日々の暮らしやビジネスに欠かせない紙製品。それは大人だけではなく、多くの時間を学校で過ごす子供たちにとっても同じことでしょう。教科書、ノート、ティッシュやトイレットペーパーなど、子供たちの日常にも身近な紙製品は多くあります。
森林資源の持続可能な利用を推進するWWFジャパンは、王子ホールディングス株式会社および堀井清毅教諭の協力のもと、子供たちに森林の持続可能な利用について伝え、また子供たち自身でも調べ学習し、その後学んだことを絵本にまとめ発表するという環境教育授業を実施しました。
森林認証制度、FSC(R)とは?
地球の陸地面積の約3分の1を覆う森林。その森は今も減少し続けています。
森林減少のスピードこそ1980年代や1990年代と比較して緩やかになりつつあるものの、南米や東南アジア、アフリカなどの熱帯地域では急激な森林破壊が報告されています。
その要因は多岐にわたり、例えば地域住民による生活のための木材利用、森林火災、プランテーションと呼ばれる大規模な植林地や農地への転換などがあります。環境や社会への配慮が十分ではない方法で生産された木材製品や、保護すべき自然の森を開発したプランテーションで生産された原料や製品は日本を含め世界に輸出されています。
WWFは、森を守りながら利用を続けられるよう、また適切に管理された森から生産された製品を選ぶことを可能にするため、国際的な森林認証制度、FSC(Forest Stewardship Council(R):森林管理協議会)の森林認証制度の普及に取り組んできました。
1993年に発足したFSCは、木材を生産する森林と、その森林から切り出された木材の流通や加工の過程を認証する制度を管理する国際的な機関です。
FSCの認証は森林の環境保全に貢献し、地域社会の利益にかない、経済的にも継続可能な形で生産された森や製品に与えられます。
消費者はFSCのマークが入った製品を選択することで、世界の森林保全を間接的に応援できる仕組みになっています。
「WWFジャパン森林絵本コンテスト」実施報告
欧米でのFSCの認知度は日本と比べて高く、特にドイツやイギリスでは、70%を超える国もあります。
日本でも認知度はまだそれほど高くないものの、FSCのマークが付いた認証製品は身の回りに徐々に増えつつあります。
そこでWWFジャパンは、将来を担う子供たちにもこのマークとその意味を紹介し、環境や社会に配慮した製品を「選ぶ」という行為が、森を守ることにつながることを伝える環境教育授業を実施しました。
「WWFジャパン森林絵本コンテスト」は、子供たちが森の環境問題について学びを深め、それを絵本として表現し、家族や友達にも自らの気づきを広めて欲しいという思いを背景に企画されました。
具体的には、西町インターナショナルスクールの堀井清毅教諭の監修のもと、WWFジャパンと共同で開発したカリキュラムを学校の通常授業の一単元に採用し、子供たちが森の環境問題について知り、さらに興味を持って各自が調べたことなどを絵本という形で表現し、コンテストに応募してもらうというものです。
初回となる今回は、インターナショナルスクール6校から121作品の応募がありました。
一部の学校には、WWFジャパンのスタッフや、紙の生産者でもあり、この企画に協賛いただいた王子ホールディングス株式会社の社員がゲストティーチャーとして授業に参加したほか、先生方と研究会を開くなど、密にコミュニケーションを取りながら実施しました。
子どもたちは、「森」をきっかけに、それぞれの興味が向くままに国内外のさまざまな地域にすむ野生動物について調べたり、森林伐採の原因や解決方法を自分なりに考え、絵本にしてくれました。
絵本は、鉛筆や絵具、クレヨンや版画にコラージュなど、さまざまな方法で作成され、内容も様々でした。
例えば、WWFのパンダマークから影響を受けたのか、ジャイアントパンダについて調べたり、遠い南米の森林伐採をテーマにしたり、森とつながる海にまつわる環境問題にも関わる作品をつくりあげたりと、関係者一同、子供たちの自由な発想に驚かされました。
佳作以外の受賞作5作品は、製本された上で、2015年12月10〜12日に東京ビッグサイトで開催された日本最大級の環境展「エコプロダクツ展2015」の王子グループのブースに展示されるとともに、来場者の投票を募る「エコプロ特別賞」も選ばれました。
また、期間中はニューインターナショナルスクール オブ ジャパン、および西町インターナショナルスクールの2校から子どもたちが来場し、学んだことや絵本をつくった感想などを発表しました。
会場には保護者の方もたくさん来て下さり、当日行なわれたWWFスタッフの講演にも熱心に耳を傾けてくださいました。お越しいただいた皆さま、本当にありがとうございました。
今回の企画の実施にあたっては、各校の先生方を筆頭に、王子ホールディングス株式会社、WWFジャパンボランティアの皆さまに多大なご協力をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。