国民全員に生活に最低限必要なお金を渡すことにより、既存の社会保障システムを根本から置きかえよう、というアイデアです。

先の選挙で、希望の党が公約の一つとして掲げたことで、日本でも注目を少し浴びるようになったベーシックインカム。メルマガ「週刊 Life is beautiful」のビデオ版として、4分ほどの解説ビデオを作ってみたので、ぜひともご覧ください。

最近、ベーシックインカムという言葉を聞く機会が増えていると思います。

正確にはユニバーサルベーシックインカム、UBIと呼び、国民全員に生活に最低限必要なお金を渡すことにより、既存の社会保障システムを根本から置きかえよう、というアイデアです。

現在、日本を含む多くの国々は、失業手当、生活保護、年金などを使って社会の弱者を救済しています。しかし、システムが複雑で莫大なコストがかかる割に、誰もが公平に感じるものを作るのは不可能だし、システムを悪用する人が絶ちません。

本当に困っている人と、システムを悪用しようとする人たちとの区別が出来ないため、結果として本当に困っている人に十分な支援が行き届かないという現状もあります。

また、生活保護を一度もらってしまうと、働いた分だけ生活保護を減らされてしまうので、「働かない方が得」というひずみが生じてしまいます。生活保護や失業手当をもらっている人が、職探しもせずに毎日パチンコに通っているなどは良くある話です。

こんな社会保障システムの欠点を根本的に解決する手法として提案されたが、ベーシックインカムです。失業手当、生活保護、年金などを全て統合し、老若男女問わず、一切の審査なしに、国民全員に一律のお金を与えてしまおう、というアイデアです。

「収入の高い人にまで与える必要はないのではないか」と考える人がいると思いますが、大丈夫です。収入の高い人の年収には、累進課税で高い税率で税金がかかるので、実際には相殺されてしまいます。

累進課税とベーシックインカムを組み合わせると、収入の税金の関係は、このグラフのようになります。収入の少ない人は、国に納める税金よりも、受け取るベーシックインカムの方が多いのです。ベーシックインカムのことを「負の税金」と呼ぶ人がいるのは、これが理由です。

生活に最低限必要なお金をもらうことにより、人々は「生活のために働く」ということから解放されます。それにより、自分が本当にやりたいことを仕事にしたり、他人のため、世の中のためになることだけに人生を捧げることが可能になります。

ベーシックインカムのアイデア自体は、1970年代からあり、試験的な試みもされていますが、実際に採用されたケースはまだありません。財源の問題もあるし、それによって国の生産性が落ちてしまうことを懸念する人もいるからです。

ベーシックインカムは、最近になって再び注目を集めているのは、AIやロボットなどの進化により、多くの仕事が機械によって置き換えられる時代がやって来ようとしているからです。

今後、AI やロボットの導入により、ただでさえ広がり続けている貧富の差がさらに広がることは避けられません。あまりにも貧富の差が広がると、それが社会の不満となって爆発し、資本主義や民主主義そのものを脅かしてしまう危険があります。

そんなことにならないように、今のうちから、AIやロボットによって人が働かなくて良くなった時代の社会はどうあるべきか、民主主義・資本主義はどうあるべきかを議論しておく必要があるのです。ベーシックインカムはその中で、新しい形の社会保障システムとして注目されているのです。