食材の宝庫・天草をベーグル&マフィンで元気に 都会からの移住者が挑む地域活性化

『親戚がいなくても、田舎に馴染んで協力者を作って、楽しく生活できる』
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熊本県・天草の食材をふんだんに使ったベーグルやマフィンを作って売り出そうと、横浜から移住した筒井永英さん(32)が12月から店を始める準備を進めている。

四季折々の果物や野菜などを使うことで、食材を作っている地域のお年寄りにやりがいをもってもらうとともに、天草のすばらしさを全国に広めたいという。

1人でも多くの人に取り組みを知ってもらうため、A-portでクラウドファンディングに挑戦している。

筒井さんが地方への移住を考えるようになったのは、2011年の東日本大震災がきっかけだった。当時、国家公務員だった筒井さんは霞ケ関に勤務。

東京は東北に比べて被害が少なかったにもかかわらず、いろんなものが品薄になった状態が続いたのを見て、「都会で働いて多少お金を持っていても、物を運んでこなければ何もできない」と不安を感じたという。

それなら、自分が物を作る立場になればいい――。

そう考えた筒井さんは2014年、家族とともに香川県・小豆島に移住し、オリーブ農家を手伝いながら農作業について学んだ。

しかし、いざ就農を考えたとき、畑が必要という問題にぶつかった。

荒れ果てた耕作放棄地はあったが、再び畑として使えるようにするには、それなりのコストも労力もかけなくてはならない。

そんなとき、天草からオリーブ栽培を見学に来た人に、「天草なら畑がある」と移住しての就農を勧められた。畑をやめようと思っているデコポン農家がたくさんいるので、それを引き継げばそのまま使えるという。

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温暖な気候の天草は、柑橘類をはじめとする食材の宝庫だ
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2016年6月、天草に移住した。海に囲まれた、温暖な気候の土地でのんびりと...と思っていたが、実際に住んでみると、想像以上に衰退している地域の姿にショックを受けた。

「同じ地方でも小豆島は高松に近く、若い移住者もそれなりにいた。天草はすごいスピードで人口が減っており、子どもが成人するまで地域コミュニティが続いているのか不安になった」

移住者を増やすのは、すぐにできることではない。

まずは今いる人たちに元気になってもらわなくては...思い浮かんだのが趣味で作っていたベーグルとマフィンだった。

地元のお年寄りが作っている野菜はとても味が良いのに、売るには少なく、家で食べるには多いため、「おすそわけ」に使われてしまっているケースが多い。

これをベーグルやマフィンという形で売り買いできるものにして、地域でお金が回るようにすれば、お年寄りもやりがいができるし、天草のすばらしさを知ってもらえることにもつながる、と考えた。

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筒井さんが作るベーグルやマフィンには、天草でとれた食材がふんだんに使われている
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マフィンは「グルテンフリー」にしたいとのこだわりから、小麦粉ではなく熊本県産の米粉で作り、バターを使わなくてもパサついてしまわないように試行錯誤を重ねた。

今年の夏ごろから、試食した人が「おいしい」「地元でも売って」などと声をかけてくれることが増え、手応えをつかんでいる。

柑橘類を使ったマフィンは「国産でこれだけの量を使って作っているところは、なかなかないと思う」という自信作だ。

自家製のレーズン、地元でとれたひじきを使ったベーグルの試作品も好評だったという。

「贈答品で使われる天草の柑橘類と同じように、地元の人が思わずおすすめしたくなるような品にしたい。ベーグルとマフィンを通じて天草に興味を持ってくれる人を増やしたい」

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店の名前は「ふぁくとりー Nolley」。12月から移動式店舗やネットショップで販売を始める予定だ。

自分の試みが成功すれば、移住を躊躇している人の背中を押すことにもつながるのではないか、と期待している。

「田舎にきたら仕事があるのか、生活レベルが落ちるんじゃないか、と心配して移住まで踏み切れない人は多いと思う。

そうした人たちに『親戚がいなくても、田舎に馴染んで協力者を作って、楽しく生活できる』ということを伝えたい。

子どもを学校に行かせることもやり方次第でできるということを示せれば、田舎に定住しようと思う人も増えると思う」

プロジェクトの詳細は、https://a-port.asahi.com/projects/factory_nolley/