる半分近くが携帯がすでに止まっているかもうすぐ止まるという状態。よって、本人がフリーWi-Fiのある場所にいる時にメールしてくるのだが、フリーWi-Fiがない場所では連絡がとれない。フリーWi-Fiが文字通り命綱になっていることから、コロナ禍の中、都内の炊き出しでは「フリーWi-Fiを飛ばす試み」やスマホの充電サービスが始まった。

また、携帯がないことは社会参加の壁になる。例えば、仕事。通話できる携帯番号がないと難しいのは不動産契約も同じだ。一方、料金滞納で携帯が止まると他の携帯会社と情報が共有され、再契約が難しくなることもあるらしい。「携帯なんて贅沢だ」と言う人もいるかもしれないが、今、もしあなたが携帯を失ったら、日常生活のあらゆる場面に支障が出るはずだ。すでに携帯は社会的IDになっている。

ということで、7月には、「つくろい東京ファンド」がNPO法人ピッコラーレ、合同会社合同屋と協働し、本人負担ゼロで通話可能な電話番号を付与した携帯電話を渡すという「つながる電話プロジェクト」を開始。最長2年間まで無料で使ってもらうシステムで、独自に通話アプリを開発したのだ。

 

生活保護の窓口は、追い返されると死ぬ確率がもっとも高い場所

それだけではない。同つくろい東京ファンドでは、20年12月、「フミダン」というシステムも開発した。コロナ禍で生活保護申請をする人は4月には25%増。その後一時は落ち着いたが、9月に2ヶ月ぶりに増加に転じている。そのような状況で起こるのは、役所が申請する人を減らすため「若いから働ける」などと追い返すという「水際作戦」だ。

しかし、生活保護の窓口は、そこで追い返されると死ぬ確率がもっとも高い場所である。そのような水際作戦をさせないために開発されたのが「フミダン」。申請を希望する人がオンライン上でフォーム入力をすることで申請書の作成ができ、それを最寄りの福祉事務所にFAXできる機能を備えたウェブサイトだ。この年末年始に試験運用が始まる。

このように、民間の支援は日々アップデートしている。現場のニーズを拾い上げ、それを次々と形にしている。

 

もうすでに、自助も共助も限界に達している

 その一方、コロナで職を失う人が増え続け、自殺者が急増する中、新総理に就任した菅氏が繰り返したのが「自助」という言葉だった。

しかし、「所持金ゼロ円でホームレス」という状態は、公的支援にも家族や友人にも助けを求めず自助を極めた結果であるし、12月、大阪で親子が餓死したと見られる状態で発見されたが、家族で「共助」をしようとすれば時に一家心中や共倒れ型の餓死に繋がってしまうことはこれまでも見てきた通りだ。もうすでに、自助も共助も限界に達している。

これまで、「新型コロナ災害緊急アクション」では1000人以上のSOSに対応し、「5000万円以上の給付」を行なっている。原資は「緊急ささえあい基金」に寄せられた寄付金で、こちらには3月以降、1億円近くが集まっている。 

多くの人の善意に支えられて活動できているわけだが、民間のボランティアには限界がある。というか、民間団体が数千万円の給付をしていること自体が異常なのだ。

2021年はどうか「誰一人、困窮では死なせない」というメッセージが国から発されてほしい。ほんの少しでも、困り果てている人々に安心感を与えてほしい。そのための「各種公的制度の変更」がなされてほしい。それで救える命は、確実にある。

 

(文:雨宮処凛 編集:榊原すずみ/ハフポスト日本版)