性同一性障害職員の女性トイレ制限は「違法」。最高裁が逆転判決、性的マイノリティの職場対応で初判断

戸籍上の性別を変更していないことを理由に職場で女性用トイレの使用制限などをされるのは違法として、経済産業省の女性職員が国に処遇改善などを求めた訴訟の上告審。

戸籍上の性別を変更していないことを理由に職場で女性用トイレの使用制限などをされるのは違法として、経済産業省の女性職員が国に処遇改善などを求めた訴訟の上告審の判決が7月11日、最高裁の第三小法廷(今崎幸彦裁判長)であった。

今崎幸彦裁判長は、トイレの使用制限は「違法」とする判決を言い渡した。原告の訴えの一部を認め、制限を「適法」とした東京高裁判決を破棄した。

6月16日にあった最高裁弁論での弁護団の陳述によると、性的マイノリティの職場での対応について、最高裁が判断を示すのは初めてという。

最高裁での弁論は、二審判決を見直す際に必要な手続き。職員が求めた使用制限撤廃を認めなかった人事院の判定を適法とした二審・東京高裁の判決が見直された。

最高裁は、争点について「(人事院の判定のうち)職場の女性トイレの使用に係る行政措置の要求に関する部分が違法なものであるか否か」と説明していた

原告の職員は戸籍上男性で、性自認は女性。性同一性障害の診断を受けている。健康上の理由で性別適合手術を受けていない。

経産省と協議の上、2010年から女性の服装で勤務し、健康診断も女性枠で受けている。だが経産省は、勤務フロアから2階以上離れた女性トイレの使用を求めた。

これに対して職員は、この制限を撤廃する行政措置を人事院に求めたが認められず、判定の取り消しを求めて国を提訴していた。

最高裁判所
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時事通信社

 一審・東京地裁判決(2019年)「違法」

2019年の一審・東京地裁判決(江原健志裁判長)は、職員に対する女性用トイレの使用制限は違法と認定し、制限を容認した人事院判定の取り消しや約132万円の支払いを国に命じた。

判決は、使用制限について「原告が自認する性別に即した社会生活を送ることができるという重大な法的利益を制約するもの」と指摘した。

国側は制限の理由として「女性職員との間で生じるおそれがあるトラブルを避けるため」と主張していた。

判決はこの点、職員の外見や職場・プライベートでの行動様式から女性として認識される度合いが高かったことなどを挙げ、「トラブルが生ずる可能性はせいぜい抽象的なものにとどまる」などと退けた。

健康上の理由で性別適合手術を受けていない職員に対して「なかなか手術をうけないんだったら、もう男に戻ってはどうか」という上司の発言も違法と認定。「原告の性自認を正面から否定するものであると言わざるを得ない」と指摘した。

原告側は他にも、性同一性障害に関する人事異動の制限などについても争ったが、原告側の訴えや違法性の認定はされなかった。

二審・東京高裁判決(2021年)「適法」

ところが2021年の二審・東京高裁判決(北澤純一裁判長)は、トイレ使用制限を違法とした一審判決を変更し、制限撤廃などを求めた原告の請求を棄却した。

経産省の対応について、原告に配慮して決定されたとして「著しく不合理であるとはいえない」と判断したほか、「(経産省は)先進的な取り組みがしやすい民間企業とは事情が異なる」などとも言及した。

「もう男に戻ってはどうか」という上司の発言に対する違法認定は維持され、国側に賠償を命じた。

また、職員側は控訴審で、経産省が職員の性自認に関する情報を暴露(アウティング)したのも違法だと主張していた。女性用トイレの使用をめぐり省内でヒアリングを実施した際、同僚2人に職員が性同一性障害であることを本人の同意なく知らせていたことが、一審の審理で明らかになったからだ。

東京高裁はヒアリングが職員の要望に対応するために実施されていたとして、違法と判断しなかった。

高裁判決後、職員側と国側はそれぞれ、次のようにコメント・話していた。

職員:「性同一性障害者や、トランスジェンダーの方が働く場において不平等な扱いを受けているという事実を私も複数知っています。民間企業であるような事例は、(行政組織であっても)本来あるべき当たり前の処遇であると考えています。最高裁においてはこういった事実の評価についても主張していきたいと思っています」

経産省:「国の主張が一部認められ、一部認められなかったと承知している。今後については判決の内容を十分に精査した上で、関係の省庁と協議をして適切に対応したい」

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